第一節 バースト
時は西暦2000年。K県のとある病院で、女の子の赤ちゃんが生まれた。
「ああぁぁぁ! あぁああぁ!!」
体重は2000グラムピッタリの低出生体重児。両親は未熟児ではないか少しだけ不安に思い、その赤ちゃんの扱いを丁寧に行った。
生後2カ月頃、赤ちゃんの首が座りかけていた時期に、父親はある異変に気付く。
「窓開けて――、っと。大丈夫、換気はしっかりしますよっと」
父親は赤ちゃんが居るにも関わらず、タバコを吸う様だ。カチッカチッと、ライターで火をつけようとする父親。
「アレ? 調子が悪いな。このっこのっ!」
苛立ち始める父親。
その時――、
「ボッ!」
「!」
父親の持っていた一本のタバコが、急に小さく爆発した。
「? !?」
父親は動揺していた。
「あー、あっあっ!」
赤ちゃんは喜んでいる。
「あ!」
父親の持っていたタバコに火が付いていた。
赤ちゃんの名は、爆破スマシ。彼女は、生まれながらにして空間を爆発させるという超能力が使えた。
彼女が3歳になった頃――。
「やーい、化け物女!!」
「!」
超能力を使える特異な彼女は、周囲から偏見の目で見られ、孤立していった。
保育園から帰る頃、母親が声を掛ける。
「スマシ、今日は誰かと遊んだの?」
ふるふると首を横に振る爆破。
「もう、どうしたらいいのかしらねぇ。あ、保育園では、超能力を使ったらダメだからね」
「無理」
「!?」
虚を突かれる母親。
「だって、力を制御できないもん」
「あらぁ、困ったわねぇ」
彼女、爆破スマシは周囲から浮いた存在となり、偏見の目で見られ、いつも独りで生きていく事になる。そう、あの出会いが有るまでは――。
小学校5年生になった爆破はいつも通り、一人で帰路を辿っていた。
そこへ突然――、
「やあ。こんなところを一人で歩いていたら、危ないオジさんに連れてかれるぜ?」
一人の少年が話し掛けてきた。
「誰だ? キサマは」
「俺か? 俺は杉田好実。中学2年の青春真っただ中の少年だ!」
「それが何の用だ!? 私はまだ小学生の身だぞ!」
「用? そうだなぁ、用事と言っては特に無いのだが、昔の知り合いに、顔がそっくりでね、ちょいと一声かけさせてもらったんだよ」
「そんな事で呼び止めたのか!? 鬱陶しい! 私は帰るぞ!!」
「世間は狭くて世界は広い」
「!?」
いそいそと自宅へ帰ろうとした爆破は足を止める。
「何が言いたい?」
「世間は人で、世界はモノだ」
「!? それがどうした!!?」
「この国でもまだ行った事の無い場所がある。しかしそんな場所でも、似たような人間に出くわすのかも知れない。性格も、容姿も似た、人間に……。つまりはそーいうこって! また縁があればここで会おう! さらばだ!!」
杉田は帰って行った。
「何だったのだ……?」
爆破は困惑していた。
1週間後――、
またいつもの様に一人、家路へ辿る爆破。そこへ、
「やあ! そこの小学生、また会ったな」
「! またお前か……」
ジトっと杉田を見つめる爆破。
「今日は込み入って話が合ってな」
「何だ?」
ふーと一呼吸入れて杉田は口を開く。
「付き合ってくれ」
「……」
「……」
「はぁあああ!?」
「不服か?」
「不服に決まっているだろう! 顔を合わせてから、2回! 2回しか会っていないのだぞ! 私達は!! メールや電話、デ……デートもしてないのに……何故だ……?」
「まあまあ、人を好きになるのに、ちゃんとした理由なんて必要かい?」
「! ……」
「答えはまた会った時に聞こう。じゃ」
片手を軽く上げて杉田は帰って行った。
「何なのだ? ……本当に」
翌日――、
「やあ、また会ったな」
「! ……」
「昨日の話、答えは……」
「NOだ」
「ハハ、やっぱし……でも、今日はお願いがあって来たんだ」
「?」
「昨日の話は無かったことにして欲しい」
「はぁ……」
「それで、改めて……」
「?」
「好きだ、付き合ってくれ!」
「! ! ! !?」
「この返事は……」
「阿呆か!? キサマは!!」
「あれ?」
「返事はNOだ、何を言い出すのかと思えば……」
「そうか、まあまた縁があったら頼むよ。じゃ」
杉田は去って行った。
(何を頼むというのか……)
その翌日――、
「やあ、また会ったな」
更に翌日――、
「やあ、また会ったな」
その更に翌日――、
「やあ、また会ったな」
「しつこーい!!!!」
「? どうした? そんなに怒って……」
「そりゃあ怒る気にもなるだろう!? こんなにしつこかったら! もう私の前に顔を現すな。いいな?」
「んー、仕方ないこれで最後とするよ。じゃあ」
以前の様に、片手を軽く上げて杉田は帰って行った。
「全く、けしからん奴だ」
翌日――、
いつもの様に通学路を帰っている爆破。そこに杉田の姿は無く、
(本当に居なくなったか……結構だ)
爆破は一人、自宅に帰るのだった。
その翌日――、
その日も杉田とは出くわさなかった。
(アイツの事だ、いつ調子に乗って現れるとも限らない)
爆破は身構えながら通学路を歩くのだった。杉田が姿を現さなくなってから、5日経とうとしていた。
(今日も――、居ないな)
爆破は少し、物思いにふける。
(思えば、私に両親以外の話し相手が居ただろうか。私のこの力を恐れて、周囲の人間は遠ざかって行った……)
「ボッ」
右手をかざし、空間を爆発される爆破。
「どうしたものか……」
と、そこへ――、
「やあ、また会ったな」
「!」
杉田が現れた。
「お前……」
「ちょっと風邪をひいていたんでな、暫く会えなかった。これで最後と言ったが、本当は会うつもり満々だったんだ」
「! 全く……」
「へへ」
人差し指で鼻を擦る杉田。と、ここで爆破が口を開く。
「一つ聞いて良いか?」
「?」
「何故、私に……こ……告白などしたのだ? どんな所を気に入った結果なのだ?」
「好きな理由か?」
「ああ」
「一目惚れ……かな?」
「! ! ! !」
顔を赤くする爆破。
「昔好きだった、死んだ友達に、よく似ていたんでね」
「そうか……」
「君が生きているうちに、この気持ちを伝えようと思ってね!」
少し間を置いて、爆破は口を開く。
「わ……私で良ければ、付き合ってやらんでもないぞ?」
「本当か!?」
パアッと明るくなる杉田。
「正し」
「!」
右手で杉田を制止する爆破。
「これを見て、怖がらなかったらな」
すぐ近くに、空き地があった。そこには土管が。その方向へ左手を差し出し、力を籠める。
すると――、
「ボッ!!」
土管が爆発した。
「パラパラ……」
そこには粉微塵となった土管の残骸だけが残った。
「……どうだ?」
「…………」
ふるふると震える杉田。
(! ダメ、か。この者も皆と同じで、私を恐れてしまうのか……?)
と、杉田が口を開く。
「す……すっげえよ! カッコいい!! どうやってやったの!? マジック? ……じゃあ、ないか……何て名前の? もしかして、超能力?」
「フッ、ハハハハハハハ」
爆破は笑みがこぼれた。
「そんな反応をするのは、お前が初めてだ。これは超能力だ、名前など無い」
目をキラキラと輝かせた杉田は言う。
「じゃっ、じゃあさ。こういうのはどう? モノを爆発させるから、『バースト』。バーストってどうかな!?」
「……悪くない」
その日から、爆破の超能力の名はこう呼ばれた。力の名は、
『バースト』




