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ビラ配りとバンドメンバー

カクヨムにも投稿してます。

 時宮に任務(?)を任された日から2日後の早朝。


 聖くんと私は2人で校門に立ち、バンドメンバー募集のビラ配りを行っていた。



 私達は昨日、聖くんの家でバンドメンバー募集のビラを作り、これからのプランについて話し合った。



 「そういえばあいつ、バンドやれとは言ってたけど、そもそも楽器あるのかな? 言った当人だし、流石にその辺は用意してると思いたいんだけど、どうなのかな?」


 「楽器とか機材とか、あとは軽音部結成後に必要になる道具とかは全部リツくんが出してくれるから」


 「リツって……、ああ。 時宮がりっちーって呼んでた金持ちの」


 「そうそう!」


 「……ちょっと待って。それは流石に申し訳無さ過ぎない?」



 時宮ならまだしも、私と赤楚リツはそもそも親しくない。


 そんな親しくない人間から資金援助を受けることになる。楽器なんて物凄く高いだろうから、資金援助もちょっとどころの騒ぎじゃない。


 あまり交流もないような私に対して資金援助をしてくれるっていうのが物凄く後ろめたい。いくらお金持ちだからといって、それを何の気無しで頂けるほど私の肝は座っていない。



 「その辺は僕も思ったんだけど、リツくんと虹彩くんが言うには……」



 『私が時宮様の力になれるのであれば本望! 喜んでお受けした任務である!』


 『勿論無償でお金を出してもらうわけじゃないよ。軽音部が設立されたら、以降部員から集めた部費の一部をりっちーに渡すことにするから、援助というより、投資だね』



 「って言ってたよ」


 「それって、私達の活動が成功すれば上手くいくかもだけれど、失敗したらどうするの? 軽音部が絶対にできるとも限らないし」


 今の話は、私達の成功が前提になった話だ。提供側が喜んで援助してくれるにしても、私が納得いかない。


 それに責任が重すぎる。……正直こんなに大きく動くのであれば引き受けるべきじゃなかったかもとも思ってしまう。


 「逆だよ。寧ろ統治部の活動に、伊吹さんが手伝ってくれてるんだよ。虹彩くんも言ってた」



 『伊吹とひじりんなら絶対に上手くいくよ。それにこれは、伊吹の願いというよりも、僕ら統治部の総意だ』


 『統治部のみんながやりたいと思ったことに、伊吹が手伝ってくれてる。伊吹に手を貸すんじゃなくて、《《伊吹が僕等に手を貸してくれている》》ってこと。だからあまり気負いしないでって言ってあげてよ』



 ……そういえば私、統治部に入り浸ってるものの、入部はしてなかったっけ。


 ……まあ、そういうことなら少しは気が楽になったかも。


 「……とりあえず分かった。ありがとうね聖くん」


 「うん! ならそろそろ本題に入ろうかな。今日はバンドメンバー募集のビラを造るよ!」





 こうして、昨日のうちにビラが完成した。と言っても、私は聖くんがデザインしたのを少し手伝ったくらいだから、特に何もしていないけど……。


 「バ、バンドメンバー募集中です! 興味があれば是非……!」


 「一緒にバンドしてくださいっ!」



 そんなこんなで、今は登校中の生徒にビラを配る作業をしている訳だけど、驚いたことに意外とビラを手に取ってくれる。聖くんのデザインセンスが良かったからかな?



 ビラを配って、興味のある人は今日の放課後に統治部の部室に集まってもらう。とりあえず今日のビラは配り終えたからこれで終わり。


 あとは廊下の壁に満遍なくビラを貼る作業のみ。

 ……できれば今日中にメンバーが集まって欲しいな。





 放課後。


 今日、時宮は部室に居ないらしく、初顔合わせとしてみんなだけで使ってくれとのこと。


 そして、聖くんは時宮と少し話し合いがあるらしく、先に行っててと促された。



 つまり、この扉の奥には知らない景色が広がっているというわけだ。知り合いも誰も居ないような、そんな場所だ。



 中学までの私なら、臆することなく進めたかもしれない。


 だが、今の私は違う。


 時宮と出会ってだいぶマシにはなったが、まだ自分のネガティブな感情を全て消し去れたというわけではない。


 ……やはり、少し怖い。



 だが、ここまで来て引き返すわけにもいかない。


 私は意を決して扉に手をかけ、ガラリと思い切って開けた。



 そこには、2人の男女が居た。



 女の子の方は、ピアスとピンクに染めた髪、キリッとしたアイラインに制服の下から見える髑髏の私服のイケイケ女子。


 校則ガン無視スタイルのこの女の子を、私は知っている。



 私と同じクラスのくれない 月乃つきの。それが彼女の名だ。



 自分から人に関わりに行くことはないけれど、周りのみんなは興味本位でこの子に話しかけに来るような、そんな女の子。


 ……誘いに乗っても違和感のないような人だけど、あまり自分から乗るようなタイプとも思わなかったから、ちょっと意外。



 もう一人は誰だか知らないけれど、いかにもレゲエやってそうな男の子。


 ドレッドヘアにパーカー。普通に怖い。


 というか彼に至ってはもはや制服なんて着ていない。髪染めも私服登校も禁止なのに、校則は機能していないのだろうか?



 ……そういえば時宮もあんな髪色だけど、この学校の校則ってあって無いようなものなのかな?



 「こ、こんにちは……」



 意を決して挨拶すると、2人がこちらに注目した。……睨まれてる? 怖いって。


 というかこの2人に話しかけるのなんて中学時代の私でも無理だったよ!?



 「ん? あれ? あんた茉白じゃん。あんたもバンド入んの?」



 紅さんがそう言う。……そりゃあ私はバンドメンバーですから。


 多分2人とも聖くんがビラ渡したんだろうなあ。私この2人にビラ渡した覚え無いもん。



 「……ッス」



 もう1人は滅茶苦茶声小さいし。怖いってば本当に。



 「もう1人、一緒にビラ配ってた子が居るから、その子が来るまで少し待っててください」


 「……ッス」



 ねぇ本当に気まずいんだけど。何喋ればいいの? 怖いよ。


 でも何も喋らないわけにもいかないし……。



 「き、来てくれたのは2人だけかな?」


 「さあ? でも私達以外にも何10人かは覗きに来てた」


 「そうなの?」


 「覗きに来ただけですぐ扉閉めてったけど。冷やかしじゃない?」


 「はあ……」



 それ貴方達が怖いから逃げていったとかじゃなく?



 「ふ、2人はどうして来てくれたの?」


 「……まぁ、あれッス」



 あれって何!? 声小さいってば!?



 「く、紅さんは?」


 「秘密」



 何それ!?


 というか私今からこの人たちとバンド組むの!? 上手くできる気がしないんだけど!?



 「ごめんおまたせ! 遅れちゃった!」



 聖くん!!!!!!!!!

 本当に待ってた!!!!!



 「もう30分くらい待たせちゃったし、とりあえず色々説明させてもらおうかな!」


 聖くんよくニッコニコで喋れるね……。私怖すぎてずっと顔強張ってたよ。



 「先に自己紹介からしておこっか。僕は青木 聖! よろしくね!」


 「あ、茉白 伊吹です」


 「紅 月乃」


 「……茶谷ちゃたに りゅうッス」


 「おっけー! 月乃さんに、龍くんだねっ!」



 よろしくね、と挨拶した後、聖くんは隅に追いやられていたホワイトボードを持ってきて、色々書き始める。……字が綺麗!



 「ビラにも書いたと思うけど、僕と伊吹さんは、この学校に軽音部を作りたいんだ! その為には部員が3人以上と顧問の先生が必要! だからこうしてバンドメンバーを募集させてもらったんだ!」



 「えっと、もし協力してくれるのなら、部員の条件は達成されるし、顧問の先生もアテがあるから、晴れて軽音部は設立されます。楽器はこちらで用意できるので、その点は心配しなくて大丈夫です」



 「このタイミングでバンドメンバーを募集したのは、5月中旬に行われる文化部発表会で、軽音部を大々的に発表するため!」



 「まあ練習期間も短いし、ハードなスケジュールになると思うから、無理なお願いをしてるのは重々承知の上だけれど、よければ協力していただけると嬉しいです」




 以降も私達は交互に、事の詳細を説明した。



 「何か質問があれば」 ということで質疑応答の時間を取ると、最初に手を上げたのは紅さん。



 「協力してあげても良いけど、条件出しても良い?」


 「うん! 何かな?」



 「私がセンターで、ボーカルしたい。それだけ」



 ……目立ちたがり屋なのかな?



 まあでも、私は別にボーカルしかやりたくないって訳じゃないし、他は初心者だけど、ピアノはちょっとかじってたからベースならそれなりに出来るし。


 それに聖くんも、音楽経験は初めてだけど結構ノリノリだったし、これは大丈夫かな?



 「うんっ! 僕は良いよ! 伊吹さんは?」


 「私も大丈夫。茶谷くんはどう?」


 「……何でも大丈夫ッス」



 さっきから茶谷くんが怖すぎる。入ってくれるかな……?



 「って感じだけど、どうかな? 2人ともっ」


 「それなら私は協力する」


 「……まぁ、入れてくれるなら俺は」



 こうして、バンドメンバーは決まった。


 ……本当にこれで大丈夫なのかな?





 『ビラ、僕に1枚くれないかな?』


 昨日、虹彩くんにビラが完成したことを報告したら、そうメッセージが届いた。



 何でも、バンドメンバーになってくれそうな人に心当たりがあるらしく、直接渡しに行きたいとのこと。



 1時間目の授業が終わった後、視聴覚室のある7階の男子トイレへ赴く。


 手前から2つ目の個室を3回ノックし、


 「周りには誰も居ないよ」


 と言うと、扉がガチャリと開き、そこから虹彩くんが現れた。



 「ごめんね。毎度回りくどい方法で。放課後になるまでは、部室に誰か居ることも多いから」


 「気にしないで。それよりこれ」



 僕は虹彩くんに、表面が見えないように2つ折りされたビラを渡す。



 「うん、ありがとう。心当たりの子についてはまた後で報告するから」


 「おっけ! ごめんね、そろそろ次の授業があるから」


 「うん。じゃあまた後で」



 そう言って、僕と虹彩くんは別れた。

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