第六節 ゾムビー狩り
「アメリカのみならず、わが国でも……か」
円卓を囲い、6人程度の男が、暗い部屋の中で会議を行っている。
「怪物、ゾムビー。厄介なのはその繁殖力で、口や体から出された体液に触れれば、人間はおろか猫や犬といった哺乳類を全般とするほぼ全ての生物がゾムビー化してしまう点だ」
「まるでインフルエンザのウイルス……だな」
「ワクチンや特効薬が無い分、それよりも恐ろしい……」
「アメリカはどう対処している?」
「アメリカは現在、超能力を使えるサイキッカーや、在中する陸軍がゾムビーの駆除を率先して行っている」
「超能力を使える者など、日本には居ないぞ」
「陸軍……か。実戦から離れたうちの自衛隊など、ゾムビーにどこまで対処できるか……」
「新しい部隊の設立が急務だな……」
どうやら、日本政府の要人達がゾムビー駆除について話し合っているらしい。話し合いはこの後も、終わることなく続けられていた。
舞台は変わり、あの通学路――。
いつしか爆破は中学二年生、杉田は高校二年生になっていた。
「おう……」
「やっ」
――。
「見たか? ゾムビーのニュース! 昨日も住民2人が犠牲になってってな?」
「ああ、この町も安全とは言えない。自衛隊にでも派遣し、対処してもらわなければ」
不意に、コツンと爆破の額を小突く杉田。
「な!? 何をする!!」
「スマシちゃーん。他人任せは良くないよ? スマシちゃんにはバーストっていう超能力があるんだから、それを使ってゾムビー全員駆逐してやるー! ってくらいの意気込みを見せないと。あ、全匹か?」
「そこはどうでもよいだろう!! 簡単に言ってくれるが、バーストの制御が、未だ完全には出来ておらんのだ。力の強弱はまぁまぁできるが、力をどこにぶつけるか、そのコントロールがまだ出来ん」
「そっか……」
やや下を向き、あごに手をあて、考え事をする様なポーズをとる杉田。
(やれやれ、これで納得したか……?)
「それなら」
「!」
「トレーニングだ! バーストの精度を上げるトレーニングをすればいいんだ!!」
ガクッと崩れ落ちる爆破。
「おいおい……そんな事、どこで……?」
「海だ!」
「!?」
「丁度春先で、人出も少ない! 海水をバーストの攻撃対象にすれば、何かを壊している訳じゃないから、誰かに訴えられる事も無いだろう!!」
「あ、あのなぁ……」
「よし、そうと決まれば早速出発だ!!」
「あ! 待てって!」
小一時間後――、
二人は海に居た。
爆破は頭を抱える。
(本当に来てしまうとは……私としたコトが……)
「名案が思い付いたぞ! これだ!」
杉田は石を持っていた。
「これを!」
「ビュン! チャポン!!」
杉田は石を海に投げ入れた。
「あの石が落ちた周辺の海水をバーストでどっかんと爆発させれば良いんだ!!」
「あのなぁ……いくらその方法が理に適っていたとしても、早々にゾムビーと対峙する事なぞあるのか?」
「!」
「私が以前、たまたまゾムビーを見つけただけであって、これから遭遇する可能性など……」
「! あわあわあわあわ」
「聞いているのか?」
杉田はどんどん顔色が悪くなっていく。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
「あ……、あれ」
「何だ?」
「後ろ……」
爆破は振り返る。と、そこには一体のゾムビーが居た。
(こんな簡単に遭遇すな――!!)
「スマシちゃん、俺はひとまず警察に連絡するから、バーストで応戦していてくれ!」
「応戦って言ってもだな!」
「ゾム……」
ゾムビーは二人の20メートルほど先に居た。
「もしもし、北警察署ですか? 今、海岸でゾムビーを見つけ……ハァ!? 海岸の事は南警察署に言えだと!? あっ、待って」
「ブツン、プー、プー、プー」
電話は途切れた様だった。
「クッソォ! 使えねぇ!! スマシちゃん、そっちは!?」
「集中させてくれ!! ……バースト!」
「ボッ!!」
ゾムビーの5メートル左の砂浜の砂が爆発した。
「クソッ! 当たらない!!」
「くっ! もしもし、南警察署の方ですか? 海岸で、ゾムビーが現れて……へ? 一時間半かかる!? 分かりました。はい、〇×海岸に居ます。で、き、る、だ、け早く来て下さい! じゃ」
「ピッ」
杉田は電話を終えた様だった。
「スマシちゃん!!」
爆破の方を見る杉田。ゾムビーが爆破の3メートルくらい前方に居た。
「クソッ! バーストが当たらない!!」
「ゾゾォ……」
迫り来るゾムビー。
「スマシちゃん!!」
杉田は爆破の手を引いて走り出した。
「! どうした!?」
「距離を置かないと、流石に危ないぜ?」
20メートル程走った先で、杉田は振り返った。
「スマシちゃん……」
杉田は爆破の左手に、手を重ねた。
「! ――」
「呼吸を、落ち着かせて……」
「スゥー、ハー」
「相手を、よく見て……」
「ゾゾ……」
更に近付いて来るゾムビー。バーストの射程圏内に入った!
「今だ!!」
「うぉおおお! バーストォオオ!!」
「ボッ!!!!」
ゾムビーは爆発し、木端微塵となった。
「ビチャ! ビチャ!」
ゾムビーの残骸が浜辺に落ちていく。
「はぁー」
力が抜けた爆破。
「疲れたかい? スマシちゃん。でも、ちゃんとできたじゃん」
「ああ、お前のお陰だ。礼を言う」
「コツ、掴めたかい?」
「ああ。多分、だけどな……」
一時間半後、警察が海岸に到着した。警察は現場検証や、爆破を含めた二人に取り調べを行った。始めは爆破の超能力を信じなかった警察たちだが、爆破が実際に海水をバーストで爆発させて見せたので、否が応でも、警察は爆破のバーストの存在を認めざるを得なかった。
――、
海岸から帰れる頃には、日は沈む時間になっていた。
帰りのバス内にて――、
「倒せちゃったね」
「倒せた――、な」
「これから――、どうする?」
「……知らん」
「……」
「……」
「そうだ!!」
「!」
「いいコト思いついちゃったーと」
「いきなり何だ!? 驚くではないか!」
爆破の主張はそっちのけで、杉田は爆破の両手を掴む。
「これからも、バーストでゾムビー狩りをするんだ! この町の為に、この国の為に!」
「! そう簡単に言ってもだな……」
「よし! そうと決まれば早速次の週末から行動開始だ!」
「!(私に拒否権は無いのか……)」
かくして、杉田と爆破の『ゾムビー狩り』なるものが始まるのだった。




