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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第58話 それでも、選ぶ

 朝の支度は、いつも通りだった。


 窓を開け、

 空気を入れ替え、

 簡単に髪を整える。


 特別な日ではない。


 ――だが、

 私の中では、

 一つの決断が静かに固まっていた。


 執務棟へ向かう途中、

 アルトと合流する。


「……今日は?」


「西の集落です」


「俺は、北を回る」


 以前と同じ会話。


 だが、

 私の足取りは、

 ほんの少しだけ違った。


 昼過ぎ、

 西の集落での視察を終え、

 城へ戻る。


 そのまま、

 自室には向かわなかった。


 足が向いたのは、

 執務棟の奥にある小さな保管室。


 鍵は、

 アルトが持っている。


 扉の前で、

 一瞬だけ、立ち止まる。


 形にしないと決めた、

 あの日のことを思い出す。


 それは、

 間違いではなかった。


 だが――

 今は、違う。


「……来たか」


 アルトは、

 すでにそこにいた。


 手には、

 あの小さな箱。


 言葉は、

 ほとんど要らなかった。


「……今でも」


 アルトが、確認するように言う。


「形は、必要ないと思うか」


 私は、首を振る。


「必要だから、

 選ぶのではありません」


 箱を受け取り、

 ゆっくりと開ける。


「選び続けた結果、

 形があっても揺らがないと、

 分かっただけです」


 指輪は、

 以前と同じ。


 変わらない。


 変わったのは、

 私の方だ。


 私は、

 それを左手の指に通した。


 躊躇は、なかった。


「……急がせていないな」


 アルトの声は、

 少しだけ安堵を含んでいる。


「ええ」


 私は、微笑んだ。


「だから、

 選べました」


 誓いの言葉はない。

 周囲も、いない。


 だが、

 この選択は、

 どんな宣言よりも重い。


 私は、

 今日も選んだ。


 彼と、

 ここで生きることを。


 夕方。


 二人で城壁を歩く。


 指輪は、

 視界の端で、静かに光る。


「……変わったか」


 アルトが尋ねる。


「いいえ」


 私は答える。


「変わっていません」


「ただ、

 迷わなくなっただけです」


 夜。


 部屋に戻り、

 指輪を外さないまま、

 灯りを落とす。


 形は、

 私を縛らない。


 選択が、

 私を支えている。


 それでも、

 私は選ぶ。


 今日も。

 明日も。


 その積み重ねが、

 人生になる。


 そして、

 その隣に、

 彼がいる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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