第八話 情報屋(インフォーマー)
異世界には職業という習得することで戦いの技術を向上させるものがある。
疾風や他の精霊使いはそういった職業に就くのが普通だ。
しかし、疾風とシルヴィと行動を共にし始めたガオウが選んだ職業は情報屋だった。
「情報屋って戦闘に関係ない職業だけどいいのかしら?」
「それにもともと戦士だったみたいだけど大丈夫かしら?」
ギルドのオーナーが心配そうにガオウに尋ねた。
戦闘に関係のない職業の存在はここに来た時に疾風は聞かされていたがまさか言っていたガオウ本人がそれになりたいと言うとは誰も思っていなかった。
「俺はもうこの斧をまともに振ることができねぇ。」
「だから、まぁ、その・・・このチビのために役立てそうな職業を選んだだけだ。」
ガオウは恥ずかしそうにオーナーに言葉を返した。
「あら、そう、ならいいんだけど。」
オーナーは納得した。
「ガオウさんチビって僕のことだよね。」
「いいのかい、マイトさんを探しに行かなくて?」
「うるせぇ、俺が決めたんだ、どうでもいいだろ。」
「ちょっと待ってよ君、いったい何のつもりだい?」
ガオウは疾風のためと言っているがシルヴィがガオウにつっかかった。
「それで君にメリットはあるの?」
「こいつ何か企んでるよ疾風。」
「シルヴィ、ガオウさんはそんな・・・」
疾風が喋り終える前にガオウが言った。
「俺はこいつに借りを返したいだけだ!」
「それ以上何もねぇよ!」
ガオウは少し必死になりシルヴィに訴えた。
「シルヴィ、ガオウさんは僕達に沢山のことを教えてくれた恩人だし、昨日の夜だって平気だったでしょ?」
「それに仲間は多いほうがいいしさ。」
「だから一緒に行動してもいいじゃないか、ね。」
「まぁ、疾風がそういうなら・・・」
何とかシルヴィが納得したようだ。
ガオウとシルヴィの口論で場の空気が少し重くなった。
そんな中、疾風が急に
「ところで情報屋ってどんな職業なの?」
「あらまっ!」
オーナーは驚いていて、シルヴィは目を見開いていて、ガオウはため息をついていた。
「またお得意の質問だな。」
疾風は申し訳ないといった様子で教えを乞うた。
「教えるほどでもないけど名前のとうりね。」
「情報を保有し提供する職業よ。」
「会話の駆け引き能力が上がるのも魅力的ね。」
「マスターすれば暗号の解析なんかもできちゃうらしいのよ。」
らしいというのは、この集落の周辺で情報屋に就く人はほとんどなく、就いたとしてもマスターになるほど続ける人がいないんだとか。
実際のところは情報屋の最大の武器「情報」を守るためマスターした事実を隠しているとオーナーは予測しているらしい。
「じゃあ、ガオウさんはその能力で僕たちをサポートしてくれるってことだね。」
「だからそう言ってんだろ。」
「シルヴィ、良かったね。」
シルヴィは相変わらずの様子だったがガオウに一声かけた。
「一緒に行動するなら風の精霊って呼ぶのはやめてくれる?」
「へいへいシルヴィ様。」
自分もガオウさんのこと君って言っているのにいいのかなと疾風は思ったが、シルヴィの嬉しそうな顔とガオウの呆れつつも嬉しそうな顔を見たらどうでもよくなっていた。
疾風は盗賊、ガオウは情報屋に。
決めることは決め、ギルドでのやるべきことは終わった。
三人はオーナーにお礼と別れを告げギルドから出た。