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第28話.マハジャンガ沖海戦

2月20日、イギリス軍を乗せた客船や漁船わも交えた船団は大変遅いもののまもなくマダガスカル島にさしかかろうとしていた。

マダガスカル島はイギリス、南アフリカ軍の激しい抵抗によりなんとかこの日まで島の南端とトゥリアラの確保に成功、上陸作戦は無事に行えるものであった。


しかし問題はイタリア艦隊である。

大きな損害を受け燃料も不足気味ながらもイタリア海軍はイギリス軍の大船団の接近を警戒してマダガスカル島付近にてずっと待機していたのである。


空母2隻、戦艦2隻、巡洋艦3隻、駆逐艦5隻、その他10隻と小規模な艦隊ではあるがいざとなればドイツの地中海艦隊が援軍としてきてくれるだろうとイタリア軍は見ていたのでこれでも十分としていた。しかしこれはイタリア軍の誤算であった。


イギリス軍は南雲機動部隊に護衛されつつマダガスカル島まで近づいていたのである。

南雲の艦隊は空母6隻、戦艦2隻、巡洋艦10隻、駆逐艦32隻、その他艦艇20隻という大艦隊であった。その他艦艇というのは主に補給艦や工作艦がメインである。



さらに搭乗員は内地でしっかり訓練してきたベテラン揃いであった。

「長官!南部に20万、トゥリアラに10万の将兵が上陸、作戦は成功です」


「今後はUボートに警戒しつつ船団を南アフリカまで護衛しますか?」


南雲は参謀達を睨みつけるように降り向き、こう命令した。

「いや、イタリア艦隊を叩く」


「ええ!?折角見つからないようにきたのに!?」


「イタリア艦隊を叩く、制海権を確保する事は基本であるはずだ」


南雲中将は決断した。空母6隻を含む自軍の機動部隊の力を持ってイタリア海軍機動部隊を撃滅すると。

その頃、イタリア海軍は………


艦隊旗艦、ヴィットリオ・ヴェネト級4番艦「ローマ」。

艦隊指揮官…アンジェロ・イアキーノ大将。

「提督、ドイツ軍偵察機の情報によりますとマダガスカル島南部に日本の機動部隊がいるようです」


「なんだと!?……日本の機動部隊……ついに動いたか、日本海軍が……」


イアキーノ大将にとってそれは最悪の展開であった。

そもそも彼はヒトラーが対日宣戦布告を行いそれに便乗する形でムッソリーニも対日宣戦布告をした時点から海軍は終わったと悟っていた。


ただでさえイギリス海軍の前にも歯が立たずに消耗しているというし最近はアメリカ海軍の相手もしなくてはならなくなったというのに今度は日本海軍も加わる。つまり貧弱なイタリア海軍は錬度と数の面であまり期待ができないドイツ海軍と共に世界三大海軍のすべてを相手にしなくてはならなくなったのである。



特に日本とアメリカは最強クラスの機動部隊を持っていた。イタリアは2隻のみ、ドイツと合わせた所でも足元にも及ばないであろう。主力艦の数も日米英に遥かに劣っている。

「……仕方がない、この海域を離脱しよう」


「ええ!?しかしマダガスカルは!?英軍30万人が上陸したという情報がありますが助けなくてもよろしいのですか!?」


「ドイツ、イタリア、ヴィシー軍は合わせて10万程度だが5万のドイツ軍は最新式の装備だ、敵だって30万をすべてぶつける事は島の地理的には不可能、少なくとも3ヶ月は持ちこたえるだろう……今は温存と援軍が必要だ、我々は援軍を護衛する必要があるのだ」


「…はい」


「提督ー!!!左舷上空!日本の偵察機です!!」


「なに!?」


その頃、南雲機動部隊はマハジャンガに近づき索敵機を送りこみイタリア海軍の姿を確認すべく偵察を行わせた。機種は艦上偵察機『彩雲』、大鳳から発艦したものである。

「敵大部隊見ユ、空母2、戦艦2、その他18」


「大島大尉!!後方上空敵機です!!」


「そうか、イタリア軍の戦闘機など振りきってみせるさ!!」


彩雲は轟音を唸らせ、加速をしてゆく。

イタリアの艦上戦闘機はRe.2001、最高速度は542km/hと零戦よりも低速であった。当然彩雲が全力を出し最高速度で飛べばあっさり振り切る事ができる。大島大尉は600km/hを越える速度で彩雲を飛ばしイタリアの艦載機を振りきった。


「旗艦に発信!我に追いつくレジアーネなし!」


「了解!!我に追いつくレジアーネなし!」


あまりにあっけない勝負であった為、大島大尉機からはそう発信されるが母艦に戻ると余計な事を伝えんでもよいと叱られたらしい。これは異なる歴史を歩むこの世界での彩雲の逸話であった。


しかし、南雲機動部隊は敵の位置を掴む事に成功した。

「長官!」


「…第一次攻撃隊、発進!続き第二次攻撃隊の発進準備にかかれ!」


「了解!!」


日本とイタリア、共に海軍は強力である。

しかしイタリアは貧弱な工業力、士気の低さ、そして最近の戦略物資の不足によって満足な行動が行えずイギリス軍を相手に苦戦、北アフリカ戦線でもいるだけで役にたたないものであった。それでも東部戦線では活躍しているらしくこのマダガスカルでもイタリア軍はそこそこの活躍を見せている。



大きな損害を被ったとはいえ連日の海戦でイギリス海軍を追い出す事に成功したのである。その分今インド洋にいる艦隊は消耗しきった艦隊であり艦艇の数でもイギリスの輸送船団を護衛する南雲機動部隊に劣るものであった。



そもそも航空機の性能に差があった。

イタリアの海軍航空隊はかつてのドイツ海軍航空隊に毛が生えた程度でしかなく日本やアメリカのように本格的な艦載機は持っていない。つまりこの海戦は例によってイタリアの惨敗は確定していた。


たとえ攻撃する側が日本ではなくアメリカやイギリスだとしても結果は変わらない、消耗しているかつ装備でも差をつけられているイタリア軍に勝ち目はなかった。


「距離2万に敵影を確認!!」


「まずい!!日本の攻撃隊だ!!!」


(……相手が日本でなくても…結果は同じだろう。所詮ロクな準備もせずに戦争に突入し無駄に消耗しているイタリアの軍事力など…この程度なのだ……)


イアキーノ大将は既に諦めていた。

しかし最後まで祖国の為に戦うのが軍人、イタリア海軍は圧倒的に劣勢でありながらも迎撃機をあげたのであった……っが日本の零戦やアメリカのF6Fにも劣るイタリアの艦上戦闘機の運命は決定していた。


「後方上空!!ゼロだ!!」


対戦闘機戦で苦戦するのに対攻撃機戦でもイタリア軍は苦戦した。

雲龍と天城から発艦した攻撃機は新型の流星である。流星の最高速度はRe.2001に匹敵し巡航速度も速めである。ましてや十分な護衛つきであり撃墜は困難であった。



イタリアは決して技術がないわけではない。っが根本的な何かが欠けていた。共に国力が低い国同士ながら日本は満足な装備をそろえる事に成功しイタリアはなんとか機動部隊の編成までこぎつけるも満足な装備とはいえなかった。その結果、アメリカやイギリスの機動部隊ならまだしも電子技術などがその2国に比べて劣っている日本にさえ、イタリアは負けてしまったのであった。



爆装、雷装した流星、さらに大鳳艦載機の彗星と九九式艦上爆撃機、艦上攻撃機「天山」も殺到しイタリア軍空母2隻は戦没、さらに駆逐艦1隻を撃沈されてしまった。


日本の損害は航空機18機のみである。

イアキーノ艦隊は撤退する、安全な地中海へ向けて……っが。


「ううっ!!!」


「何事か!?」


「敵の潜水艦でしょうか?雷撃です!!!」


「何!?…うぅっ!!!」


複数の日本軍潜水艦から雷撃を受け戦艦「ローマ」は数時間後に沈没した。南雲中将はその後、南アフリカまでイギリス船団を護衛、そこで休息をとる。

2日後には「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」「翔鶴」「瑞鶴」を中核とする北村中将の機動部隊、山口多聞中将率いるそれ以下の航空母艦による機動部隊が次々と集結、日本海軍の主力艦隊は連合軍のあらゆる基地に到着し次のアメリカ、イギリスなどとの共同作戦の準備を進めていた。



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