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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは
第1部

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第25話 背負うと決めた人

 王都からの呼び出しは、ついに名指しになった。


「……辺境伯アルト=リュード、王都召喚」


 文官の声が、重く響く。


 理由は書かれていない。

 だが、誰もが分かっていた。


 ――改革の“後ろ盾”を、引き剥がすためだ。


「私も、同行を」


 思わず口を開きかけて、アルトが片手を上げた。


「いい」


 短く、しかし強い声だった。


「今回は、俺一人で行く」


 私は、唇を噛む。


「……それは」


「これは、俺の役目だ」


 アルトは、私を見た。


 逃げない視線。

 守る覚悟を隠さない目。


「君のやり方を通すと決めたのは、俺だ。

 なら、責任も俺が引き受ける」


 胸の奥が、ひどく締めつけられた。


「……私が、原因です」


「違う」


 即答だった。


「君は、正しい仕事をした。

 問題は――それを嫌う連中がいることだ」


 それは、否定できない事実だった。


 王都・中央政務院。


 重厚な会議室で、アルトは一人、貴族たちの前に立っていた。


「辺境伯」


 年配の貴族が、静かに口を開く。


「貴殿の領は、随分と勝手な動きをしているようだな」


「成果は、すでに提出している」


 アルトは、感情を交えずに答える。


「成果など、どうとでも作れる」


「だが、数字は誤魔化せない」


 空気が、張り詰める。


「問題はだ」


 別の貴族が、声を継いだ。


「貴殿が、一介の令嬢に

 国の仕組みを委ねていることだ」


 アルトは、わずかに眉を動かした。


「委ねてはいない」


 静かな声。


「並んでいる」


 その言葉に、ざわめきが起きる。


「……感情論だな」


「感情ではない」


 アルトは、一歩前に出た。


「責任の話だ」


 室内が、静まる。


「俺は、領主として結果を出す責任がある。

 そのために最適な人材を選んだ」


 それだけだ、と言わんばかりに。


「身分か、性別か、

 それとも“扱いやすさ”か?」


 貴族たちを、順に見渡す。


「どれを基準に、人を選ぶつもりだ」


 誰も、即答できなかった。


「……では、問おう」


 王太子エドワルドが、初めて口を開いた。


「彼女が失敗した場合、

 その責任は誰が負う」


 アルトは、迷わなかった。


「俺だ」


 即答。


 会議室が、静まり返る。


「すべて、俺が引き受ける」


 言葉は短いが、重い。


「だから、彼女を縛るな」


 エドワルドの視線が、鋭くなる。


「貴殿は、それほどまでに――」


「信じている」


 アルトは、被せるように言った。


「彼女の能力と、

 俺自身の判断を」


 それは、王都の価値観からすれば異端だった。


 責任は分散させ、

 失敗は曖昧にし、

 誰も前に出ない。


 それが、長年の“安全策”だったのだから。


 沈黙の後、エドワルドが息を吐いた。


「……分かった」


 完全な了承ではない。


 だが、拒否でもなかった。


「改革は続ける。

 ただし――」


 言葉を切る。


「辺境伯。

 貴殿が、前に立て」


 アルトは、頷いた。


「そのつもりだ」


 それ以上の言葉は、不要だった。


 数日後。


 領館の庭で、私はアルトの帰還を迎えた。


「……無事で、何よりです」


 言葉が、少し震えた。


「心配したか」


「……はい」


 即答してしまってから、少し恥ずかしくなる。


 アルトは、小さく息を吐いた。


「なら、伝えておく」


 真剣な声だった。


「俺は、逃げない」


 視線が、真正面からぶつかる。


「君のやり方を、

 最後まで通す」


 胸の奥が、熱くなる。


「……ありがとうございます」


「礼は要らない」


 彼は、はっきりと言った。


「これは、俺の選択だ」


 その言葉が、何よりも重かった。


 守っているのではない。

 庇っているのでもない。


 隣に立つと、決めただけ。


 私は、その覚悟を真正面から受け取った。


 そして、気づく。


 この人の背中を、

 私は見失いたくない、と。


 夜、執務室で一人、私は思う。


 改革は、ここからが本番だ。

 妨害は、まだ続く。


 けれど――

 私は一人ではない。


 背負うと決めた人がいる。

 そして、並ぶと決めた自分がいる。


 それだけで、十分だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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