皇帝と面会、想定外は突然に
僕は速攻コピーパルマをストックに入れる。
入れた筈なのに直ぐに外に自己脱出してきた。
あ、これストック入りを拒絶できちゃうバグだ。
神様ー。なんかコピーのパルマがストックに入らないんだけどー
―― 仕様です♪ ――
ブチ殺すぞクソ神ィッ!!
「なぜストックに入れようとするのですか? 私は貴方と一緒に居たいのに? どうして、ねぇ、どうして?」
壊れた瞳で真後ろから肩を掴んで耳元で囁いて来るパルマさん。
なんか萌えシュチュな筈なのに背筋がぞくぞくっと凍る気がします。
「私はシークレットさんとのこと、寛容ですよ? オリジナルとは懐が違います。ええ。なのに袖に振りますか? ねぇ? ねぇ……ねぇッ」
痛い、痛いですパルマさん。なんか肩にどんどん力が掛かってるんですけどぉ!?
「い、入れない、ストックにはもう入れませんです、はいっ」
「分かっていただけで嬉しいです。必死に追って私を助けてくださり、ありがとうございますご主人様」
なぜだ? 何がどうしてこうなった?
そもそもオリジナルがサボに惚れたならコピーさんもサボ押しになる筈だろ。なんで僕に向ってきてるのさ!?
「貴方、意外とおモテになるのですね?」
「セフィーリアさん、何処見て言ってます?」
「見たままを告げてますが?」
僕は溜息混じりに次話をタップ。これ以上相手してたら額に風穴が開きかねないしね。
「さて、パルマとサボの恋愛物語とかどうでもいいし、次行こう次」
じぃっと背後からの視線を感じながら僕は歩きだす。
なぜシークレットまでジト目で僕を見るのかな?
違うんだよ。僕のせいじゃないんだよ。ほら、助けたのも僕じゃ無かっただろ。
僕が近づくと黒づくめ君が移動するから他のメンバーが救出したでしょ。
僕に惚れる要素一つも無かったよね?
サボにお姫様抱っこされたオリジナルパルマの案内で城内を探索する。
皇女の他に、皇子が二人いるそうだ。
その二人が皇位継承を争っていて、第三候補のパルマを消そうとしているらしい。
それで、侍女をしていたマルサと共に城を脱出したのだが、奴隷商に捕まってしまい、あの砂漠の街まで移送されてしまったのである。
信じていたマルサは帝国のスパイで、パルマを拉致し、帝国で人質として捕らえるか、あるいはそちらの方の帝王か王子に強制婚姻させられ、その人物を皇国の次期皇帝として迎え入れさせる算段なのだとか。
確かにどう転んでもパルマには絶望しかないな。
そんな中、彼女だけを見て彼女だけを助けてくれる存在が居た。
そう、時折消えてしまうサボ君だ。
神とバグによる幾度の妨害も乗り越え、パルマを救いだしたのである。
そりゃパルマも惚れるよなぁ。というか多分惚れる以前に依存しちゃってると思います。
「あ、暗殺者来たよ?」
「リーハさん、サシャさん、やっておしまいなさい」
「待っていたぞ小僧!」
「「ふふ、見ててねお兄ちゃん。サシャ大活躍なんだから」」
たまにはガス抜きを、とオリジナルキャラ達を戦闘に向かわせる。
どうしよう。戦闘キャラがオリキャラで埋まってしまってます。
リーハ、サシャ、サシャ、若ケンウッド、シークレットが戦闘参加。サポートはパルマ抱えたままのサボである。
んー、やっぱこのメンバーだと全員に回らないなぁ。
基本、WAVE1はリーハの開幕必殺で消し飛ばし、WAVE2はサシャの全体攻撃。最終WAVEはサシャ二人目で全体攻撃。
他のメンバー攻撃出来ず。
うん、いつも通りだ。
そして次話を何度かタップして城内を探索する。
ところでイリス、皇城城内歩くのは良いんだけどさ、僕らってなんでここ歩いてるんだっけ?
そう思いながらパルマの案内の元、大きな扉の前へとやってくる。
まだなんやかんやの戦闘で8話目だ。まだ戦闘は3回分残ってる計算になる。
となると、この先に居るのは皇帝で、そこで戦闘になるとしてもまだ2回残るぞ?
そんなどうでもいい心配を他所に、僕らは皇帝の待つ謁見の間へと侵入する。
そこには玉座があり、厳ついおじ様が座って待っていた。
宰相だろうか? 玉座の傍に佇む病的に痩せた男がギロリと僕らを睨む。
玉座まで引かれた赤い絨毯の側面を兵士が整列している所を見るに、無遠慮に押し入った賊として彼らと闘うんだろう。
「お父さま只今帰還致しました」
「パルマか……」
って、あれ? そういう感じ? ってことはこの兵士さんたちと闘う訳じゃないのか?
サボから降ろして貰って俯きながら王の御前にやってきたパルマは、その場に傅き言葉を告げる。
厳かに告げて来た王に小首を傾げ、頭を持ち上げ王を見る。
「誰っ!?」
え? ちょ、パルマ?
なんと顔を上げて国王の顔を見たパルマ、驚愕の顔でお父さん相手に誰っとか言っちゃった。
え? でもパルマが知らない男が皇帝として座ってるって、あんた本当に誰だよ!?