第十五節 身体スグルとの出会い
「そうか、お前も17歳か!」
「貴女も……でしょうか……?」
気さくに話し掛ける爆破に、身体は問う。
「いいや、二十歳を過ぎている。私は17という数字に、縁がある様でな。ところでそっちは、進路の方は決まっているのか?」
「いえ、未だ決めては……貴方は……?」
「私は現在、防衛大に所属している。卒業したら、ゾムビー撲滅協会が設立する、ゾムビー対策組織に所属し、ゾムビー達を駆除していくつもりだ」
「先程、襲ってきた生き物の事でしょうか……?」
「そうだ。アイツらは人類の敵、倒すべき対象だ。私は今、ゾムビーを全滅させることを目標に生きている」
「全滅……ですか……?」
身体は目を丸くして問う。
「無理だと思うか?」
「いいえ、分かりかねます」
「そうか。この前、違う奴に同じ事を話したんだ。するとアイツはこう返してきた。『理想論だ』とな」
「! ……」
「しかし私は、いつの日か人間がゾムビー達に勝利する日が来ると信じて疑わない。その為に私は一匹でも多くのゾムビーに打ち勝っていくつもりだ!」
「! ……俺も……」
そっと口を開く身体。
「?」
「俺も貴女に協力させて頂きたい……!」
「! そうか! それは心強い。味方は多いに越したことは無いからな。進路選択、防衛大に進学してくれないか? 学歴と資格があった方が、ゾムビー対策組織に入りやすいだろうしな」
「ゾムビー対策組織とは……?」
「ああ、日本政府がこれから造る組織だ。主にゾムビー駆除を目的として活動していくだろう」
「成程。では防衛大に進学後、その組織に配属できるよう、尽力していきます」
「ハハッ! お前は話が早いな。よろしく頼む」
爆破と身体は握手を交わした。
――、
「バースト!!」
「ゾ……?」
「ボッ!!」
爆破は出動命令が出る度に、現場に向かいゾムビー達を駆除していった。その出動範囲は、始めはK県のみだったが、日を追うごとに拡散していき、一年後には関東全域にまで達していた。その頃、身体は――、
(受験番号、××××。あった! やったぞ!!)
防衛大の入学試験に合格していた。
それから数週間が経ち――、
(今日は共通訓練の日だ……)
(今日は実習の身支度をせねば……な)
ある日身体と爆破は防衛大敷地内ですれ違う。
「あ!」
「ん?」
二人は数秒後、互いの存在を確認した。
「爆破さん! お久しぶりです!!」
「スグルか、久しぶりだな。受験、受かっていたんだな」
「はい! あのっ!!」
「まぁそんなに気張るな。どうした?」
「連絡先を!」
「ああ、良いぞ」
「ピッピッ」
二人は携帯電話の連絡先を交換した。
「じゃあ、な」
「はい! 失礼します!!」
爆破、身体の二人は別れを告げ、互いの演習の準備に取り掛かった。身体は実戦演習で好成績を残していた。また、本人の強い申入れもあって、防衛大入学半年後にはゾムビー駆除作戦のサポート役として現場に立つようになっていた。
ある作戦の日の事――、
ゾムビーを倒し終えた爆破は、一息ついていた。
(ふぅ……これで今回の事件の、全てのゾムビーを倒せたな……)
「爆破さん!」
「!」
声の方に振り向く爆破。そこには身体の姿が。
「何だ……スグルか……」
「今日もお見事でした! 今はサポートしかできませんが、いずれ前線に立って戦えるよう、尽力していく所望であります!」
「そうか……それにしても、お前は固いな。そう仰々しくせんでもいい」
「滅相もございません!」
「そう身構えるなと言っておろう。まぁいい、次の作戦でも、サポートを頼むぞ」
「かしこまりました!!」
2022年、春――。
爆破は防衛大を首席で卒業した。卒業後は空曹長に任命され、通例通り、幹部候補生学校に所属した。
(思えば、勉強なんて高校受験の年の夏からで良かったな。何を焦って中学一年から必死にやっていたのか……? もっと遊べばよかった)
そっと思う爆破だった。
――。
今回もゾムビー駆除作戦を行い、帰路に立つ頃、爆破はあの日の事を克明に思い出す。
(回想)
「好実ぃ……」
「ゾ……」
杉田だったモノは口を開いた。
「ゾ……して……こ……」
「!」
「……殺して……くれ……」
「! 好実、意識が……!」
「……殺してくれ……もう、持たない……ゾム……ゾゾォ!!」
杉田だったモノは爆破を襲ってきた。
(回想終了)
(ふぅー……)
(回想)
「バースト……」
「ボッ!!」
杉田の命は、完全に断たれた。
(回想終了)
(なぁ好実。私は今も元気でやっているぞ。そっちはどうだ? あの世は平和か? こっちは未だゾムビーの脅威に脅かされている……。私が!)
ギロリと眼差しを鋭くさせる爆破。
(終わらせねば……この戦いを――)
身体はその様子をそっと見つめて、思う。
(実に痛快な、歯に衣着せぬ物言いの貴女が、時に鬼の様な形相で遠くを見つめている。過去に何かあったのですね……。俺からは敢えて聞きません……貴女が口を開いてくれる、その日まで待ちます)
――。
「何か趣味を持たねばな……」
ある日、爆破は考える。
「透き通った海や、山の緑を見たい」
思い立ったが吉日、と言わんばかりに、爆破は教習所に通い始めた。そして爆破は十数日で、普通自動二輪免許を取得、その後、バイクも購入した。即日、爆破はバイクツーリングを始めた。
あてもなく、只々、海岸沿いを走ってみた。夕日が傾く頃、爆破は走るのを止め、水平線へと沈む夕日を眺めた。
「良いものだな、日頃の鬱憤を晴らす事ができる……」
ふー、と溜め息をつく爆破。
(好実、お前が生きていたら、私は同じ景色を見れただろうか……? 一緒に生きて……同じ空気を吸い、同じ景色を見て……互いの目を見て話し……)
ふと、目には涙が浮かんでいた。
「いかんな。歳を取った所為か、涙もろくなってしまっている」
涙を拭う爆破。
「そろそろ帰らねば――、な」
爆破は夜道を風を切り、走る。
(本当に良いものだな。風が心地よい……。バイクに出会えて、良かった。そうだ、コイツに名前を付けよう)
爆破は数秒、考える。
(『バースター』よし、これに決まりだ)
――。
「バースト!!」
「ゾゾ!!」
「ボッ!!」
今回も前線に立ち、ゾムビー駆除を行う爆破。以前よりははつらつとした様子で戦っていた。それを遠目で見守る身体は思う。
(何か良い事でもあったのでしょうか……? 爆破さん、生き生きとしておられるように見える……以前の様な重たい気持ちを払拭されたのですね)
身体は、心底安心した様子で爆破を見つめていた。丁度その二年後の事だった。
ゾムビー撲滅協会の会議にて――、
「もはや議論を繰り広げる段階では無いな」
「ああ、もう動かなければ」
「ゾムビー対策組織、設立に向け、動こうではないか!」




