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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第42話 隣に立つということ(アルト視点)

 彼女が戻ってきてから、

 城は確かに落ち着いている。


 だが、

 それは「彼女がいるから」ではない。


 彼女がいなくても回るようになったからだ。


 アルトは、その事実を噛みしめるように中庭を歩いていた。


 数年前まで、

 この領は彼一人の判断に寄りかかっていた。


 命令を出し、

 責任を引き受け、

 結果を背負う。


 それが、領主の役割だと疑わなかった。


 だが今は違う。


 人が考え、

 人が決め、

 人が修正する。


 自分は、

 全てを決める者ではなく、支える者になっている。


「……不思議なものだな」


 独り言が、風に流れる。


 彼女は、前に出ない。


 だが、

 消えもしない。


 命令しないが、

 逃げない。


 必要とされる場所に居座らず、

 不要になった場所からは静かに離れる。


 その在り方が、

 アルトには眩しかった。


 正直に言えば、

 王都に彼女を連れていかれる可能性を考えなかったわけではない。


 地位も、名誉も、

 彼女に相応しいものだった。


 それでも、

 引き止めなかった。


 ――いや、引き止められなかった。


「選ぶのは、君だ」


 あの夜、

 そう言った自分の言葉を思い出す。


 それは、建前ではない。


 本音だった。


 領主として考えれば、

 彼女は“切り札”だ。


 だが、

 切り札として扱った瞬間、

 彼女は壊れる。


 それが、

 はっきり分かっていた。


「……守る、とは違うな」


 アルトは立ち止まる。


 守るのではない。

 囲うのでもない。


 並ぶ。


 同じ速度で、

 同じ方向を見て。


 夕暮れ、

 彼女が一人で資料を読んでいるのを見かけた。


 声はかけない。


 必要なら、

 彼女は自分で来る。


 それを、

 待てるようになった自分に、

 少し驚く。


 かつては、

 全てを把握しなければ不安だった。


 今は、

 把握しなくても信じられる。


 夜、

 アルトは執務室で一人、考えていた。


 もし――

 彼女がここにいなかったら。


 領は回る。

 改革も続く。


 だが、

 自分はどうだ。


「……残るな」


 答えは、はっきりしていた。


 彼女がいるから残るのではない。

 彼女と並ぶと決めたから、ここにいる。


 それが、

 領主としてではなく、

 一人の男としての選択だった。


 翌朝。


 彼女が中庭を歩いているのを見つけ、

 アルトは自然に隣へ並んだ。


「……落ち着いたか」


「ええ」


 彼女は微笑む。


 その表情に、

 無理はない。


「王都に戻りたいとは?」


「思いません」


 即答だった。


 アルトは、胸の奥が少しだけ熱くなるのを感じた。


 言葉は、要らなかった。


 告白も、誓いも、

 まだ必要ない。


 だが、

 一つだけはっきりしている。


 彼はもう、

 彼女を“部下”としても

 “客人”としても

 見ていない。


 隣に立つ人だ。


 アルトは、歩きながら思う。


 戦いは終わった。

 選択は、済んだ。


 あとは――

 どう生きるか。


 それを、

 彼女と並んで考えていく。


 それだけで、

 十分だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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