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第0話 事件前
カタカタカタと、指がキーボードを叩く音が響く。
深夜遅く、もう大半の人が寝静まるはずの時間帯に、彼は1人で部屋に明かりも付けずにキーボードを叩く。
部屋を照らす明かりは、目の前に起動しているパソコンのディスプレイのみ。
そんな明かりに照らされる、キーボードを叩く男の顔は、まだ年若い。
20代前半だと思われる男は休まずキーボードを長く叩いていたが、ようやくその手を止めた。
「・・・・・・完成だ」
感慨深げに、男は小さく呟いた。
「これでやっと・・・・・・」
何年もの時間を費やし、数々の協力者を得てやっと完成した作品を見て、男は静かに微笑んだ。