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神、仲間を得る

 ……はっ!?

 ホイホイ君こと神は謎の悪寒と共に目を覚ました。

 どうやら城内を手直ししたことで安堵し、そのまま寝入ってしまっていたようだ。

 俗に言う寝落ちである。


 キーボードに垂れかけていた涎を拭い、慌てて画面を見る。

 メールが届いていた。

 最初の方はダイスケのどうなってるという優しいバグ報告だった、が、二度目の転移バグによる抗議メールはダイスケからではなくセフィーリア。あまりにも背筋が凍るメール内容に一気に眠気が吹き飛ぶ。

 時間を見れば、メールが送られてから指定の時間まであと10秒もない。


 即座に返信メールを打ち込む。

 今から作業するからもうちょっと待って。マジ許して。ターゲッティングしないで。

 そんな内容のメールを高速で打ち込む。

 秒数はもう5秒を切っている。

 送信ボタンを押す。

 頼む、間に合え!


 ぽーんと向こうからメールが返ってきた。

 早急に元の場所戻さないとセフィーリアさん本気で神界乗り込む気になってるから急いで。とダイスケからメールが届いた。

 これはマズい。

 慌ててダイスケとセフィーリアの前にゲートを設置。出現場所は皇国。これで一先ずの危急は逃れた。

 あとは皇国の至るところにある転移バグを……これマロンの作った仕様じゃないか。ふざけんな駄女神がッ。テメーのせいで命の危機だっただろうが!


 必死に転移バグを取り除く。

 転移場所に運悪く転移していたNPCたちも救済しておく。

 やることがまた増えた。

 だが、早めに処置できたのでまだマシだろう。

 セフィーリアが痺れを切らせていたらもう目も当てられなかった。誰だこのキャラコラボさせた奴は?


「とりあえず、第5章は大丈夫だと送ったし、6章の確認をしてからコラボキャラ追加だな。えーとあとやることは、ああもう、ほんと嫌になってくるな。なんでこんな世界創ろうと思ったんだろう」


 自分で過去の自分を殴りたい。そんなことを思いながら6章を確認していく。

 目に見えるバグはなさそうだ。それでもダイスケならいくつかのバグを見付けそうではあるが、それはその時でいい。


「えーっと、ああ、そう言えばイベント考えてたんだっけ、これ設置するのか、なんか面倒になってきたな。いや、自分で決めたことだし、やらないとな。まずはバグ確認から……」


 そのイベントをやっている間はしばしダイスケがその場から動かなくなるだろう。

 そういうイベントだ。ただ、面倒臭いと言われてしまうかもしれないが、ソシャゲではよくあるイベントなので大丈夫だろう。


「よしよし、これで……」


「こんばんにゃー」


「駄女神コロースッ!!」


 次は何を直そうか、思った瞬間現れた影。声で即座に理解した神様はフシャーと威嚇のポーズを取った。


「ま、待った待った。落ち付けホイホイ君。話せば分かる。話せば……にぎゃーっ」


 触手を使って両手足を拘束してからのキャメルクラッチ。からのー、ローリングサンダー……アターック。


「待ってぇ、逝っちゃうう、背骨が逝っちゃうからぁ――――っ」


「散れッ、散って償え駄女神ッ。テメェのせいで連日徹夜じゃこんにゃろー。しかもなんだあのコラボ企画の山は、テメェ城内消しただけじゃ飽き足らねぇってか!」


「許してぇ、悪気はなかったんだってばぁ!」


「なお悪いわッ!!」


 ボキーンっと折れるエフェクトを出す駄女神。

 実際には折れてないため神様のいらつきを助長させただけだった。


「あ、ちょ、なんでジャイアントスイン、グぅぅぅ―――――ッ!?」


「飛んで行け、この世界からッ!!」


 神様渾身のジャイアントスイングからの触手放しで遥か彼方に飛んで行く駄女神。

 イラつく存在を排除した神様は、ふぅっと息を吐いてバグ取りに戻った。


「やらかされたみたいだね」


「え? あ、グーレイさん!?」


 落ち付いた神様の背後から別の声が掛かった。

 振り返った神様が見たのは、グーレイと呼ばれている神の一人だった。

 見た目が銀色の肌にアーモンド形の目なのでグーレイと呼ばれているらしい。

 メガネを掛けてインテリグレイ化している彼は神様の隣に椅子を作るとその場に座り、自身のモニターを広げる。


「マロンがやらかしたと聞いてねフォローに来たよ」


「ぐ、グーレイさん……ありがとうございますッ」


「じゃあ、やることを教えてくれるかい。出来そうなの、優先的に直すべきところから手伝うよ」


 あまりにも優しいグーレイの心意気に、心の中で惚れてまうやろーっと叫ぶ神。

 頼もしい仲間が出来た神は、ソシャゲ世界完成に向け、気合いを新たにするのだった。


「ホイホイ君、気のせいかな。この皇国に居るグーレイってキャラ、もしかして私を揶揄しているのかな?」


「あ、それ駄女神が作った奴ッス」


「よし、マロン泣かす」


 折角戻ってきた駄女神は、グーレイ神の怒りにふれて再び虚空の彼方に吹き飛ばされて行った。

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