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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第48話 芽吹くもの

 春の兆しは、音もなく訪れた。


 城の裏手にある小さな庭で、

 まだ寒さの残る土を割って、

 淡い緑が顔を出している。


「……もう、こんな時期ですか」


 思わず、足を止めた。


 特別な花ではない。

 名も知らぬ草だ。


 だが、

 確かに芽吹いている。


「見つけましたか」


 背後から、アルトの声。


「ええ」


 私は頷く。


「冬が長かったので、

 少し意外でした」


「それでも、

 出るものは出る」


 彼は、しゃがみ込み、

 土の様子を確かめる。


 無理に引き抜かない。

 覆いもしない。


 ただ、

 見守る。


 それが、今の私たちに似ていた。


 執務棟では、

 新しい提案が上がっていた。


「……試験的に、

 若手に判断権を」


 文官の声は、少し緊張している。


「失敗したら?」


 私は、問い返す。


「……修正します」


 即答ではなかった。

 だが、逃げでもない。


「やってみましょう」


 アルトが言った。


 私は、頷く。


「記録は、丁寧に」


 それだけで、話は進む。


 新しい芽は、

 あちこちにある。


 昼。


 城下の食堂で、

 偶然、若い兵士たちの会話が耳に入った。


「……前より、話しやすくなったな」


「誰に?」


「上の人たちに」


 私は、何も言わず、

 静かに通り過ぎた。


 評価されている感覚は、

 もう必要ない。


 ただ、

 続いていることが分かればいい。


 午後。


 村から、

 子どもたちの声が届く。


 新しく始まった、

 小さな学びの場。


 答えを教えない授業。


「……どう思う?」


 アルトが尋ねる。


「時間はかかります」


 私は、正直に言う。


「でも、

 根は深くなります」


 それでいい。


 急がない。


 夕暮れ。


 二人で並んで、

 城壁の上に立つ。


 遠く、

 畑に灯る明かり。


「……未来の話を、

 しなくなったな」


 アルトが、ふと呟く。


「はい」


 私は、微笑んだ。


「未来は、

 もう始まっていますから」


 約束はいらない。

 宣言もいらない。


 芽は、

 すでに出ている。


 夜。


 自室で、

 今日一日の記録を閉じる。


 大きな出来事はない。

 だが、

 確かな変化がある。


 婚約破棄から始まった物語は、

 いつの間にか、

 未来を育てる話に変わっていた。


 芽吹くものは、

 静かだ。


 だが、

 強い。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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