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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第50話 話さない未来

 朝の食卓は、静かだった。


 特別な予定はない。

 急ぎの報告もない。


 それでも、

 一日の始まりとしては十分だった。


「……今日は、どこへ?」


 アルトが、何気なく尋ねる。


「南の工房を少し」


「俺は、北の見回りだ」


「夕方には戻ります」


「分かった」


 それだけの会話。


 未来の話は、出ない。


 南の工房では、

 新しい仕組みが試されていた。


「……判断は、こちらで行いました」


 若い職人が言う。


 以前なら、

 許可を求める目だった。


 今は、

 報告の目だ。


「結果は?」


「上々です」


 私は、微笑んだ。


「続けてください」


 それで終わり。


 何かを“約束”する必要はない。


 続くものは、

 自然に続く。


 昼過ぎ、

 城へ戻る途中で雨が降り出した。


 予報は、見ていなかった。


「……降られましたね」


 独り言。


 だが、不思議と慌てない。


 濡れながら歩くのも、

 悪くない。


 城門近くで、

 アルトと鉢合わせた。


「……早かったな」


「ええ」


 彼は、外套を差し出す。


「使え」


「ありがとうございます」


 受け取るが、

 完全に覆わない。


 二人で、

 同じ雨に濡れる。


 それでいい。


 回廊を歩きながら、

 アルトがぽつりと言った。


「……先のことは、考えないのか」


 問いというより、

 確認だった。


「考えています」


 私は答える。


「ただ、

 言葉にしていないだけです」


 彼は、少しだけ笑った。


「同じだな」


 夕方。


 雨は上がり、

 空に薄い光が戻る。


 中庭の土が、

 しっとりと黒くなっている。


 芽吹いた草が、

 少しだけ伸びていた。


 約束しなくても、

 時間は進む。


 夜。


 二人で簡単な夕食を取る。


「……明日は?」


「いつも通りです」


 それ以上、話は広がらない。


 だが、

 不安もない。


 未来を語らないのは、

 逃げではない。


 すでに、

 選んでいるからだ。


 どこで生きるか。

 誰と並ぶか。


 それは、

 毎日の積み重ねで示されている。


 だから、

 話さない。


 話さなくても、

 未来はここにある。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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