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第36話.マカオ沖海戦

***戦艦『金剛』***


「どうだ?」


「いえ、特に反応は……あっ!電探に感あり!」


「独東洋艦隊だな」


主力艦隊は空母に打電する。

「我、敵艦隊ヲ撃滅スル」

そう伝えると進路を変更し、東洋艦隊撃滅の為にいざ、向かったのである。


なお艦隊司令官は栗田健男中将である。


「長官!攻撃隊より入電!我敵艦隊見ユ!東洋艦隊ノ総力ト認ム!」


「各艦へ伝達、戦域ニ突入スル、我ニ続ケ」


「了解、発光信号モールスにて各艦に伝達します」


***比叡***


「ん!?金剛より発光信号!戦域ニ突入スル、我ニ続ケ!」


「いよいよか、よし、我々が陸戦でドイツに勝てないように…ドイツ野郎に海戦では我々に勝てないという事を見せてやれ」


「艦長!さらに索敵機より入電です。敵艦隊ハ我ノ位置ヲ存知ナリ、奇襲ハ不可能ト認ム」


「なあに、敵さんが高性能なレーダーを持っている事ぐらい存知さ。だが、砲撃戦は人と人の戦いである」


一方、ドイツ軍は……


「この動きは…敵も我々の場所を知っているようですな」


「それはそうだ。奴らにだってカスみたいなものとはいってもちゃんとレーダーぐらい持っているんだ。それに海戦には我々よりも慣れている。黄色い猿と言って侮るとこちらが痛い目に遭う、数もこちらのほうが少ない」


「提督、負ける事は総統閣下への反逆であります」


「わかっておる。だからこそこの戦いは優れた戦術によって勝たなければならないのである」


その戦術とはかつて日本海で東郷平八郎がとった戦法である。

しかし肝心の日本軍もその作戦をとろうとしていた為、成功率は僅かであった。だがそんな事はドイツ側も知っている。それに戦艦の数ならばドイツに利がある。それに彼らは自国の軍艦が東洋の猿(日本人)が造った軍艦よりも強いという自信から砲撃戦では絶対に負けないと思いこみ、士気は非常に高かった。


だが油断はあるだろう。

日本には油断がない、技術的に不利なのは日本であり、気を引き締める必要があるからである。


特に注意しなければならない事はドイツ軍の電探射撃であった。

これを阻止するべく、連合艦隊司令長官の小沢治三郎はある作戦を立案した。その正体は伊400から発艦する水上機に隠されていた。


伊400、伊401より発艦した水上攻撃機「晴嵐」6機は独艦隊上空に差し掛かっていた。


「敵艦隊発見!報告通りの大艦隊です!」


「構わん!我々の任務は敵艦隊を攻撃する事でもなければ敵艦に雷撃や爆撃を加える事でもなく、敵艦に体当たりする事でもない、単に電探射撃を不能にさせるのみだ!よし、電子戦用意!!」


「ようそろー!!!」


晴嵐ほど速度を出せる水上機はドイツにはない、その為、ドイツ海軍ははっきり言えば飛んでいるのが水上機である事を認めたくはなかった。


「一体なんの為に!?」


「構わん!どうせ索敵だ、撃ち落とせ!!」


Jaヤー!」


ドイツ軍が撃ち始めた瞬間である。


「用意……射っ!!」


6機の晴嵐から細かい銀色の紙が投下される。

いわゆるチャフだ。水上機にしては高速であり、逃げ足が速い事から晴嵐ほど適任な機はなかった。だからこそ晴嵐がチャフ撒き作戦に投入されたのであった。


チャフを巻かれてしまえばドイツ軍も満足にレーダーの機能を使用できない。即ち、日本軍が攻撃するチャンスは今である。だからといって日本軍には電探射撃ができないが、目と目の戦いであれば五分と五分に持っていけると日本軍は考えた。


「…!!!敵です!!敵の姿が見えました!!」


「敵はチャフにより正確な砲撃ができない状態だ、即ち長官…」


「今がチャンスだ。全艦砲撃用意!」


栗田中将の命令で日本軍は動く。

砲弾、照準共に完了すると、士官は叫んだ。


「射っ!」


35.6cmが火を噴く。

空気を切り裂き、独艦隊へとその砲弾は降り注いだ。


「水柱を確認!命中弾なし!」


「おっ、敵さんもやりはじめたな」


日本軍に見えてドイツ軍に見えないわけがない、彼らもまた日本軍に1歩遅れて砲撃を開始した。日本軍も次弾を装填し、照準の修正も終わった所で再び砲撃を行おうとした。ところが大問題が発生、巡洋艦「青葉」に1発砲弾が命中したのである。


「青葉被弾!!」


「くそ!ドイツ軍めなかなかやるじゃないか」


「我々でさえ初弾命中とはいかなかったのに……」


「青葉より発光信号!一番砲塔損傷!戦闘ハ可能!」


なんとも不運な青葉であったが幸い、戦闘は続行できる状態であった。日本軍は青葉被弾をものとせず、反撃を開始した。


「方位2-7-0、距離19000!撃ちー方始め!!」


「射っ!」


日本軍の砲撃とほぼ同時にドイツ軍も砲撃を行った。


「見張りより艦橋、敵艦我と同時に砲撃せり!」


「面舵45度!」


「おーもかーじ!!!」


金剛の右舷250mに砲弾が落ち、激しい音と共に水柱が立った。

しかし日本軍も決して戦果がなかったわけではなかった。戦艦「マッケンゼン」に2発の砲弾を食らわせる事に成功したのである。


「やった!」


「喜ぶのはまだ早い!!」


艦橋にて、喜ぶ者達を栗田は戒めた。

戦いはまだ始まったばかりなのである。


「敵艦隊突撃!!」


気でも狂ったのであろうか?

当初の作戦とは違う動きである。


「前方の戦艦隊を集中的に攻撃せよ!!」


その時、金剛乗組員に激しい衝撃が襲う。


「艦橋及び2番砲塔被弾!!」


「長官!!」


皆栗田の安否を心配する。

だが割れたガラスとその他の散乱物の中から彼は出てきた。頭からは血を流し、顔にも傷があったが元気だけは先ほどと同じようである。


「長官!!大丈夫ですか!?」


「私は平気だ!被害を報告せよ!」


「艦橋一部損傷!死傷者数集計中!2番砲塔被弾!使用不能!」


「大体中破か…だが戦闘に支障はないのだな?」


「2番砲塔が使用不能故、支障はありますが戦闘続行は可能であります」


「よし!こちらはこのまま!日本海海戦の時と同じ手段で行くぞ!」


その後も日本軍とドイツ軍の戦闘は続いた。

金剛は中破しながらも戦闘を続行、既に砲弾を数発敵艦に命中させ、確実にダメージを与えていた。所が再び金剛を含む日本艦隊に悪夢が襲いかかった。


「…前方30度敵機!!!」


対空戦闘喇叭が鳴り響き、艦内が慌しくなる。

ドイツ軍のJu87スツーカ32機がBf109に護衛されて襲来したのである。


「対空戦闘用意!!」


「急げ!!対空戦闘用意!!」


さらに、艦体が大きく揺れる。


「な、何事か!?」


「右舷前方魚雷1本命中!!艦内浸水中!!現在速力30!」


さらにドイツ軍は日本側の旗艦である金剛を集中攻撃した。

爆弾が命中し、金剛はモールス以外での通信が不能に陥る。


「比叡に代行通信させよ!」


「了解!!」


「現在傾斜4度!!」


「はやくなんとかするんだ!」


「現在復旧作業を急いでおりますが何せ艦歴が長く、老朽化が進んでいる為かリベットの継ぎ目などから次々と浸水!!徐々に破損箇所が広がりつつあり!!」


「まずいぞ、このままでは…」


一方の対水上戦であるが、水戦(水雷戦隊)の攻撃によりドイツ軍の損害は増大しつつあった。だが航空攻撃を受けている日本艦隊が不利な状況である。さらに旗艦金剛は回避行動の為、高速を出しているがそれが災いし、艦歴も30数年と老朽化も進んでいた為に浸水がひどくなり、傾斜もどんどん大きくなっていった。


「まずい!!」


さらにもう1発の爆弾が金剛にあたる。

もはや艦隊の戦闘力の低下よりも、日本海軍の戦艦を1隻でも沈めようとドイツ軍はしていた。その為、金剛を集中攻撃しているのであった。だがそれが裏目に出る、その他の艦への攻撃は疎かとなっていた為、特に後方の駆逐艦は雷撃による反攻を開始して独艦隊に大打撃を与えていた。


比叡も爆弾が命中して一部が損傷するが砲撃を繰り返し、ついにプリンツ・アイテル・フリードリッヒとフュルスト・ビスマルクを撃沈した。こうして主力艦を2隻失い、1隻は大破して事実上戦闘不能、独艦隊は敗北を認め、マカオへ帰投した。だが日本軍も無傷ではなかった。


「総員退艦!!」


「急げ!とりあえず海に飛び降りろ!!」


開戦以来4年間日本を見守ってきた歴戦の戦艦「金剛」が沈没、駆逐艦も2隻沈没した。

しかし僅かな差で海戦は日本海軍の勝利となった。地中海海戦の時よりも日本軍は苦戦し、ようやく辛勝したのであった。丁度その頃、日本陸海軍機はマカオの航空基地を攻撃、ドイツ空軍を壊滅させた。


日本艦隊は大損害を被るがマカオ上陸は予定通り決行される事になった。

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