第七節 家族
「きゃああああああ!! ゾムビーが出たわぁああ!!」
「うわあああああ!! ゾムビーだ!! ゾムビーが現れたぞ!!」
夜、繁華街にて――、
飲食店のゴミ捨て場といった汚れた場所から、ゾムビーが現れた。
「ゾゾォ……」
周囲はパニック状態に。
そこへ――、
『皆さん、我々が来たからには、もう安心してください!』
メガホンを使って杉田が演説をし出す。
「何?」
「何だ何だ?」
そこには杉田と、少々恥ずかし気な爆破が立っていた。
『ここに見えるのは、あの、ゾムビー狩りで有名な、超能力少女、爆破スマシ!! 超能力、バーストで今日もゾムビーを一撃で粉砕! 皆様の平和と安全を守ってくれる事でしょう! ではでは、ワタクシ杉田はこの事態を警察へ連絡しますが故……』
杉田はフェードアウトしていった。
「何なのだ? このデモンストレーションは必要だったのか……? まあいい、民間人がやられない様にするだけだ!」
爆破はゾムビーを確認する。そして、前回、海でゾムビーを倒した時の事を思い出しながら、左手をかざした。
(呼吸を、落ち着かせて……相手を、よく見て……)
「……バースト」
「ゾゾ?」
「ボッ!!」
ゾムビーは木端微塵になった。深く溜め息をつく爆破。
「ふぅ――(超能力を使うと、体力が奪われるんだよな。一撃で終わって良かった)」
すると――、
わっ! と爆破の下へ民間人が集まって来た。
「ありがとー!!」
「救世主だ!! 救世主が現れたぞ!!」
「良かった!! ホントに良かった!」
拍手喝采。遂には爆破を胴上げしようとするまでの勢いになって来たので、
「待て!! 私はヒーローでも何でもない! ……趣味でゾムビーを倒しているだけだ。か……、勘違いをするな!」
爆破は民間人を突き放す。
しかし――、
「例え、そうだったとしても! 僕達はキミに助けられたんだ!! ありがとう!!」
再び、わっ! と爆破の周りの民間人は沸いた。そして、爆破は不本意ながら胴上げをされてしまう。
「わっしょい! わっしょい!」
「こら! 止めんか!! どこを触っておる!!」
数分後、警察が到着する――。
事態の詳細を、杉田が目撃者として証言をする事となる。現場にはパパラッチの様な野次馬も現れて、騒動になっていた。爆破も、ゾムビーの残骸と同じく、カメラに収められていた。
『超能力少女、また活躍!!』
爆破スマシの活躍が、新聞の一面にでかでかと載っている。いつしか爆破は一躍時の人となっていた。
爆破の教室にて――、
「爆破さん!!」
「!」
「見たよー今日の一面! かっこいいねー、どうやって放ってんの? バースト? だったっけ」
「あ……、アレはだな……」
「爆破スマシ!!」
「!」
他のクラスの男子生徒が会話に割って入った。
「この前の借りを忘れてねーだろうな!?」
「…………」
「…………」
「というか、お前は誰だ?」
「おぃいいい! この前、おめぇにおかしな力を使われて打撲したんだよ!!」
「ん? ああ、あの時のヤツか。確かお前が他の男子生徒をカツアゲしていたから、気に入らなくて手を出してしまったのだ」
「じゃー、そっちが悪いんじゃん、男子ぃー」
「うるせー! 今日が年貢の納め時だ!! ぶっ倒して――」
ふと、爆破は左腕をかざす。
「この前は、校庭のアスファルトに“打った”が、今回は直接当ててやろうか……?」
「! ――」
変わらず、左腕をかざしたままの爆破。男子生徒はダラダラと冷や汗をかき始めた。
「き……、気が変わった。今日はこのまま帰ってやる。だが、次に会った時には容赦しないからな!」
男子生徒はそう言うと帰って行った。
「ただの負け惜しみじゃん、ねー?」
「あ……、ああ」
女子生徒に適当に相槌を打つ爆破だった。
放課後、いつもの通学路にて――、
「ふーん、そんな事があったのかー。まぁ、噂話ってのは『ここだけの話』という言葉をキーワードに、広まっていくものだからなぁ」
「それ、前にも聞いたぞ?」
杉田の発言に、突っ込む爆破。
「んー? そうだったっけか。まあ、スマシちゃんは有名人なんだから、悪い噂が立たない様に言動に気を付けないとな」
「ああ。そう……だな……」
気付けば季節は夏休みになっていた。
海――、
「来たぜ海! 居るぜ可愛い子ちゃん達! 太陽が、眩しいぜ!!」
「何をはしゃいでおるのか……」
杉田と爆破は海水浴に来ていた。砂浜には、露出の多い水着を着た女性や、あからさまなナンパをしに来た男で溢れていた。杉田は元気よく爆破を呼ぶ。
「スマシちゃん! 泳がないのかい? そんなにビーチパラソルから出てこないなんて」
「私は日焼けするのが嫌なんだ。好きにさせろ」
「つれないねぇー、楽しいのに」
「ふん」
爆破はそっぽを向いていた。
突如――、
「きゃああああああ」
「!」
「!?」
女性の悲鳴が聞こえてきた。
「まさか……」
爆破はビーチパラソルから身を乗り出す。人々は何かから逃げる様に走り出していた。逃げる方向と逆の、何かがいる方向を目を見開いて確認する。
そこには――、
「ゾム……ゾム……」
「ゾゾォ……」
ゾムビーが二体、存在していた!
「な!? 二体も……だと……?」
「スマシちゃん!」
杉田は声を掛け、爆破は頷いた。
「押さないで! 焦らないで!」
杉田は逃げ惑う人々の先導を行う。対して、爆破はゾムビーの前に立ち塞がった。
「二体……か……。何体居ようがやる事は変わらん! 粉微塵になれ……バースト!」
「ゾゾ?」
「ボッ!!」
ゾムビー一体が爆破された。
「よし! 次だ」
「ぎゃああああああああ!!」
もう一体のゾムビーを倒す為、目標を確認しようとした爆破、そこにはゾムビーの前で腰を抜かしている中年の男性が居た。ゾムビーは口いっぱいに体液を溜め込む。
「ゾム……」
「何!? 間に合わな……」
「ぎゃああああああああ!!」
「ゾムバァアア!」
「バシュッ」
体液は男性に降りかかる。
「ぎゃああああ!! ……ム。……ゾム」
男性の皮膚はゾムビーと同じ色、つまりは紫色に染まっていく。
(ク……初めて見た。ゾムビーの体液を浴びると、ゾムビー化してしまうのは本当だったのか)
「うわあああああ! お父さぁーん!!」
「メイ! 逃げないとあなたもああなっちゃうわよ!!」
(あの男性の……家族か!? クソッ! どうすれば……)
爆破は思いを巡らせる。そこで、大方の人々を非難させた杉田は爆破に近付き、言う。
「スマシちゃん!! あと二体だ!! 早く!」
「しかし!」
「!」
爆破は反論する。
「さっきまでは人間だった者もおるぞ! 近くに家族も居る!」
杉田はいつになく真剣に言う。
「ああなってしまったらもう元には戻れない!!」
「それでも!!」
「馬鹿!!」
「!」
杉田は声を大にして言う。
「やらなきゃ死ぬぞ!?」
爆破は数秒、考え込む。
そして――、
「やるしかないんだな……?」
「ああ。やるんだ、スマシちゃん」
爆破はゾムビー二体を目視する。




