第三話 土の精霊(ノーム)との戦い 中編
ガオウは反射的に一歩下がった。
先ほどまで逃げていた相手が自分の方に向かい初め警戒したのだ。
{おい、マイトやつはどういうつもりだ?}
{我々から逃げるのを諦めたのでしょう。}
疾風とシルヴィと同じように声に出さずともこの二人も会話ができる。
「今更、謝っても容赦しねえぞ!」
ガオウは疾風に向かい大きな斧を縦に振り下ろした。
~数秒前~
{それでどうすればいいのさ?}
{風を感じ取れる疾風ならあいつの攻撃をかわせるはずだよ。}
{無理だって!}
{大丈夫だって。}
{それに体もほら、軽くて速く動かせるようになってるでしょ。}
二人の会話はガオウが一歩下がり斧を振り下す直前まで物凄いスピードで続けられた。
{来るよ、疾風!}
~現在~
<<ズドォーン!!!>>
爆風が立つのと同時に森に大きな音が響いた。
ガオウが斧を振り下した先に疾風の姿はなく、地面には大きな穴だけが残った。
{ガキがいねぇ?}
ガオウが一瞬戸惑っていたとき、背後から声が聞こえてきた。
「後ろだよ!」
ガオウが後ろを振り返る前に背中から大きな衝撃がガオウを襲った。
その衝撃は疾風の渾身の体当たりであった。
ガオウにとってはバランスを崩す程度の衝撃だったが、片足が自分であけた穴にはまりその場に倒れてしまった。
{疾風今のうちに逃げよう!}
疾風はガオウから一気に離れ、姿が見えなくなるまで走り続けた。
{すごいよ疾風!}
{やっぱり君を選んでよかったよ!}
シルヴィが疾風の中で子供の用にはしゃいでいる。
{あ、うん・・・。}
先ほどのガオウの一振りをかわした時の出来事を疾風は思い出していた。
振り下され自分に当たる直前に疾風は斜め前に飛び、ガオウの後ろに回り込み、シルヴィの指示で体当たりをした。
そのとき確かにガオウと斧から伝わる風を鮮明に感じどうすれば当たらないかが疾風にはすぐにわかった。
そして体も自分の思い描いた通りに動いてくれた。
それはまるで自分が風になったかのような錯覚に陥るほどのものだった。
{まぁ、うまくいったのはあの男と疾風に体格の差があったのと爆風で体が隠れてくれたおかげかもね。}
{そうだね、うまくいきすぎたね。}
疾風とシルヴィは走りながら会話をした。
そして例のキノコの方に向かいそのままそれをとったら森を出ることに決めた。
{シルヴィのおかげだよ、ありがとう。}
{違う違う体を動かしたのは疾風じゃないか。}
{あと風の力は土の精霊とは相性いいんだ。}
{相性?}
{そ、相性。}
そして例のキノコが見つかり袋に詰め込んだ。
二人は森を抜けるため来た道を戻り始めた時だった。
「よぉ、お目当てのもんは手に入ったか?」
そこには振り切ったはずのガオウが再び現れていた。
ガオウの顔には怒りがこもっており今にも襲いだしそうな様子だ。
キノコを見つけたとき不機嫌そうな男が現れる。
初めてガオウと会った時と状況はよく似ている。
先ほどと違うのは疾風が逃げ出すのではなく右手にダガーを構えていることだ。