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婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 〜聖女よりも必要だった“地味な才能”で、辺境から王国を立て直します〜  作者: 花守いとは
第2部

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第30話 並び立つ未来

 風は穏やかだった。


 中央都市から戻った翌日、

 城壁の上に立つと、

 空はどこまでも澄んでいる。


 嵐のあとのように。


---


「終わったな」


 アルトが隣に立つ。


「ええ」


 主人公は答える。


「ひとまずは」


---


 多速度連合は動き始めている。


 市場は落ち着き、

 東方連邦との航路も再開された。


 速さは止まらない。


 だが暴れない。


---


「俺は最後まで疑っていた」


 アルトが言う。


「速さを重ねるなど、机上の理屈だと」


「ええ」


「だが崩れなかった」


 彼は遠くを見つめる。


---


「崩さなかったのです」


 主人公は静かに言う。


「壊せば簡単でした」


「中央も、東も」


「ですが壊した先に、

 持続はありません」


---


 しばらく沈黙が続く。


 第一部で、彼は言った。


 従わない、と。


 今日も同じだ。


---


「俺はお前に従わない」


 アルトが言う。


 変わらない声音。


「ええ」


「軍は王に忠誠を誓う」


「ええ」


「だが」


 彼は少しだけ笑う。


「お前とは並ぶ」


---


 その言葉に、彼女も笑う。


「それで十分です」


---


 速さは来る。


 外からも、内からも。


 文明は止まらない。


 揺れも消えない。


---


「次は何を守る」


 アルトが問う。


 主人公は少し考え、答える。


「未来です」


---


「未来は速いぞ」


「ええ」


「迷うぞ」


「ええ」


「それでもか」


「それでも」


---


 城壁の上。


 並んで立つ二人。


 従属でもない。

 支配でもない。

 服従でもない。


 並立。


---


 遠く東の空に、

 新しい航路が描かれている。


 その向こうに、

 まだ見ぬ速さがある。


 まだ見ぬ揺れがある。


---


 だが今、制度は重なった。


 一つの中心に依らず、

 一つの速度に縛られず。


 並び立つ速度の上に、

 文明は進む。


---


 風が吹く。


 未来は、まだ速い。


 だがもう、恐れない。


 並び立つ者たちと共に。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


この物語は「婚約破棄」から始まりました。

けれど書きたかったのは、復讐でも逆転劇でもなく――

選び直すことでした。


物語の規模は少しずつ大きくなりましたが、

中心にあったのはずっと同じ問いです。


速さか、修正か。

従属か、並立か。


そして最後に辿り着いた答えは、

「壊さずに進む」という選択でした。


速さを否定しない。

けれど、速さだけにしない。


強さを否定しない。

けれど、強さを独占しない。


この物語が、

何かに追われている人や、

決断を迫られている人の心に、

少しでも“余白”を残せたなら嬉しいです。


並び立つという形は、簡単ではありません。

ですが、それでも選べる形だと信じています。


ここまで物語を見届けてくださったこと、

心から感謝します。


またどこかで、

別の速さの物語でお会いできる日まで。


ありがとうございました。

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