第一話 風の精霊(シルフ)との出会い
初めての投稿です。
森を駆け抜ける少年とそれを追いかける、斧を持った大柄な男。
「ちっ、すばしっこいやろうめ。」
重そうな斧を持った男は斧の重さをものともせず、少年を追いかける。
どうしてこんなことにと昨日の出来事を後悔する少年。
~昨晩~
「ごちそうさま」
髪の毛で目が少し隠れ、体は小さく、かっこいいというよりはかわいい顔をした
少年が手を合わせて言った。
いつも通り夕食を食べ終え、自分の部屋に戻り宿題を終えベッドに潜り込む。
目覚まし時計を午前6:00にセットし眠りに落ちた。
いつも通りの一日が終わった。
「おはよう!」
「わっ!」
少年は突然な声にびっくりし目を覚ましたが、見える景色は宇宙のような何もない景色だった。
そんな景色を遮るように目の前に羽が生えた小さな生き物が現れた。
その生き物は黄緑色の布を纏い、可愛らしい女の子のような顔立ちで、まるでティ○カーベルのような妖精の姿をしていた。
驚く少年のことは気にせずその生き物は喋りだした。
「私の名前はシルヴィ!、風の精霊のシルヴィだよ!」
シルヴィと名乗る風の精霊はさらに喋りだす。
「君の名前を教えて!」
まず、ここがどこかもわからず、目の前には喋る見たことない生き物に驚き名前どころではない。
「僕のことより、ここはどこなの?それに風の精霊って?」
と自分の理解を優先する少年。
「後で答えるから名前を教えてよ!!」
と怒鳴り返すシルヴィ。驚き少年は
「ご、ごめん。」
「僕は火山疾風だよ。」
「疾風、怒鳴って悪かったね。」
「でも名前を知らないと呼びずらいでしょ?」
落ち着いたシルヴィは疾風を見つめた。
「ここは単に想像の世界、夢のようなものかな。」
「疾風の夢に私が入り込んだだけだよ。」
「夢?自分の体も自由に動かせるし、どうして会話もできるのさ?」
「うーんとね、さっきも言ったように私は風の精霊。」
「君たちの住む世界とは別の世界、異世界の住人で、この世界、人間界にも少しだけど精霊の力が自然には宿っていてそこから君の夢に干渉したわけさ。」
混乱する疾風はシルヴィに次々と質問をした。
どうやらシルヴィは異世界の王になるために疾風のもとに来たようだ。
そして精霊は人間に宿り力を貸すことができるが、精霊単体では何もできないこと。
風の精霊以外に土、火、水の精が存在し同じように王を目指していること。
要するに人間と契約し異世界に来てもらうために夢に干渉しに来たらしい。
「具体的に王になるためにはどうするのさ?」
さらに質問する疾風。
「他の種族の精霊を宿した人間を倒して、仲間にして、王のイスに座ることかな。」
シルヴィの抽象的な話をまとめると、四つの精霊の力を合わせなければ王のイスにかけられた封印を解くことができない。
どの精霊も自分が王になりたいため簡単に仲間にすることができない。
イスに座り王になれるのは一つの種族だけなこと。
つまり、王になるのはほぼ不可能ということが分かった。
そしてシルヴィが付け加えるように最後の条件を言った。
「王になるのは、契約した人間もなんだけどね。」
その後キラキラと目を輝かせながら話し続けた。
「王になったらなんでもできるんだよ!」
「こっちの世界にもいつだって戻れるし、他の種族だって従えることだって!」
王になったときの良さを湧き上がるように話し続けるシルヴィにどこか危うさを感じながらも疾風は思った。
確かに王になるのも悪くないかもしれない。
マンネリ化された世界を退屈に思っていた疾風は少し興味を持った。
「わかった、契約するよ。」
「そうこなくっちゃ~!!」
それと同時に、シルヴィが疾風に向かって突撃した。
~次の日~
目覚まし時計のアラームで目を覚ました疾風。
時刻は午前6:00のはず、だが外は暗い。
それに毛布のベットで寝ていたはずが、わらの寝床に変わっていた。
「こんばんは!」
「わっ!」
そこには昨日の夜、夢に出てきた生き物、シルヴィがいた。
疾風は自分のほっぺたをつねった。
痛みがある。
「ここは、まさか・・・」
「そう!、異世界へようこそ!」
どうやら疾風は本当に異世界に来てしまったらしい。
枕元には二つのダガーと目覚まし時計。
もちろんこの世界では、目覚まし時計は使い物にならなそうだ。
これが夢か現実かと迷っている疾風にシルヴィが
「明日はキノコを採りに行くよ。今から向かえば誰にも邪魔されずに早朝には森につけるかな。」
なぜキノコなのか、そして目的は精霊の宿りし人間を倒し従えることではないのかと疾風は疑問に思った。
「キノコなんか採って意味あるの?」
「疾風は何も食べないで生きていけるの?」
「それは無理だけど、冷蔵庫には食べ物があるし。」
「おなかが減ったらコンビニで・・・。」
言っている途中で部屋の窓から周りを見渡すとそこには人間界とはかけ離れた景色をした世界が見えた。
暗くてよく見えないが明らかに|人間界ではないことはわかった。
「疾風の世界とはここは違う。それにキノコの中には高く売れる種類のものもあるんだよ。」
「ダガーだけの装備とアイテムじゃとてもじゃないけど王にはなれないよ。」
「た、確かに。」
二つのダガーを見ながら疾風は答えた。
「それじゃ、行こうか!」
小さな家を出ると、村のような集落になっておりどの家も木やわらなどでできていた。
他の住人を起こさないように疾風とシルヴィは集落を抜け出した。
異世界は人間界とは違い木々や川や山が多く自然豊かである反面、
文化的にはすごく劣っている感じがした。
疾風とシルヴィは暗闇の中、ゆっくりと歩いて行った。
「どうして僕にはダガーが用意されたんだい?」
暗闇で自分に用意された武器について疾風は聞いた。
目的地までは時間があるためゆっくりと丁寧にいつもどうりの抽象的な話し方で
シルヴィが説明を始めた。
「私たち風の精霊が宿ると人間は風の力が使えるんだよ!」
「風の力・・・?」
「体が強くなったり、風を操ったりできるようになる~」
「最強じゃないか!」
「わけじゃなくて~」
「わけじゃないのかよ!」
なかなか知りたいことが聞けず少しカッカする疾風。
「疾風の動きに風の力が宿るんだよ!」
結局よくわからないまま風の力の話は終わった。
「ダガーは風の力と相性がいいのと、疾風の筋力でも軽いから使えるし、合ってると思ったから選んだんだ。」
「僕に合ってる?」
シルヴィに言われたがどうして自分に合ってるのかはよくわからなかった。
「あと僕と契約して僕に突撃して、体の中に入ったように見えたのにどうして普通にいるのさ?」
夢での契約の中シルヴィが突然、突撃した時の話をした。
「私の力を使わないときはこうして存在できるんだよ。」
「私の力を使いたいときに呼んでくれれば疾風に宿ることができるんだよ。」
なんとなく理解した。
そうこう話をしていると夜が明け、森についた。
森の中にはリスや鳥といった小さな生き物や見たことのない昆虫などがいた。
この世界には精霊や精霊の力を宿した人間の他、こういった生き物や
人種といった人間に似ている存在が存在するらしい。
疾風とシルヴィは目的の高値で売れるキノコを探した。
その途中食べられそうなキノコや木の実なども用意した小袋に詰めた。
「駄目だ、全然見つからないよ!」
と先にシルヴィが弱音を吐いた。
「採り行こうって言ったのはシルヴィじゃないか。」
「そうだっけ?」
ハァとため息を吐き少し視線を下げた疾風の目にシルヴィに教えてもらった模様のあるキノコが目に入った。
「シルヴィあれって・・・」
<<ガサッ!>>
そのとき自分たちしかいないはずの森で木が揺れる音がした。
熊?と疾風は思った。そのとき
「隠れて!」
咄嗟ににシルヴィが小声で言ったが遅かった。
疾風たちの前には熊やイノシシではなく大柄な男とその男の肩に乗っている小人の姿が現れた。
男の方は疾風より一回りどころか二回り以上大きく、腰に斧をぶら下げていた。
小人はとんがった帽子を被り髭を生やしている点は男と同じだがきれいに生えそろっていた。
「土の精霊・・・。」
シルヴィがそういった後、男が
「ガキに風の精霊じゃねぇか。」
「てことはマイト、そこのガキが精霊使いか?」
「そのようですね、ガオウ」
マイトと呼ばれる小人と大柄の男ガオウはさらに
「てめえらの欲しかったのはこのキノコか?」
「こっちに来たばかりの雑魚はこれをほんとによく狙いに来るな。」
「欲しいなら、俺の手下になるんだな。」
「全く四大精霊を集めねえと王になれねぇとはめんどくせぇな。」
「まぁまぁそういわずにどんな雑魚でも連れていき、封印を解くことができれば王のイスには座れるので。」
ガオウとマイトは疾風たちに構わず話をした。
そのときシルヴィが
「いやだね!」
「王になるのは私たちだしそこのキノコも私たちのだ!」
と、この状況で相手を挑発するようなことを言ってしまった。
「ああそうかい、なら一旦痛い目見てもらおうか!」
「こいマイト!!!」
とガオウが叫んだ途端に肩に乗っていたマイトがガオウの中に消えていった。
それと同時に斧を出したガオウが襲ってきた。
疾風は咄嗟に背を向け逃げ出した。