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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは


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第27話 譲歩という名の枠

 王都からの返書は、予想よりも早かった。


 拒否されたのだから、

 反発か、沈黙が来ると思っていた。


 だが――

 届いたのは、譲歩だった。


「……なるほど」


 私は、文面を読み終え、小さく息を吐いた。


王都常駐の件については、再考する。

ただし、改革の安定化を目的として、

貴女を“王国改革顧問”として正式に任命したい。


 肩書き。

 権限。

 そして――枠。


「巧妙ですね」


 文官が、低い声で言う。


「ええ」


 私は頷いた。


 常駐させられないなら、

 外から囲い込む。


 これは、圧力ではない。

 管理だ。


 提案内容は、丁寧に整えられていた。


 ・王都への定期報告義務

 ・改革方針の事前共有

 ・顧問としての発言権

 ・責任は“助言範囲”に限定


 一見すれば、

 理想的な条件だ。


 だが、よく見ると――

 すべてが「枠」を作るための条文だった。


「……これを受ければ」


 文官が言う。


「貴女のやり方は、

 王都の管理下に置かれます」


「はい」


 私は、静かに答えた。


 拒否すれば、

 「協力する意思がない」と言われる。


 受ければ、

 自由は失われる。


 王都は、ようやく

 正面衝突しない戦い方を覚えた。


 その夜、私はアルトに文書を見せた。


「顧問、か」


 彼は、腕を組み、少し考える。


「悪くない条件だ」


 その言葉に、私は一瞬、言葉を失った。


「……そう、思われますか」


「立場が明確になる」


 アルトは、淡々と続ける。


「王都側も、責任を曖昧にできなくなる。

 君を切り捨てにくくもなる」


 それは、事実だ。


 だが――


「でも」


 私は、はっきりと言った。


「私は、枠に入るつもりはありません」


 室内の空気が、少し張る。


 アルトは、私を見る。


「枠がなければ、

 改革は不安定になる」


「枠があれば、

 形骸化します」


 思っていた以上に、声が強くなった。


「私は、制度を“完成”させたいのではありません。

 動き続ける形を残したいんです」


 顧問という肩書きは、

 やがて“責任の押し付け先”になる。


 それを、私はよく知っている。


 しばらく、沈黙が落ちた。


 アルトは、考え込むように目を伏せている。


 ――あ。


 その時、私は気づいた。


 私たちは、

 同じ方向を見ているが、立ち位置が違う。


 アルトは、領主だ。

 責任を引き受け、

 守れる枠を作ることに慣れている。


 私は、枠に切られてきた側だ。


「……悪かった」


 先に口を開いたのは、アルトだった。


「君の感覚を、

 俺は軽く見ていた」


 その言葉に、胸の奥が少し緩む。


「いいえ」


 私は、首を振った。


「私も、

 “守る側”の視点を、まだ理解しきれていません」


 初めての、意見のズレ。

 だが、否定ではない。


「……なら」


 アルトが、静かに言う。


「第三の道を探そう」


 その言葉に、私は顔を上げた。


 翌朝、私は返書を書いた。


王国改革顧問の提案に感謝する。

ただし、肩書きではなく

“改革助言者名簿”への登録という形を希望する。

発言権は保持するが、最終判断は各機関に委ねる。


 枠を、砕く。

 だが、拒絶はしない。


「……名簿、ですか」


 文官が、驚いたように言う。


「ええ」


 私は、微笑んだ。


「個人ではなく、

 考え方を残します」


 私がいなくても、

 名簿に載った“方式”が使われる。


 それでいい。


 数日後、王都から短い返答が届いた。


条件を一部修正の上、了承する。


 完全勝利ではない。

 だが、敗北でもない。


 王都は、理解したのだ。


 ――この人は、

 囲えない。


 夕暮れ時、私は回廊でアルトと並んで歩いた。


「……意見が割れたな」


 彼が言う。


「はい」


 私は、正直に答えた。


「でも、良かったです」


「何がだ」


「同じ考えでなくても、

 一緒に進めると分かったから」


 アルトは、少しだけ笑った。


「厄介だな、本当に」


「今さらです」


 私も、笑い返す。


 並ぶというのは、

 同じ枠に入ることではない。


 違う立場で、

 同じ未来を見ることだ。


 私は、そう理解し始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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