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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは
第1部

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第41話 帰る場所は、変わっていた

 辺境伯領の風は、王都よりもずっと荒い。


 だが、その分、正直だ。


 馬車を降りた瞬間、

 私は深く息を吸い込んだ。


「……帰ってきましたね」


 自分の言葉が、少しだけ柔らかく響く。


 城門の前には、出迎えの列があった。

 だが、かつてのような大仰な歓迎ではない。


「お疲れさまでした」


「お帰りなさい」


 それだけ。


 拍手も、称賛もない。


 それが、ひどく心地よかった。


「……随分、落ち着いていますね」


 私の隣で、アルトが小さく言った。


「ええ」


 私は頷く。


「私がいなくても、

 回っていた証拠です」


 それは、少しだけ寂しくて、

 同時に誇らしい。


 執務棟に入ると、

 机の上には整理された書類が積まれていた。


「これは……」


「不在中に出た判断記録です」


 文官が説明する。


「貴女の承認は、

 一切取っていません」


 私は、思わず笑ってしまった。


「正解です」


 その言葉に、文官が少し驚いた顔をする。


「……不安は、ありませんでしたか」


「ありました」


 正直に答える。


「でも、

 不安があるからこそ、

 仕組みが必要なんです」


 報告を読み進める。


 成功もある。

 失敗もある。


 だが、どれも

 修正されている。


「……私がやること、

 減りましたね」


「はい」


 文官は、はっきり答えた。


「代わりに、

 相談は増えました」


 それは、

 命令を仰ぐのではなく、

 考えを共有するという意味だ。


 私は、胸の奥が温かくなるのを感じた。


 夕方、

 私は一人で領内を歩いた。


 市場の声。

 工房の音。


 以前と同じ景色。

 だが、どこか違う。


 人々が、

 自分で判断している。


 それが、空気に出ている。


「……大丈夫そうですね」


 誰にともなく呟く。


 私は、

 ここに“必要不可欠”ではない。


 それが、

 何よりの成功だ。


 日が落ちる頃、

 城の中庭でアルトと再び顔を合わせた。


「どうだ」


「思っていた以上に」


 私は、素直に答える。


「皆、前を向いています」


 アルトは、

 少しだけ安堵したように息を吐いた。


「……置いていかれた気分は?」


「少し」


 正直に言う。


「でも、

 嫌ではありません」


 自分がいなくても進む場所。

 それは、

 逃げ場ではなく、

 選んだ未来だ。


 夜。


 自室の窓から、

 辺境の星空を見上げる。


 王都より、ずっと多い星。


「……ここで、生きていく」


 それは、決意ではない。

 確認だ。


 私は、もう

 誰かに選ばれる必要がない。


 それでも、

 ここにいる。


 遠くで、

 人々の笑い声が聞こえる。


 改革は、

 完成していない。


 けれど、

 続いている。


 私が前に立たなくても。


 それでいい。


 帰る場所は、変わっていた。


 そして――

 私自身も、変わっていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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