第十八節 狩人
(ふぅ、一通り見て回ったな)
爆破とスーツ姿の男は、ゾムビー対策組織(仮)の施設を、一通り巡回して回った様子だった。一段落したところで、スーツ姿の男が爆破に話し掛ける。
「どうだね? 爆破さん、ここの施設は」
「まぁ、悪くはない――な。しかし――」
「?」
「施設がそれなりでも、それを扱う人間がしっかりしていなければ、仕方が無いだろう?」
ははは、とスーツ姿の男は笑った後に、言う。
「なんだ、そんな事か」
「!」
「それは心配ない、日本人の選りすぐりの人材が、集まっているのだからな」
「そうは言ってもだな、実際に実力を目にしなければ……」
「ブーブーブー」
「!?」
「!!」
突然、ブザーが鳴り始めた。
『S市郊外にて、ゾムビー発生との情報が入りました。戦闘員は直ちに現場に急行する様に! 繰り返します。S市郊外にて……』
「さて、初陣ですな」
「!」
「ゾムビー対策組織(仮)の実力をお手並み拝見――といった感じに構えておれば良いです。組織を率いて、ゾムビーを退治してください」
「私が、本当に一つの隊を率いるのか?」
少しばかり動揺している爆破に、心配いらないと頷いた男は言う。
「その通りです」
数十分後――、
S市郊外、ゴミ屋敷の様な廃墟に、一同は辿り着いた。
「ここか……」
爆破は車から身を顕わにする。ゾムビー対策組織(仮)の隊員の一人が、爆破に話し掛ける。
「こちら部隊は、20名居ます。指示を! 隊長!!」
「タ……タイチョウ!?」
爆破は動揺した。
「組織を一つの隊と見て、隊長か……悪くないのではないか?」
スーツ姿の男も、現場に辿り着いて、口を開く。
「あ、あのなぁ……!」
「爆破さん、皆は指示を待っていますよ?」
「――、仕方ない……」
爆破は顎に手をやり、暫く考え込む。遂には、口を開いた。
「隊を10名10名で二つに分ける! 前列の10名はショットガンを、後列の10名はマシンガンを装備し、廃墟を探索しよう!」
『ラジャー』
隊員達は声を揃えて答えた。廃墟は50坪ほどの広さで、人が利用しなくなって相当な時間が経過した所為か、所々苔が生えていた。
隊は廃墟の奥へ奥へと進んで行く。前列の隊は、ショットガンを構えながら、先陣を切って進む。小さな部屋があるドアがあった。慎重に隙を見せない様、ドアを開けていく隊員。
「キィ……」
ドアが開き、部屋を確認する隊員。
すると――、
「ゾゾォ!!」
部屋の中からゾムビーが現れた。
「!」
「前列の者! 引け!! 後列、狙撃用意!!」
爆破が指示を飛ばす。
「撃てぇええええ!!」
「タタタタタタタ!!」
銃弾が放たれた。
「ソソォ……」
ゾムビーは蜂の巣になっていく。
「シュー」
銃器から煙が立ち込めていた。ゾムビーは撃破され、残骸だけが残っていた。
「次だ! 行くぞ!!」
『ラジャー』
探索は続く。
広い敷地に出た。横には排水溝が設けられており、湿度も高く、いかにもゾムビーが発生しそうな場所だった。
「気を付けろよ。恐らく――“居る”」
前列の隊員は慎重に足を進める。一歩、また一歩と進んでいた、その瞬間――、
「ゾゾォ!!」
「ゾムゥ!!」
「ゾムバァアア!!」
三体のゾムビーが現れた。爆破は指示を飛ばす。
「距離を詰められている! 引……(マズい、間に合わない……それなら!)」
目を鋭くさせる爆破。
「前列の者!! ショットガンで頭部を狙え!!」
「ラ……ラジャー!」
指示に答え、ショットガンで発砲する隊員達。
「ドッ!!」
「ゾ!!」
「ドッ!!」
「!!」
「ドッ!!」
二体、ショットガンの餌食となった。
しかし――、
「ゾゾォ!!」
三体目、銃弾が命中しなかったゾムビーが、前列の隊員に襲い掛かる。
「クッ」
「ゾム……」
ゾムビーは口いっぱいに体液を溜め込む。
「ゾォオオ!!」
体液を吐き出す、その瞬間!!
「バースト」
「ボッガァアア!!」
ゾムビーはバーストの餌食になる。
「シュー」
爆発後に煙が立ち込めたが、それは直ぐに消えた。ゾムビーは跡形も無く爆発していた。
「な……? これは……」
隊員は動揺していた。
「危ないところだったな」
「!」
「一体程度ならいつでも倒せる。さぁ、探索の続きだ」
手を差し伸べる爆破。
「ありがとう……ございます……」
爆破と隊員は熱い握手を交わした。
その後、探索が続けられたが、ゾムビーは、計4体現れただけで、それ以降はゾムビーの姿は発見されなかった。
廃墟前――、爆破を含む隊員達は帰りの準備をしていた。
「犠牲者0、初陣にしては、完璧な出来ではないかな?」
「!」
スーツ姿の男は爆破に話し掛けた。
「まぁ――、な。隊員達がよく訓練されている事もあってだ。私の心配は杞憂に終わったな」
「はは、この部隊を気に入ってもらえた様で何よりだ。これから施設に帰って、上の者と会議を行ってもらうぞ」
「……分かった」
爆破達は施設に戻った。その施設の、とある円卓を囲って、数名の男達が腕を組んで並んでいる。
「君が……爆破スマシ君だね?」
「まずは、今回の戦果について、報告してもらおうか?」
「はい。今回の戦いはS市郊外の廃墟で行われました。その廃墟の小部屋に一体、開けた敷地に三体のゾムビーが発生、ショットガンやマシンガンを用いて、駆除しました。今回、私は一体のゾムビーに対し、超能力、バーストで交戦、葬る事に成功しました」
「ほう……それで?」
関心を持って聞いている男達、爆破に質問をする。
「今回の犠牲者はどのくらい出たのかい?」
「今回の犠牲者は、第一発見者をはじめとする一般人や、ゾムビー対策組織(仮)の中から一人も出ておりません。犠牲者は0人です」
「素晴らしい」
「良くやってくれた」
「時に――」
「?」
男たちのうちの一人が話を切り出す。
「次の予算についてだが、8割を武器の補充に使って、構わないか?」
「お言葉ですが」
「!」
「!?」
「隊員達の、衣食住に予算を割いてもらえないでしょうか? 今の状態では、食事も自費で負担しており、寝室も4畳半の部屋、劣悪な環境と言っても過言では無いでしょう」
「何を言うか! この小娘が!!」
「我々がこの施設に出資した恩を忘れたのか!?」
「! ……我々は常に死と隣り合わせの環境で暮らしています。せめて私生活だけでも、隊員達を心地良い環境で暮らさせてやりたいのです」
「まるでこちら側は安全な場所から指示を出しているだけみたいじゃないか。言い掛かりは止したまえ」
「! ……」
「まぁ仕方ない、隊員達の衣食住か……考えておこう」
「ありがとうございます。これで任務にも意欲を持って取り組めるでしょう。最後に」
「?」
「私が口先だけでは無い事を証明していきます」
爆破は会議室を後にした。
(上がああでは――、先が思いやられる――な)
爆破はこれから目覚ましい活躍を見せ、ゾムビー駆除を進めていく事となる。
ある日、スーツ姿の男は爆破に話し掛ける。
「さて、爆破さん。ここの部隊も、ゾムビー対策組織(仮)では箔がつかないと思わないかい? 何か名前を付けてみてはどうかな?」
「名前……か……」
(回想)
「そうだ!!」
「!」
「いいコト思いついちゃったーと」
「いきなり何だ!? 驚くではないか!」
爆破の主張はそっちのけで、杉田は爆破の両手を掴む。
「これからも、バーストでゾムビー狩りをするんだ! この町の為に、この国の為に!」
(回想終了)
(この戦いも、ゾムビー狩りから始まったんだっけか? 懐かしいな)
「どうするのかね、爆破隊長?」
「よし! この部隊を、今日から!」
爆破は声高らかに言う。
「狩人と名付ける!!」
爆破スマシという女 完




