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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは
第1部

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第21話 正しさが、歓迎されない理由

 王都から届いた文書は、これまでとは違う重みを持っていた。


 丁寧な言葉遣い。

 しかし、行間に滲むのは――焦りと苛立ち。


「……来ましたね」


 私は文書を読み終え、静かに息を吐いた。


「ええ。これは“相談”ではありません」


 向かいに座る文官が言う。


「不満表明です」


 その言葉に、私は苦笑した。


 予想はしていた。

 むしろ、遅いくらいだ。


 文書の要点は、こうだ。


 ・辺境伯領方式の拡大導入について

 ・一部貴族から強い反発が出ている

 ・理由は「既存権限の侵害」「前例がない」


 そして、最後に添えられた一文。


貴女の助言が、混乱を招いているとの声もあります。


「……混乱、ですか」


 私は、その言葉を反芻した。


 混乱しているのは、現場ではない。

 数字も、成果も、はっきり出ている。


 混乱しているのは――

 変わらなくて済んでいた人たちだ。


「反発しているのは、どの層ですか?」


「主に、中枢貴族とその周辺です」


 やはり、と思う。


 判断権限を独占し、

 情報を握り、

 “何もしないことで責任を回避してきた”層。


 彼らにとって、

 私のやり方は不都合でしかない。


 その日の午後、アルトと非公式の打ち合わせを行った。


「貴族の反発か」


 彼は、腕を組んで言う。


「当然だな」


「はい」


 私は、落ち着いて答えた。


「仕組みを変えるということは、

 評価軸を変えるということです」


 そして評価軸が変われば、

 立場も、価値も、変わる。


「彼らは、“正しさ”では動きません」


「分かっている」


 アルトは、短く頷いた。


「では、どうする?」


 問いは、端的だった。


 私は、少し考え、答える。


「正しさを、直接ぶつけません」


 アルトの眉が、わずかに上がる。


「どういう意味だ」


「反発している人たちは、

 “自分たちが不要になる”ことを恐れています」


 だから、説得しても無駄だ。


「なら?」


「彼らを“敵”にしない」


 私は、はっきりと言った。


「代わりに、“選ばせます”」


 翌日、王都へ向けて、追加の助言文を送った。


 内容は、驚くほど穏やかだ。


 ・改革は義務ではない

 ・導入は各領の判断に委ねる

 ・成果が出た領から、自然に広げる


「……逃げ道を、用意したのですね」


 文官が、感心したように言う。


「ええ」


 私は、淡々と答えた。


「強制された改革は、必ず歪みます」


 そして、もう一つ。


 私は、意図的に数字を前面に出さなかった。


 成功例は示すが、比較はしない。

 誰が劣っているかを、明言しない。


「選ばなかった結果は、

 時間が勝手に示します」


 それが、一番残酷で、

 一番公平だ。


 数日後、王都からの反応が届いた。


 表向きは、沈静化。

 だが、水面下では、はっきりと分かれている。


 ・自ら方式を取り入れる領

 ・様子を見る領

 ・露骨に距離を取る領


「……分断が、始まりましたね」


 文官の声に、私は頷いた。


「はい。でも、これは必要な分断です」


 全員を同時に変えることは、できない。

 変わる準備ができた人間から、変わる。


 それでいい。


 夕方、アルトと並んで領館の回廊を歩く。


「嫌われるな」


 彼が、ぽつりと言った。


「ええ」


 私は、否定しなかった。


「でも、好かれるために

 ここまで来たわけではありません」


 アルトは、少しだけ笑った。


「言うようになったな」


「……学びました」


 王都で。

 辺境で。

 あなたの隣で。


「正しさは、

 必ずしも歓迎されません」


 私は、夜空を見上げる。


「それでも、

 必要な時がある」


 アルトは、足を止め、私を見る。


「覚悟はあるか?」


 私は、即答した。


「はい」


 逃げない。

 媚びない。

 引かない。


 その代わり、

 裁かない。


「それなら、十分だ」


 彼の声は、静かだった。


 その夜、私は机に向かい、新しい帳簿を開いた。


 これは、戦いではない。

 説得でもない。


 時間を味方につける仕事だ。


 王国全体が、

 どちらのやり方を選ぶのか。


 私は、ただ整える。


 正しさが、

 歓迎されなくても。


 それが、必要だと知っているから。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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