7.
遥さんのおかげでこの異様な空間が作り出されたことについては、今後失敗しないように、肝に銘じていこう。
さて、この異様な空間から抜け出すためには、とりあえず、吉田さんとの話を先に終わらせるしかない。
「えっと、吉田さん、まずは自己紹介しますね。
私はTFPのメンバーで、悠陽ちゃん…、彩木さんの従兄弟にあたる水篠 遥と申します。
今日は彩木さんと一緒にお話を聞かせていただいてもいいですか?」
遥さんが軽めに自己紹介を済ませて、吉田さんに許可までとってくれた。
こういうところはしっかりしてくれてるんだけど…。
「はい、大丈夫です。」
吉田さんは気持ちのいい笑顔で対応してくれた。
『えっと、ではもう1度、家に帰ってきた時の状況から聞かせてもらってもいいですか?』
私はなるべく早く済ませるよう、早口で吉田さんに話しかけた。
「あ、あのー、そちらの方は?」
が、吉田さんは気づいてしまったらしい。
不知火さんの存在に。
「お、俺っすか?!」
不知火さんもどうしていいのか分からずオロオロしている。
『…えっと、不知火さん、すみません。
後でお話を聞かせていただきますので、下のカフェで待っていていただいてもよろしいですか?』
うん、これが一番の得策だと自負した。
「あ、もしあれだったら、私は彼がここにいてもらっても構わないですよ?」
不知火さんが頷く直前、吉田さんが紳士的な対応をしてくれた。
『え、いいんですか?』
吉田さんはさも問題なさそうに頷いた。
私は少し感心しながら、不知火さんにここにいていいと伝えた。
「で、えっと、なんでしたっけ?」
『あ、えっと事件のことで、もう1度最初から説明してもらってもいいですか?』
「あぁ、はい、分かりました。」
吉田さんに1から説明してもらい、私たちの質問にも答えてもらい、終わった時間は10時をすぎた頃だった。
『では、また後日ご連絡させていただきます。』
吉田さんは軽く会釈をし、階段を降りていった。
さぁ、私も遥さんも気になっている人と話をしようか。
『不知火さん、お待たせしてすみません。
まずは、一番最初の座席に座り直しましょうか。』
不知火さんはまだ緊張しているらしく、動きが少しだけ硬い。
「さっきはごめんなさいね。
不知火さん、ここに居にくかったでしょう?」
不知火さんは「いや、大丈夫っすよ!?」と言って、首をブンブン振っている。
そして、ある程度振り終わったあと、「でも」と一言付け足した。
「遥さんもTFPのメンバーさんだったなんて、俺、驚いたっす!」
不知火さんはさも当然というように笑って言った。
『えっと、それで、今日はどうしてここに?』
「あ、それはっすね、俺もTFPに入れて欲しいんすよ!
それで、冥賀さんにこの場所を教えてもらったんすよ。」
私と遥さんは顔を見合わせ、驚いた。
これまでに、わざわざTFPに入りたいといってきたメンバーは冥賀さんぐらいだ。
あとのメンバーは私からお願いしたり、一緒にやるつもりだった人達だ。
だから、びっくりした、が、よく考えれば、容易に想像がついた。
だって、不知火さんは冥賀さんのことをとてつもなく尊敬しているからだ。
そこまで尊敬していることにも何か理由があるはず。
『あの、もしかしてなんですけど、不知火さんは警察官になるのが夢だったりして…?』
「そ、そうっす!
よく分かったっすね。
俺、今、△△大学の2回生なんすよ。
△△大学に入ったのも、警察官になるためなんすよ。」
私の勘が見事当たった。
「だから、冥賀さんを慕っているんですか?」
「そうっす!
俺もあの人みたいに立派な警察官になれたら、親孝行のひとつやふたつ、出来ると思うんすよ!」
不知火さんははじめと同じように目をキラキラさせて、何かを想像しているような顔をしている。
『すみません、不知火さん。
あなたをTFPのメンバーに加えることはできません。』
考えるまでもなく答えを出した私を見て、不知火さんは驚き固まってしまった。
「ちょっと、悠陽ちゃん!
もう少しちゃんと考えてあげないと…。」
遥さんは少し俯き気味で言った。
考えるも何も無い。
不知火さんがここへ来るずっと前から決めていたことだ。
私にだってそれなりの理由がある。