第四球「初回の攻撃!」
試合開始!
まずはナッちゃんのチームのおじさんたちがいいところを見せようと奮起しますが・・・?
試合が始まってすぐに相手チームの極端な守備位置に気が付いた。
「レフトがいない?」
外野の守備が極端に右シフトを組んでいる。ライトの守備位置がライト線際に寄り、センターはほぼライトの守備位置に、レフトがセンターの位置を守っている。ショーフィルと呼ばれるどこでも守れる人はセカンドベースの奥を守り、センターとの間にいるような感じで、レフト側はサードとショートが抜かれたらランニングホームン確定といった感じである。
「あれって、流し打ちしたらランニングホームランできるんじゃない?」
思わずベンチで声に出してしまった。
「ああ、高木さんはそんなことしないよ。それにあの人、不器用だし」
隣に立っていた平松さんがそう答える。極端に引っ張りしかできないってことなのかな。
そう思ってると高木さんは初球をいきなり打った。鋭い低いライナー性の打球が狭いセカンドとファーストの間をすり抜けていく。ボールは外野の芝の上を転がってライトが捕球した。
「それに、あの方が盛り上がるだろう? あんなに相手が警戒していてもそれを破ってヒットにする。気持ちいいじゃん。ナッちゃんも勝ち負けにこだわった世界にずっといたから、時々はこういった試合もいいんじゃないかな」
平松さんが手を叩いて高木さんに声をかける。なんかこういった試合するの久しぶりだなぁ。
続いてショーフィルの加藤さんが左打席に入った。引き続き、相手チームは右シフトを組んでいる。
「もう、相手も分かってるから、ああして守備位置を変えないんだ」
相手ピッチャーの投げる初球、高木さんに投じたボールよりも高く上がった。加藤さんはバットを振るそぶりを見せず見送った。ドスンとボールがマットの後方一杯の所に落ちた。
「ストライク!」
審判をしている山下さんが宣告した。主審は攻撃側のチームから出していた。
「あーんな高くボールを放って、ギリギリ一杯に入れるコントロール、相変わらずたまらんわー」
加藤さんがバッターボックスで二、三度素振りをしながら大声でベンチに向かって話す。みんな大笑いしてる。試合前に平松さんが相手のピッチャーのコントロールが凄いって言ってたけど、本当に凄い!
「次はそーはいかんでー」
相手ピッチャーが第二球を投げる、このボールも高い。しかし、ストライクゾーンのマットの上に垂直に落ちてくるようだ。
「あっ、アカン」
打った瞬間、加藤さんがそう声を漏らした。タイミングが合わなかったか、力の無い打球がゴロで相手のピッチャーの目の前に転がっていった。そのボールを握るとショートが入ったセカンドに投じた。打者が打ってからでないと走れないルールなのでまだランナーの高木さんはまだちょうど塁間にいるくらいだった。
セカンドからファーストにボールが送られてゲッツー成立。加藤さんはベースの三、四歩手前でした。これで二死ランナーなし。
「それじゃ一発狙ってくかな」
長崎さんが打席に入る。この人も左打席だ。相手チームは変わらず右シフトを敷いている。高く上がった初球は見逃す。ストライクゾーン手前にボールが落ちた。
「この間、二本もホームラン打ったから相手も警戒してんな」
平松さんが解説してくれた。前にやった試合でホームランを打たれているから警戒しているようだ。続けて投じられたボールもストライクゾーン手前に落ちてボールが先行した。
セオリーどおりならここで一球入れてくるんだよね。と思っていたらやはり高さを抑えたストライクを取りに来たボールを相手ピッチャーが投じてきた。
待っていたといわんばかりにタイミングをぴったり合ったスイングから放たれた打球はライトの頭を悠々と越えて飛んでいき、外野のフェンスに直撃した。
「回れ回れ! 三塁まで行けるぞ!」
ベンチから声が出る。ライトがフェンス際でボールを確保した時、既に長崎さんはセカンドベースを回っていた。ライトからセカンドがライトの定位置くらいまで中継に走り、そこからセカンドベース付近にいるショーフィルに送球した。しかし、送球は右に逸れて誰もいないレフト側に転がっていく。それを見て長崎さんが加速して三塁を回り一気にホームまで駆け抜けた。ランニングホームランで先制!
ベンチに戻ってきた長崎さんをみんなでハイタッチ。私もハイタッチ。
「こうやって打つんだぞ」
ニヤケながら長崎さんがハイタッチした時に言ってくれた。あんな風に打ってみたいなぁ。続く、レオンさんは初球を打ち上げてレフトフライとなりこちらの攻撃が終了となった。
「よし、1点取ったししっかり守るぞ!」
オウと声を出してみんな守備に入る。私もライトの守備だ。頑張らないとね。
つづく
初回の表の攻撃です。
後でこの試合で話数をまとめる予定です。