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回避とサイコとツトム外伝  作者: 時田総司(いぶさん)
爆破スマシという女

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8/18

第八節 迷い

ゾムビー二体と対峙する爆破。ゆっくりと左腕をかざす。


「バースト……!」




「ボッ!!」




ゾムビー一体は木端微塵に爆発した。


(あと……一体……)


残る一体は、元は人間だったゾムビー。そのゾムビーを殺す事を、爆破は躊躇っていた。


(迷うな……。ああなってしまえば、もう助かる見込みは無い……)



そこで――、


「うわあああん! お父さぁーん!!」


「!」


遠くで、現ゾムビー、元男性の、娘が泣き叫んでいた。


「こら! メイ! 諦めて……逃げな……さい」


娘の母も涙ながらに声を上げていた。


(殺すしか……無いのか……?)


爆破は更に戸惑う。




「スマシちゃん!!」




杉田の声が飛んできた。


「スマシちゃんがやらないと、あの家族も! スマシちゃん自身も! 俺も! 死んじゃうんだぜ!?」


(!! 好実が……死ぬ……!?)



(回想)


「やあ。こんなところを一人で歩いていたら、危ないオジさんに連れてかれるぜ?」


一人の少年が話し掛けてきた。


「誰だ? キサマは」


「俺か? 俺は杉田好実すぎたこのみ。中学2年の青春真っただ中の少年だ!」




「へへ」


人差し指で鼻を擦る杉田。と、ここで爆破が口を開く。


「一つ聞いて良いか?」


「?」


「何故、私に……こ……告白などしたのだ? どんな所を気に入った結果なのだ?」


「好きな理由か?」


「ああ」


「一目惚れ……かな?」


「!! ――」顔を赤くする爆破。




「今日、学校で良いコトあるぜ? じゃあまた、夕方――、な」




「そ、そうだ! こっちもプレゼントを用意しているんだ。目を……閉じてくれ」


「成程、驚かせたいんだな? りょーかい! 目ぇ閉じるぜ」


杉田の身長は174cm、対して爆破は160cm。


爆破は背伸びする。そして――、




二人の唇は重なり合った。




(回想終了)



爆破を戦慄が襲う。


そして――、


「……ゃだ……やだ……嫌だ!!(絶対に好実を、殺させない!!!!)」


目をキッとさせ、ゾムビーを見つめる爆破。そして――、




「うぉおおお!! バーストォオオ!!」




「ボッ!!」




ゾムビーは跡形も無く弾け飛んだ。


「あぁ、お父さん……」


元男性の娘は悲しみに打ちひしがれて、涙さえ出さずに只々、ゾムビーが居た方向を見つめていた。ハッとなり、爆破はその少女に近付いた。爆破は更に少女の目線にあうようにしゃがみ、言う。


「済まなかった。しかし、君を守るためでもあるんだ……」


爆破の言葉に耳を傾けていた少女は次第に目頭が熱くなり、俯く。そして爆破をポカポカと殴りながら言った。


「お父さんを……返してよぉ……」


爆破は少女と視線を合わせた。遂にボロボロと涙を流す少女。涙を流さずにはいられなかった。実の父親が、ゾムビー化して殺されたのだから。


「――、……!」


爆破は酷く心を痛めた。いたいけな少女の大切な人の命を奪ってしまったのだから……。そこへ――、


「よっしゃ! 全部倒したな、スマシちゃん! ……? どうした!?」


杉田が寄って来た。杉田はすぐさま爆破の様子がおかしい事に気付いた。


「最後の一体……この娘の父親だったんだ……」


爆破は俯いて、言った。


「……そう……だな」


杉田が呼んでいた警察や機動部隊が駆け付ける頃には、事は終わっていた。殺人罪を負う覚悟でいた爆破だが、無罪放免となった。



ゾムビー化した者はゾムビー。倒すべき対象なのだと、爆破は思い知らされた。




帰りのバスにて――。


「まーだくよくよしているのかい? スマシちゃん」


「初めて人を殺めたんだ。それがゾムビー化したそれだとしても――」


「でも、仕方ない事じゃないか? 良くは無いけど、仕方ない……」


「しかし! 私は人を殺めたんだ……それでも無罪放免で……」


「じゃあこうしよう」


「!」




「ゾムビーが悪い」




「! ……ふっはは、何だそれは?」


「あー良かった、スマシちゃんがやっと笑った。スマシちゃん、超能力が使えて、ゾムビーと対峙できるのはスマシちゃんしか居ないんだよ。スマシちゃんの道、スマシちゃんの人生なんだ。誰も変わってはくれない。受け入れて、生きていくしかないんだ」


「……分かった」


「あと」


「?」


「馬鹿正直は馬鹿を見るんだ。少しだけ卑怯に、賢く生きていかないと、大人には成れないよ」


「それは言わんで良かろう?」


「そっかぁ。じゃあ話は逸れるかも知れないけど一つ、言っておこう」


「!」




「物事には全てに意味があるんだ。それが良いか悪いかは別として――ね。今回の出来事も、いつか必要な事だったって思える日が来るかもしれない……」




「そうか……」


二人はそれぞれの岐路に立った。



――、


「バーストォ!!」


廃液の多い、薄汚れた工場地帯にて――、




「ゾゾォ……」


「ゾム……」


「ゾ……」




「敵はあと三体か! 連絡は任せて、存分に戦ってくれ! スマシちゃん!」


「分かった……バースト!」




「ゾゾォ!」


「ゾム!」




「ボッ!!」




爆破は一気に二体のゾムビーを爆発させた。


「二体同時に……か。やるな! スマシちゃん!」


「ああ、任せてくれ……(連発すると体力に響く……早く倒さねば……)行くぞ!! バーストォオオ!!」




「ボッ!!!!」




最後の一体も、派手に爆発させた。付近にはゾムビーの死骸は跡形も無く消え失せ、そこにはちょっとした焦げ目だけが残っていた。


爆破は日を重ねる毎に強くなっていく。バーストの精度も上がり、射程範囲、威力、命中率、どれもが高水準になって行った。爆破は明らかに並の警察官よりかは強い状態にまでなった。そしてあの夏の海以来、いつしか、元々人間だったゾムビーを何度か手に掛ける様になっていた。しかし、爆破には一つ気掛かりな事があった。



(本当にこれで良いのか? 元々人間だったゾムビーは助けられないのか?)



爆破は、中学二年生の身にとっては、重い重い十字架を背負わされていた。



そうこうしているうちに月日は流れ――、


爆破は中学二年生の11月を迎えていた。


「――と、いう訳で明日から3日間、沖縄に修学旅行に行くぞ」


爆破のクラスの教室。


「では一日目は――」


日程を担任が話している。


(沖縄か……好実に何かお土産を買ってやろう)


爆破も修学旅行にはワクワクしていた。



そして一日後――、


「皆ぁ、点呼をとるぞ」


爆破の学校の生徒達は羽田空港に着いていた。点呼が終わると、飛行機に搭乗していく。


(こんなに大きくて重たそうな物が、空を飛ぶなんて、不思議な事だ……)


一人考える、爆破だった。


飛行機は離陸する。段々と上昇していき、遂には雲よりも高く飛んだ。騒ぎ出す生徒達。


「スゲー見ろよ、雲が下にあるぜ!」


「ホントだ雲の上に居る!」


(やれやれ、本当に不思議なものだ……)


この時は、皆が知るよしも無かった。この旅がどんなものになるかを――。

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