第九節 修学旅行
一行は沖縄に着いた。那覇空港でも、クラスの担任が点呼をとった。
「11月だってのに、沖縄は少し暑いな、点呼をとるぞ」
点呼をとると、一行はバスに乗り込み、あったかビーチへ向かった。あったかビーチに着く。天候は曇りとなり、少し涼しいといった体感温度だった。その海では、希望者のみ泳ぐ事となっていた。
「沖縄の海だぜー!」
「泳ぐぞー!!」
男子達は元気に泳ぎ始めた。
「あっはっは。男子、馬鹿だねー」
女子達の殆どが泳がなかった。爆破もその一人である。
(元気なものだな……日焼け、しなければいいのだが)
数十分経って――、
「おい! 何だアレは!?」
「ん?」
「ゾゾ……」
「ゾム……」
「ゾ……」
五体のゾムビーが海岸線に現れた!
(何!? 五体も……だと……?)
爆破は身構える。
「こっちへー! 海岸線から離れてー! 前の人を押したりしない様に!」
「もしもし、ゾムビーが現れた! 救護を頼む!」
教師は、生徒を誘導したり、警察へ連絡したりしている。そこにいたほぼ全員が、海から離れて行った。爆破スマシ、只一人を除いては――。
「何をしているんだ! 爆破! お前も逃げろ!!」
教師は大声で叫ぶ。しかし爆破は動かない。
「……バースト」
「ゾ?」
「ボッ!!」
爆破は一体のゾムビーを撃破した。
「何!?」
教師は驚愕した。
「(相手はそれぞれ、まばらな位置に離れて立っている! いっぺんに相手にするのは、無理だ。なら!)……バースト」
「ボッ!!」
「一体ずつ倒していくのみ……」
「ぎゃああああ!!」
「!」
突如、悲鳴が聞こえた。声の先を見つめる爆破。そこには、腰を抜かした男子生徒が、ゾムビーに襲われていた。
「ゾム……ゾム……」
「ぎゃああああ!! 来るなああああ!!」
(クッ間に合わない!!)
「ゾムバァアア!」
「バシュッ」
ゾムビーは男子生徒に、体液を浴びせた。
「ぎゃああああ……ああ……ゾ……ゾム……」
男子生徒はゾムビー化した。
「うわあああああ! モッさん! モッさんがぁああ!!」
「クッ、やられたか」
他の男子生徒が叫ぶ中、爆破も冷静ではいられなかった。
(落ち着け、爆破スマシ。今は只、犠牲者を最小限に抑えるのを優先しろ!)
周りを見渡す爆破。うずくまる女子生徒が一人、居た。駆け寄る爆破。腕を肩に掛ける。
「立てるか?」
「あ……うん、ありがとう」
その時――、
「ゾムァアア」
後ろからゾムビーが襲ってきた。
(まずい……間に合わ……)
次の瞬間――、
「タタタタタタタ!」
銃器から弾丸が放たれる音。
「ゾゾ!」
ハチの巣になっていくゾムビー。ほんの数秒で、ゾムビーは葬られた。
「Hey kids!」
「! 外国人か?」
そこに現れたのは在日米陸軍の軍人だった。
「Next……」
「タタタタタタタ」
「ゾム……!」
「ゾ……!」
20人程現れた軍人たちは次々とゾムビー達をハチの巣にしていった。最後に、あの男子生徒だったゾムビーが残った。
「Sorry boy……」
「タタタタタタタ」
残ったゾムビーも同じ様に処理された。爆破は思いを巡らせる。
(流石、軍人だ。その辺の警察や自衛隊よりも、ずっと頼もしい)
軍人たちは話し掛けてくる。
『ここは任せて、避難すると良い』
『分かりました。お願いします』
英語ができる教員が対応し、挨拶を済ませ、一行はあったかビーチから離れた。
一行は泊まるはずだったホテルに集まった。一人の教員が、話し始める。
「皆、本当に残念だが、ゾムビーが出たので、修学旅行は中止にする。一人の犠牲者も出てしまったしな」
「えー」
「そんなー」
「残念―」
(クソ! 守り切れなかった……同い年の生徒を……!)
爆破は自責の念にかられる。
「そこでだ、せめてお土産を買う時間を設けるから、皆それぞれのお土産を買ってくれ。以上だ」
(お土産……か。そんなモノ買う気分じゃない……!)
ハッとする爆破。
(そうだ……! 好実……アイツに買ってやろう)
国際通りを行く爆破。キーホルダーや、お菓子を手に取って見る。20店程見て回った末、財布と相談しながら、遂にお土産を買う爆破。それはシーサーのキーホルダーだった。魔除け、厄除けの作用があると信じ、購入した。心に秘めた思いは、絶対にゾムビーと遭遇しないで欲しい、絶対にゾムビー達の犠牲にならないで欲しいというものだった。
お土産を買う時間も終わり、一行は飛行機に乗り込んだ。数時間のフライトの間、爆破はスヤスヤと眠った。
2,3日後――、
いつもの通学路にて。
「聞いたぜスマシちゃん! 修学旅行、残念だったなー」
「全くだ。首里城など、行きたいところ、見たいものが沢山あったのにな」
「俺らは3月に修学旅行があるからなー。スマシちゃんの分まで思いっ切り楽しむぞー!」
「ああ、そうしてくれ。時に――」
「?」
「お土産を買ってきたんだ。受け取ってくれ」
「ああ、何でも受け取るとも。サンキューな」
包装されたお土産を受け取る杉田。ガサゴソと包装を破って中身を見る。
「へー、シーサーじゃん。流石沖縄」
「厄除けになると思って――な。絶対にゾムビーと遭遇しないで欲しい、絶対にゾムビー達の犠牲にならないで欲しいという思いで、買ったんだぞ?」
「成程」
腕を組む杉田。次に口を開く。
「もし、俺がゾムビー化したら」
「!」
「容赦なく殺してくれ」
「馬鹿者!! 何故そんな事を……」
爆破は怒鳴った。目にじんわりと涙を浮かべながら――。
「好きだから――、スマシちゃんに生きて欲しいからに決まってるだろ?」
「! ――」
顔が赤くなる爆破。次に口を開く。
「な……なら、私がゾムビー化しても、殺してくれ」
「無理だ」
きっぱりと断る杉田。
「な……何故だ! 道理に適ってないであろう!? 不平等だ!!」
「ハハッ、俺はバーストなんて、超能力なんて使えないんだぜ? しかも銃器を扱う軍人でもない。だから俺にゾムビーを殺す力は無い」
「成程、心情的に無理なのではなく、能力的に無理なのだな?」
「んー、その条件ならどっちも無理かな?」
「何故だ!? 能力的に殺せないなら百歩譲ってアリだが、心情的に無理というのは道理が通らんぞ!」
「好きだから――じゃあダメかな」
「! ――」
再び顔が赤くなる爆破。
「ひ……卑怯者!!」
「ハハッ、卑怯で結構。じゃあこうしよう。俺がゾムビー化したら、スマシちゃんが俺を殺す。スマシちゃんがゾムビー化したら、俺もゾムビーになろう」
「――、阿呆か! キサマは!!」
「忘れたのかい? ちょっと前の事を」
「!」
(回想)
「そうか、前に好きだった相手には、先立たれてしまったのだったな」
爆破の頭をくしゃっと撫でながら杉田は言う。
「そーゆーコト!」
「わ……私は! その娘の様にはいかんぞ!」
「?」
「お前よりも、長生きしてやる! それで、お前を苦しる様な事はせん!!」
(回想終了)
「まさかあの約束は無しってコトにはならないよね?」
「! ――」
爆破は冷静ではいられなくなった。そして2,3秒、深呼吸をしてから言う。
「参った。分かったよ。お前を苦しめない為に、その条件を呑もう」
ニッと杉田は笑った。




