地下通路の悪魔（セフィーリア）
皇城地下通路を歩く。
なんというか、ナルタの有用性をついつい感じるなぁ。
古代兵器ちゃんは暗闇でも発光してくれるので周囲が見やすいのだ。
眼からライトをぺっかーと光らせるナルタを一番後ろにして全員を照らして貰う。
これの御蔭で皆が暗がりの中迷子になることを防げるのだ。
しかし、これどこをどう歩けばいいんだ？
パルマいなかったら案内すらされないんだろ、パルマを取り返すために向うにしては難易度高いぞこの地下通路。
とりあえず神様に伝えてみよう。
仕様です。とか返されそうだけど。
―― 確かに難易度高いね。ホイホイ君、ここ道導か光を発せられる道具を入口付近に置いといた方が良いよ ――
―― あの、なんでホイホイ君って呼ぶんですグーレイさん。いや、別にいいんですけど。あ、光というか、ろうそく揺らしときましょうか ――
あの、返信メールで運営同士会話しないでくださいます？
そういうのはＳＮＳとかでいいじゃん。
わざわざプレイヤーへの返信メールで話し合うことじゃない。というかこれ、相手に伝わってる？
少しすると、突然周囲が薄暗くなる。
通路の壁に一定間隔でろうそくが設置され始めたのだ。
これは、なんか怖い。
目の前でボッ、ボッと灯っていくろうそく達。なんか普通に恐怖体験してる気分である。
「なんか、恐いんだけど」
ちょっとルーカ、なんで僕の頭の上に飛びついてくるの？
すっごく重いんだけど。
「その付き辺りを右です」
「左は何かあるのかしら？」
「さぁ、正解のルートは分かりますけどそれ以外は……」
セフィーリアの疑問に小首を傾げるパルマ。
流石に地下道の全てを把握はしていないようだ。
セフィーリアは宝箱でも期待していたようで、残念です。と落胆していた。
入り組んだ道向って戻れなくなっても困るし、ここはもうパルマ任せにして移動した方が良いだろう。
セフィーリアさんもそれでいいよね？
セフィーリアに尋ねると、構わないと言われたので遠慮無くパルマに付いて行くことにした。
頼むぜパルマ。
しばらく進んでいると、イリスがそろそろ敵が居ます。と言って来たので警戒しながら歩く。
地下通路の中央を行ったり来たりしている茶色い物体。
なんだろう？ と近づくことにその姿が露わになった。
スライムだ。初めて見た。
茶色いスライムが蠢いている。
正味気持ち悪い。
「銃器は、効きそうにありませんね。今回は任せます」
でしょうね。
今回はセフィーリアが戦闘不参加らしい。
んじゃ魔王陛下にお任せするか。こういう敵は魔法脆弱って決まってるんだ。
キャラクターを適当に決めてＮＰＣ枠にリーハを設置。
開幕必殺により敵は一瞬で消し飛んだ。
うん、過剰戦力乙。
スライムっぽいのが倒されると、その奥に梯子が見付かる。
どうやらこの先が城の中らしい。
「では私が先に行きますね。ああ、男性方、覗いたら手榴弾巻き付けて敵陣放り込みますからね」
セフィーリアさんが不穏な事を告げて素早く梯子を登っていく。
真上の部屋に入る前にピンっと手榴弾の安全ピンを抜くと、室内へと投げ入れた。
せ、セフィーリアしゃん？ な、なんばしょっとかぁ！？
ドンッと全身を揺らす衝撃と共に室内でいろいろな物が吹き飛ぶ。
中に人がいたらどうする気ー！？
って、なんか飛んで来た！？
見ちゃいけないモザイク物体が飛んで来た気がしたので視線を逸らしてセフィーリアの後を追う。
「ふむ。やはり敵がいたようですね」
「そうかもしれないけどそれ、イベント用の人だったんじゃ……」
「知りませんよそんなこと」
―― 心配ご無用。既に手は打っておいた。そこで戦闘あるから頑張って ――
神様より謎のメッセージ。
梯子を全員が登り切ると、煤けた室内に一人の男がむくりと起き上がる。
「よくもやってくれたな！ 貴様等皇女がどうなってもいいのか！！」
お、生きてた？ いや、再生した！？
戦闘以外で死亡はイベント以外じゃ無理になったようだ。
セフィーリアさんが思わず舌打ちする。
「今のではご満足いただけなかったようですね」
ジロリ、僕にアイコンタクト。
はいはい、自分を戦闘参加させろってことですね。どうぞご自由に。
「そして全てが灰になる」
って、開幕必殺しやがった！？
行けるの？ 出せるの？ 神様どゆこと！？
黒づくめさんに南無～しながら神様にメールを送る。
仕様ですとか返ってきた時は本気で神に殺意を覚えました。
まぁいい。味方であるウチは有用なことは確かだし。
せいぜいセフィーリアさんに愛想尽かされないようにしないとね。
あの必殺とか絶対に使われたくないし。
銃弾で踊る姿初めて見たよ……最後に使ったの何アレ？ 黒づくめさんが一瞬で消失したんだけど？ 人間消失銃か何かですか？
