クソ男とその傘下達
放課後、私はまた視聴覚室もとい、統治部の部室前に来た。
相変わらず汚い字で、「統治部へようこそ」と書かれている。
私がため息をつきながら、教室に入ろうとすると――
「ふはははははははははは!!!!! 虹彩殿はやはり!! 流石の慧眼で御座いますなあ!!!
お目が高い!!!」
……知らない声がする。
……何? この野太い声。恐る恐る部室へ入ると――
「え゙」
「む?」
そこは、男だらけのむさ苦しい場所と化していた。
◇
「はーい! 皆並んで〜。僕の友達を紹介するよ〜」
相変わらずの円卓に、私と時宮は向い合せで座る。
それを囲うように、時宮の周りに5人の男と1人の女がぞろぞろ座り始めた。
それを見た私の最初の印象。
……全員クセが強い。
時宮以上にガリガリの男や大巨漢の男、オタク気質からDQNに至るまで、幅広く取り揃えられている。……何これ?
「おや? 友達ですかな? 傘下ではなく?」
太ったの男が聞く。
「傘下じゃないよ。まぁ、とりあえず紹介させてね」
時宮が手をパンっと叩き、みんなを黙らせる。
「んじゃ、伊吹から自己紹介して〜」
「あ、えっと、茉白伊吹です。時宮とは、その、友達です」
……シーンとしている。
え? 何この空気。私が悪いのかな?
「はーい、伊吹は有力な傘下候補だから、みんな今のうちに仲良くね〜」
時宮がそう言った途端、
「なんだ〜傘下候補かよ!」
「早く言ってくださいよ〜」
「よろしくお願いします」
「よろしくね」
「よろちくび」
「運命の出会いっ!!!!!!」
と、各々が話しだした。……何なのこのノリ。
「はいはい、じゃあ次お前らの番!りっちーから先に順番にね!」
「はっ!」
そう言われ、最初に名乗り上げた眼鏡をかけた真面目そうな男。
……まあ傘下って時点で変な人なんだろうけど。
「私は赤楚 リツ。偉大なる時宮様の忠実なる傘下の1人である!」
ほら変な人だ。……って、なんかこの名前聞いたことある気が。
「りっちーは大手企業の社長の一人息子! 僕の活動の資金的な援助をしてくれているんだ」
は? 何その強すぎる立場。
え、この部活ってそんなにガチなものだったの???
それに、大手企業って絶対あの赤楚電子のことじゃん! なんか社長の息子も天才って話題になってた……。通りで聞き覚えがあると思ったら。
「では続いては俺だな。同じく時宮さんの傘下、黄林 幹太。皆からはデブゴンって呼ばれてるよ。情報収集なら任せて」
椅子が可哀想になるくらい太くてでかい男が自己紹介を始める。
デブゴンって可哀想過ぎるでしょ。……事実だけど。
……順番的に、次はなんか白人っぽい人かな。金髪で青い目。……外国人?
「俺はルーカス! 金谷 ルーカス! 韓国人みたいな苗字にアメリカ人みたいな名前だけど、オランダとロシアとイタリアと台湾のミックスだぜ!」
何なのこいつ。
駄目、情報量が多すぎて頭がこんがらがってきた……。日本はどこなの?
「ルーカスには後々、語学担当になってもらうつもりだよ」
「日本語しか喋れないぜ!!! 助けてくれ!」
日本要素はここか。いや、ほんとに何なのこいつ。
「次は僕かな。僕は青木 聖。……虹彩くんの、傘下ですっ」
あら可愛い。むさ苦しい中に咲く1輪の花って感じ。
……私が来るまでこの男まみれの中に1人だけ居たってのが本当に謎だけど。
「ひじりんは広報担当。可愛いでしょ?男なんだけどね」
……は?
「もう、虹彩くんってば……」
「……は?」
それで男? その見た目で? 本当に男? 嘘に決まってるでしょ???
ぱっちりした目に小動物のように小柄な体格、ボブカットに、……そんなわけ無いでしょ???
女子の中でも相当可愛い部類だよ???
「次は……俺か! 俺は銅本 牙王! 喧嘩なら負けない!」
次は絵に描いたような黒いリーゼントに特攻服。
……というか全員のクセが強すぎて一人一人の情報処理が追いついてない……。
「ふはははははは! 最後は拙者か! 拙者は銀鏡 博!! 見ての通り、虹彩殿と並ぶ天才である!!」
……。
……。
……………キツい。一番キャラがキツい。
ぐるぐるメガネにガリガリ。さっきのリツさんがキレイなメガネなら、こっちはキタナいメガネ。あまり関わりたくないタイプの方だ……。
「博士はすごいよ〜? 京大で頭良いんだよ〜」
ナメてました本当に申し訳ございませんでした。
……というか大学生の人がなんでこんな場所にいるの!?
◇
「それじゃ、本題に移ろうか。……と言っても、みんなに今日来てもらったのは伊吹を紹介したかったが為だったし、今日はひじりんと博士にくらいしか要はないんだよね。ごめんね?遠いところまでわざわざ来てくれたのに」
「許しましょう!」 「良いってことよ」 「悲しすぎる!」 「今度奢ってくれ」 「拙者も失礼する!」
呼ばれなかった4人と銀鏡さんがぞろぞろと部室から出ていく。
……本当に何だったんだろう? って、銀鏡さんには何か用事があるんじゃ……?
「時宮、あんた確か銀鏡さんには何か要件があるって……」
「? 銀鏡って誰?」
「博士のことだよ……。虹彩くん」
「あぁ、博士のことか。名字覚えてなかった」
は? こいつマジか? さっきの自己紹介聞いてなかったの???
「博士の要件はもう済んだよ。博士は機械担当でね、これ見てよ」
時宮が自分の耳を見せる。
「……イヤホン?」
「惜しい! 小型の無線機。特定の人と電話するだけならこれ使ったほうが楽になるくらい高性能なんだよ?」
あの人何者なの……???
「まあそんなことはどうでもいいんだよ。本題に移ろうじゃないか」
時宮が、椅子から立ち上がって、私と聖くんを指さした。
「君たち、バンドを組みな」
「……へ?」
「わぁ!楽しみっ!」
それは、あまりにも唐突に告げられたことだった。