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すろぴ  作者: 虎昇鷹舞
6/15

第六球「初打席!」

ナッちゃんの初打席! その結果は・・・?

そこからの攻撃はお互いのチームとも淡々としていた。

私のチームは追いつかれたこと、相手チームが追い越そうとして、みんな力んでいたのかもしれない。

2回・3回はお互いに三者凡退で終わってしまった。私の方にはボールは飛んでこなかった。相手チームがみんな右バッターだったのもあるけど、まぁ試合ではよくあることだけどね。


4回表、先頭バッターは私、がんばらないと!


「追い込まれたら高いボール来るから気をつけろよ」


先ほどの打席で、追い込まれた後に高いボールを放られてファールアウトになった鯨子のお父さんが声をかけてくれた。

試合前に平松さんに投げてもらって少しは感じは掴めたけど、いきなり放られると驚いちゃうな。

追い込まれる前に打っていかないといけないかな。


左打席に入って、一つ深呼吸しながらバットを振りぬいた。ビュッと風を切る音が聞こえた。少しバットが普段使っているものよりか重いけど大丈夫かな。バッターボックスの後ろより、ベースよりも少し後ろにスタンスを広げてストライクゾーンのマットの真横に立つように構えた。この方が打ちやすいって教えてもらったものね。

主審のコールが入って4回表の攻撃が始まった。相手チームは私は左打席に入ったので、右シフトを組んでいる。しかし、レフトはそれほど寄っておらず、外野は少し浅めの感じ。多分、ここまで飛んでこないって踏んでるんだろうな。ちょっと見返してやりたいと思い闘志が湧いてきた。

相手ピッチャーの投げる一球目、初球から高いボール? 一投目から高いボールを投げてきたの? さっきの平松さんに投げてもらったボールよりも高くゆっくりとボールが頂点から落ちてくる。

コース的にはストライクゾーンのマットに落ちてくる。それならこのままタイミングを合わせて振れば大丈夫のはず!


落ちてくるボールに目線を合わせつつバットを振りぬく。しかし、ボールを捉えた感覚が手に伝わって来ない。バットを振った後にボールが落ち、マットにボールが当たった。空振りしてしまった。急に力が抜けたか、振ったバットに引っ張られてバランスを崩してよろけてしまった。


「早い!早い! もっと引き付けないと!」


ベンチで次の打者の高木さんが両手をバットで構えるようにして縦に握って並べた。二球目はそれほど高くは無いボール。これもストライクゾーンに落ちてきそう。追い込まれる前にここで捉えておかないと! 落下するボールに一呼吸置いてからバットを振りぬく! バットにボールが当たった。今度は捉えた! しかし、打球はライナーで左に逸れ、サードベースの脇に立っているベースコーチの辺りを掠めていった。


「んー、もうちょいだねぇ、スローピッチ初めて?」


相手チームのキャッチャーの方が新しいボールをピッチャーに返しながら話しかけてきた。


「はい、普通のソフトはやってたんですけど・・・」


「それじゃ尚更、慣れるまで大変かもしれないけど、がんばってみてよ」


ニコニコしながら答えてくれた。やっぱり数こなしてナンボだね。っていきなり追い込まれちゃったから、次は確実に高いボールで攻めてくるはず! 相手ピッチャーの投じた三球目はやはり高いボール! それも初球よりも高い!? 微妙にストライクゾーンより外れている? ボールがさっきよりもゆっくりめに落ちてきているからゆっくり合わせないといけないし、何よりファールを打ってしまったらその時点でファールアウトになってしまうからミートを心がけないといけないし・・・あーもぅ色んなことが頭の中をぐるぐる駆け廻ってくる…。

いろんなことが頭をよぎってきたけど、こうなったら当てることだけを考えてまずは・・・振りぬく! 鈍い感覚が手に伝わる。当たるには当たったが芯で捉えた感じではない。勢いの無い打球が三塁線に転がっていく。しかもかなり弱く、サードべースの辺りまで届かないくらいの弱さだ。


「ホラ、走る!走る!」


ベンチから声がかかる。そうだ、フェアかファールか微妙だけどとにかく走らないと! ボールの方はサードが前進してボールを掴もうとする。私はそこで目線を変えて一塁ベースだけを見て走り、ダブルベースの外側を踏んで駆け抜けた。


「セーフ!」


塁審をしている平松さんがコールした。ゴロを捕ったサードからボールが投げられたが、間一髪私の方が早かった。


「ボテボテだった分、間に合ったようなもんだなぁ」


平松さんが話してくれた。呼吸はまだ乱れてるけど一塁ベースに片足を乗せながら屈伸運動をした。気持ちはもっと先かなって思ったんだけどなぁ。しかも引っ張れずに三塁線に転がってしまったし、打つだけでも難しいなぁ。


「離塁はピッチャーから手を離してからじゃなくて、バッターが打ってからだからね」


一塁コーチャーの山下さんが教えてくれた。そう、これもスローピッチの特徴の一つ。癖で投手がボールを放ってから塁を離れてしまいそうになっちゃうんだよね。

次のバッターには先頭の高木さんが打席に入った。

高木さんは初球を叩くとセカンドの守備位置とセカンドベースの間を綺麗にゴロで抜いていった。これはヒットになるかな? でも、セカンドベースの後ろ辺りには自由な場所に守れるショーフィルが守っている。ゴロを外野の位置で捕球するとセカンドに返球してきた。

私は打った直後にスタートを切ったけれど、セカンドまでまだ三分の一の場所を走っていた。セカンドへ滑り込んだが、その前にショートが入っていたセカンドベースにボールが返送されてしまった。あちゃーフォースアウトだ。

一塁はさすがに間に合わなかったのかそのまま一塁には送球しなかったのでゲッツーは免れたが私はフォースアウトになったのでベンチに戻った。


「いやー、ゴメンゴメン」


一塁ベース上で高木さんが私に謝ってくれた。まぁ、こればっかりは仕方ないね。それにしてもショーフィルってのは自在に守れるから内野を抜いたとしても油断できないなぁ。ゴロで抜けたかと思ってちょっと安心してスタートが遅れたのもあった。


「まずはヒットおめでとさん」


ベンチに帰ってきたら長崎さんが褒めてくれた。


「えっ、まぁボテボテですけど・・・」


「いいんだよ。全力でやったんだからあのような結果になったんだし。これからこれから」


結局、その回は後続が続かず、無得点で終わっちゃいました。

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