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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第35話 責任の所在

 不具合の報告は、朝一番で届いた。


「……想定より、早いですね」


 私は資料に目を通しながら、そう呟いた。


 西区画の物流判断。

 現場判断による迂回措置が、結果的に遅延を生んだ。


 被害は軽微。

 だが、失敗は失敗だ。


「王都にも、すでに伝わっています」


 文官の声は、硬い。


「責任者の名は?」


「……現場担当者です」


 私は、顔を上げた。


「個人名で?」


「はい」


 嫌な予感は、当たっていた。


 すぐに、王都から連絡が入った。


 緊急協議。

 原因究明。

 責任の明確化。


 いつもの流れだ。


 私は、アルトと顔を見合わせる。


「……来ましたね」


「ああ」


 彼の声も、低い。


 これは、試金石だ。


 改革が、

 誰かを切り捨てるための道具になるかどうか。


 協議の場は、重かった。


「今回の遅延について、

 責任者の処分を――」


 年配の貴族が、当然のように切り出す。


「待ってください」


 私は、はっきりと遮った。


 場が、静まる。


「責任者は、

 判断を求められた現場です」


 私は、資料を掲げる。


「判断基準は、

 制度上、妥当でした」


「だが、結果は失敗だ」


「はい」


 私は、頷いた。


「だからこそ、

 個人を責めてはいけません」


 ざわめきが起きる。


「では、誰が責任を負う」


 鋭い問いが飛ぶ。


 私は、迷わず答えた。


「構造です」


 短い言葉。


「判断基準の共有が、

 まだ不十分だった」


「修正案を、すでに用意しています」


 書類を机に置く。


 それは、

 誰かを守るための言い訳ではない。


 次に失敗しないための、

 具体策だった。


 元婚約者が、口を開いた。


「……それでは、

 誰も責任を取らないではないか」


 声には、苛立ちが滲んでいる。


 私は、彼を見た。


「違います」


 静かに、しかし明確に。


「全員が、責任を取ります」


 個人ではなく、

 組織として。


「それが、

 この改革の前提です」


 彼は、何も言えなくなった。


 かつて、

 責任を個人に押し付けてきた側だから。


 沈黙の後、王太子が口を開く。


「……処分は、見送る」


 短い決定。


「改善策を、即時適用せよ」


 私は、深く頷いた。


 これでいい。


 完璧ではない。

 だが、壊れない。


 会議後、

 私は一人で廊下を歩いた。


 少しだけ、

 足が重い。


「……疲れたな」


 小さく、独り言。


 アルトが、隣に並ぶ。


「当然だ」


「でも」


 私は、微笑んだ。


「これで、

 この仕組みは“使える”と証明されました」


 失敗しても、

 誰も切られない。


 それは、

 人が判断するための最低条件だ。


 その夜、

 現場担当者から短い礼状が届いた。


次は、必ず修正します。


 それだけ。


 私は、返事を書かなかった。


 言葉は、

 制度が代わりに返してくれる。


 窓の外、

 王都の灯りが揺れている。


 改革は、

 痛みを伴う。


 だが、

 血を流させてはいけない。


 私は、

 裁かないと決めた。


 それが、

 この仕組みの“心臓”だから。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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