皇国、そして大森林へ
ようやく皇国に戻ってきた。
黒ずくめ君は律義に同じ場所で待っててくれて、僕の仲間たちもそいつの前で待っていた。
僕が近づけば逃げだすけど近くに来ないので黒ずくめ君は動かなかったようだ。
これ、パルマ取り返せるけどどうする?
ルーカが尋ねて来たのでとりあえず奪い取ってみて。と告げてみる。
多分神様のプログラミングだからバグってる。こんな事態は想定してないと思うんだ。
案の定。
サシャ達により救出されたパルマのコピーは無事で、僕が近づくと黒づくめは小脇に空気を抱えたまま走りだす。
うん、間抜け以外の何者でもないね。
直ぐ近くでパルマが二人も見送ってるのに黒ずくめ君は必死に逃げていく。
サボ、これどうしたらいい?
「フッ、馬鹿にしか見えないが、シナリオは奴を追えというのだろう。可哀想だから付いて行ってやればいいさ」
まぁ、その通りだけどね。
「どうせ仲間の元へ行くのでしょう? しっかりと鉛玉をブチ込んで差し上げますわ」
セフィーリアさんもイラついている。これはもう血を見なければ収まらなそうだ……な?
踏み込んだ瞬間、屋根の上から森林地帯に僕は踏み込んだ。
すぐ隣に居たセフィーリアさんと一緒に。
「……二度目?」
「み、みたいだね」
「ここの神もクソ野郎みたいね」
「二章エンディングに向ってもう一度戻りましょう」
「面倒なことこの上ないわ。もう一度連絡を取ってみましょう。とりあえずメールは私が打ちます」
あ、それヤバい内容になる気がする。
大丈夫か? でもセフィーリアさんなら神殺しとか普通にやりそうな気がするな。
僕は打ち込むセフィーリアの傍からメール内容を覗き込む。
―― 神よこのメールを見ていますか? 転移バグとやらで見知らぬ森に飛ばされております。早急にこのバグの是正をお願いします。1時間待っても改善されない場合わたくしは貴方も討伐対象と見定め殺しに向います。神だから殺されないなどと思っているならば、その腐った性根ごと粉微塵に粉砕して差し上げましょう。byセフィーリア ――
あ、あかん、これ一時間以内に戻れないと神様が死ぬ……
なんか本当に殺される予感しかしないぞ。セフィーリアならやりかねん。
神様気付いて、マジでやばいぞこの人、絶対頭おかしいたい……バチュンッ。
……
…………
………………
はっ!?
え? もしかして死んでた!?
「なるほど、ダイスケさんを殺した瞬間自分も破裂する訳ですか。これは確かに不快ですね」
「ひぃ!? なんで銃口向けてんですか!?」
「いえ、何か不穏な事を考えた気配がしたものでつい」
「ついで殺さないでください!」
「癖が付いているのよ、諦めなさい」
嫌過ぎる癖だなオイッ!?
「そろそろ30分は経過している筈です。まだ連絡はありませんね」
「やっぱり神様寝てるんじゃないか?」
「神が寝るなどありうるのですか? それはもう神ではないと思うのですが」
「ホイホイ君は僕らより高次元に存在する生命体だそうだからセフィーリアさんの思ってる神とは違うんだよ」
「……どういうことです? 高次元生命体?」
「あ、セフィーリアさんの世界じゃそういう話はないのか。あーっと、どう説明すればいいのかな。世界には、次元っていうのが存在してるんだ」
と告げながら適当な枝を折って地面に点を作る。
「これが一次元。点で出来た世界。この中に世界の全てが詰まっている」
「んん?」
「そしてこれが線の世界。二次元、と僕の世界じゃ呼ばれてます」
「ふむ?」
「これが面の世界。三次元と呼ばれてます。これに時間という次元を加えたものが僕の居る世界だと言われてます」
「……ふむ? うん、まぁなんとなくですが分かったような気がします。生きる分には不要な知識のようですが」
「ま、まぁそうなんですけど。つまり、線が重なって出来たのが面の世界、僕らの居る世界はこの面が重なって出来た立方体が重なった世界なんです、ってこと」
「それはおかしいですね。その考えで行くと面が重なっている次元となるので私達が居るのは四次元世界となる筈ですが?」
「う、ま、まぁその辺りは偉い学者さんに任せて、だね。僕が言いたいのはこれ。この次元に僕らが住んでいると仮定すると、そのさらに先の入り組んだ次元の先に、神様が住む世界があるんだ」
「ああ。そういう話に繋がるのですか。なるほど、つまり私達では想像つかない重なりと法則が支配する世界に神を名乗る生命体が存在している。そういうことですね?」
なんとなく僕が言いたいことを理解してくれたようだ。
しばし考えていたセフィーリア。一体何を考えたのか、ニタリと笑みを浮かべた。
「つまり法則性さえ分かれば神のいる場所に向うことは可能で、神を殺すことも可能、そういうことですね」
あ、これ、いらない知識与えちゃった?