第29話.激戦
東部ではソ連の攻勢とパルチザンの妨害、さらに伸びきった補給線にここの所激化する連合軍の爆撃により衰えていくドイツ軍…しかも北アフリカではモントゴメリー率いるイギリス軍が反撃を開始、戦況は枢軸国側から連合国側有利へと傾き始めていた。
連合軍はまず3月に日本海軍機動部隊と米海軍機動部隊による共同作戦でドイツ地中海艦隊と残りのイタリア海軍を撃滅、上陸部隊を援護しモロッコとアルジェリアへ兵を上陸させさらに南からも日米仏が進撃、モロッコで合流する大作戦を開始しようと、また6月にはノルマンディーに上陸する作戦を決行しようとしていた。
その一方でドイツも来るべき決戦に備え地中海に潜んでいるドイツ海軍の主力艦隊を日米海軍にむけた。
艦隊総司令官は一時は第一線を退いていたヴィルヘルム・マルシャル上級大将である。
「提督、報告です。日本の機動部隊が大西洋にぼちぼち現れるようになったとの事です」
「う~ん、世界三大海軍、主にイギリス、アメリカ、日本だ。その三国を相手に貧弱なドイツ海軍が立ち向かう事になるとは……」
「今なら大丈夫ではありませんか?正規空母9隻、軽空母4隻、戦艦ティルピッツ、グナイゼウ、マッケンゼン級巡洋戦艦4隻、重巡プリンツ・オイゲン、ヨルク代艦級2隻、さらに駆逐艦も20隻は残っています」
「それは米英海軍の攻撃が激しくて地中海に我が海軍が釘付けにされ、まともに作戦行動ができないという事実もあるが……確かに北村の艦隊よりは空母の数は多い、問題は機動部隊を運用するのがこれが初めてで兵士の錬度も気になる。対する日米は共に戦った関係で歴戦の兵士が勢ぞろいだ」
「日本かアメリカ!どちらかの機動部隊を叩けば状況は変わります!提督!ご決断を!!」
「………わかった、我がドイツ海軍の威信に賭けても、万が一の場合は敵艦隊を迎え撃ち、撃滅する!」
しかしドイツ海軍はやはり、英米日の海軍と比べると劣勢で経験不足なのは否定できない、そこでマルシェル上級大将は潜水艦隊を指揮するデーニッツに連合軍艦船はすべて沈めよと具申、ドイツの恐ろしきUボートはついに動き始めた。
ここに日米英vs独による大西洋の激しい戦いが始まったのである。
早速ドイツのUボートは戦果をあげる、船団護衛任務に当たっていた日本海軍の駆逐艦「雷」を撃沈、1分以内の轟沈でありさらに同船団の輸送艦3隻を撃沈した。
さらに損害は大きくなってゆく、米英の艦艇も次々と撃沈されてゆく、Uボートはいつまで経っても恐怖であった。しかし米英艦船には切り札があった。
それはヘッジホッグである。イギリスで開発された対潜兵器で24個の爆雷を投射し1発でも水中目標に命中すればその爆発に寄って生じた水中衝撃波によって全てが誘爆、潜水艦は血祭りに上げられる。
さらに米英に劣る日本海軍も負けてはいなかった。
札幌型航空母艦に搭載した対潜哨戒機『東海改』が護衛にあたり、既に3隻を撃沈していた。
その代わり連合軍は大きな損害を被る、やはりどんな対策をうとうともUボートはある意味では最強の兵器でありすべてを防ぐ事はできなかった。
英駆逐艦「ウエストコット」…
「急げ!!ヘッジホッグだ!!」
「ダメだ!!」
ウエストコットに2発の魚雷が命中する。
防御力などないに等しい駆逐艦は艦体が真っ二つに折れてしまい、轟沈する。
「総員退艦!」
中にはボートもあるが直接海に飛び込む者も少なくはない。
「くそぉ……Uボートめ」
「俺はこれで2回目だ、やっぱりどんな新兵器を搭載しても奴には勝てんか……」
「見ろ!また味方がやられたぞ!日本の駆逐艦だ!!」
「ありゃダメだ……沈むな、ウエストコットのように…」
「はぁ……」
今度は駆逐艦「竹」が被雷、竹も一分ほどの轟沈であった。
さらに米駆逐艦「ブッシュ」なども同様に戦没した、しかし駆逐艦はまだ戦闘能力があるからよいが輸送艦はもっと悲惨であった。
足も遅いし防御力などないし物もいっぱい搭載しているのだから撃沈されたらかなりの犠牲が出てしまう、もっとも多くの人間は物を捨て退艦し次に備えて一端基地に戻るのだが中には戦死してしまうものも当然ながら存在する。彼らは二度と故郷の土を踏む事ができない。
一方、空中では日米英によるドイツ本土空襲が行われていた、イギリスの飛行場から飛び立った多数の航空機は目標目指して編隊を組み、危険なドイツ上空を飛行していた。
しかし米英を相手にするだけでも数百という航空機が来るので精一杯だったドイツ空軍、さらに日本陸軍航空隊の護衛機部隊が加わり疾風とBf109、Fw190は死闘を展開、しかし主力の航空機はほとんど東部戦線に回されておりドイツは制空権を失っていった。
…ところがドイツには切り札がある。
「…右上空敵機!!」
「……気をつけろ!!メッサーシュミットの新型だぞ!!」
メッサーシュミットの新型……それはMe262シュヴァルベである。
世界で始めて実戦部隊に配備されたジェット戦闘機である。空では無敵といっても過言ではない、弱点は着陸時と寿命が短い事である。
しかしMe262は新鋭機B-29をも撃墜してしまう。
流石に防御火器が強力である為、撃墜された数はB-17に比べれば圧倒的に少ないのだがそれでも被害は拡大中だ。ドイツ空軍のベテランが操れば1度に2機も撃墜されてしまったりする。
西では連合軍はドイツの新兵器とドイツのUボートに苦しんでいた…っが東ではソ連軍が快進撃を見せていた。既に戦死者は今大戦で最大のものになっているにも関わらず赤軍は物量でドイツ軍を圧倒、補給線が伸びきり爆撃により満足に兵器も生産できないドイツはソ連軍に押され、すでにソ連軍はスモレンスクを奪回しようと前進していた。
「いかなる犠牲を払ってでも祖国を守るのだ、そしてヨーロッパを解放するのだ」
それがスターリンの命令であった。最も解放した国はもちろん共産主義国家となりソ連の配下におかれる事になるだろうしすでに冷戦が始まる気配はあった。
そんな中、日本では秘密裏にある事が計画されていた。
「えっ?
御意見、御感想等お待ちしています。




