第四節 クリスマス
2学期の中間テストが終わり――、
「やっ」
「ああ」
いつもの通学路で杉田と爆破は挨拶を交わす。
「結果、どうだった?」
ワクワクしながら、目を輝かせて杉田は爆破に聞いた。
「ああ、平均95点、くらいだった」
「何――――!!」
杉田は驚愕した。
(こやつ……そんなに点数を稼げるとは……確かに俺の教育は相当この娘の為になるモノだった。……しかし、ここまでやるとは……相当筋が良いな)
杉田は髪をかき上げ、言う。
「ま、まぁまぁだな。こちらとしても、教えた甲斐があったと言ったところか」
「なぁ、好実……」
「な、何だ?」
「やっぱり教えてもらうのはこれっきりにしてもらえないか?」
「! どうして?」
「勉強、大体のコツは掴んだのだ。それと……」
「それと?」
「やはり申し訳ないのだ。自分の時間を割いてまで、好実に勉強を教えてもらいたくない」
「はっはっは、そうゆーコトか。流石、優しい優しいスマシちゃんだ。では素直に、その優しさを受け入れよう(今回、成績が下がったなんて、恥ずかしくて言えない……)。」
急に真剣な眼差しになる爆破。それを見て、キョトンとする杉田。先に口を開いたのは爆破だった。
「私は!」
「!!」
「お前に貰ってばかりなんだ……好実。バーストの事、強盗犯の件で、クラスに溶け込めた事、最近は……勉強だって。だから、私はお前に何か返したい。何でもいい。私に何か求めてくれ!」
「そっか」
「……」
「強いて言うなら……」
「何だ? 言ってくれ」
「特に無い……かな?」
ズデッとずっこける爆破。
「……それは、何だ? 私に魅力や能力が無いというコトか?」
「いいや。ただ、居てくれるだけでいい」
「それは……はっ!」
(回想)
「一つ聞いて良いか?」
「?」
「何故、私に……こ……告白などしたのだ? どんな所を気に入った結果なのだ?」
「好きな理由か?」
「ああ」
「一目惚れ……かな?」
「! ! ! !」
顔を赤くする爆破。
「昔好きだった、死んだ友達に、よく似ていたんでね」
「そうか……」
「君が生きているうちに、この気持ちを伝えようと思ってね!」
(回想終了)
「そうか、前に好きだった相手には、先立たれてしまったのだったな」
爆破の頭をくしゃっと撫でながら杉田は言う。
「そーゆーコト!」
「わ……私は! その娘の様にはいかんぞ!」
「?」
「お前よりも、長生きしてやる! それで、お前を苦しる様な事はせん!!」
「ハハ、サンキュー」
杉田は笑った。満面の笑みで。
それはとても嬉しそうで、どこか切なそうでもあった。
季節は流れ、冬。爆破の学校にて――、
カバンに教科書、ノート等をしまっている爆破に、女子Aが話し掛けてきた。
「ねぇねぇ、爆破さんって、彼氏とか居るのー?」
「あっ、それ気になる―」
女子Bも興味津々の様子だ。数秒置いて爆破が口を開く。
「……まあ。一応、な」
「キャ――――!」
「わ――――!」
「!」
女子達の反応にたじろぐ爆破。
「ねぇ、どんな人?」
「歳は?」
「うーん、背は175cmくらいで、年上の男だ」
「今年のクリスマス、何か貰うの?」
「クリスマス? そうか!」
「どうしたの?」
(クリスマスに何かプレゼントをしよう。こういう場合、大体男から上げるモノかも知れないが、女子から送るのもアリではないか?)
「おーい爆破さん、聞いてるー?」
「っは! 済まない。少し考え事をしていた」
「変なのー」
「あはははは!」
「それでさ」
「?」
「キスはもうしたの?」
「――! !!」
顔が真っ赤になる爆破。
「何―その反応?」
「まだなの? もうしたの?」
「よ、良いではないか、そんな事!」
「あー、気になっちゃうなー」
「クスクス」
爆破自室にて――、
「チャリン」
「よもや、1200円しかないとは……」
自分の貯金箱からお金を出し、数える爆破だった。
「高校生の男……財布や、キーケース等が良いのか……? しかし、5000円はしそうだ……」
ふと、脳裏に女子達の言葉がよぎる。
(回想)
「それでさ」
「?」
「キスはもうしたの?」
(回想終了)
「キス……か……」
月日は逃げる様に過ぎて行き、クリスマスイヴ当日――。
いつもの帰り道で杉田と爆破は出会う。
「おいっす!」
「ああ」
「今日はクリスマ……」
「今日はクリスマ……」
二人は声を揃えて言った。
「な……何?」
「そ……そっちこそ、何だ?」
「じゃあ、俺からだ。クリスマスイヴというコトで、プレゼントを用意している。受け取ってくれ!」
「!」
爆破は固まったそして、口を開く。
「前も言った通り、私は……!」
「いいからいいから、ほい!」
杉田は爆破の両手を掴み、無理やりプレゼントを渡した。キレイにラッピングしてある箱だった。
「! ……」
「ささっ」
爆破は促されるがままに包装を破り、箱を開けた。
ブレスレットだった。
金色のブレスレット。爆破は思わず目を輝かせて、声を漏らした。
「あ……綺麗だ……」
「気に入ってもらえた様で、嬉しい限りだぜ! そーいえば、そっちも何か言いたげだったが、何だ?」
「そ、そうだ! こっちもプレゼントを用意しているんだ。目を……閉じてくれ」
「成程、驚かせたいんだな? りょーかい! 目ぇ閉じるぜ」
杉田の身長は174cm、対して爆破は160cm。爆破は背伸びする。そして――、
二人の唇は重なり合った。
「! ……」
流石の杉田も動揺した様子だった。しかし、杉田は舌を入れてみる。すると、
バッと後方へ爆破はステップした。
「馬鹿者! そこまでは許していないぞ!!」
「あっはっはー。つい、調子に乗ってしまうのが、俺の悪い癖でして――。まぁ、プレゼント、ありがとな」
「……」
ふと、爆破の右手を掴む杉田。
「!」
そして、手の甲にキスをした。
「お返し」
「な! な! な! な!」
激しく動揺する爆破。
「へへっ」
「――!」
顔が真っ赤になる。
「これじゃあ、また貰ってばかりじゃないか!!」
爆破は声を大にして言った。
「でもなぁ、こういうのは気持ちだから」
「何が気持ちだ、全く理解できんぞ!!」
未だ脈拍が上がっている爆破。そこで杉田は口を開く。
「まあ、ありがとうな。来年のクリスマスも期待してるぜ!」
「――――」
杉田は去って行った。爆破は一人、通学路に残された。
そして――、
自分の唇を人差し指でなぞった。
「寒いな……帰ろう」




