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第26話.対独宣戦布告セリ

昭和19年も終わろうとしている頃、この頃ドイツ軍はまたしてもソ連軍の冬攻勢に悩まされなんとか持ちこたえようとしていた。しかしソ連軍は前年に比べて強くなっていた。

新兵器の配備というのもあるが連合国の支援がより活発になりソ連に再び活気が見え始めたのだ。今回の冬攻勢では見込み、ソ連軍はモスクワ付近までドイツ軍を押し戻す可能性があった。


赤軍はそれこそ根こそぎ動員を行い2000万人以上に銃を持たせて敵中へと突撃させた。そんな赤軍は満州ルートで連合軍の支援をうけておりさらに強大化してゆく事になる。

そんなソ連軍を指揮するのはやはりこの男、ゲオルギー・ジューコフ元帥であった。この男は自軍の損害を考えずいかなる犠牲を払ってでもドイツ軍に攻撃をし掛けドイツ軍を悩ませた。


なんたってソ連軍はドイツ軍の何倍もの兵力をもっているのである。資源も豊富で最近になって連合国の援助も開始されさらに補給線が延びきっている事からドイツ軍はこの年から次第に東部戦線で不利になってゆく。


さらにパルチザンの動きも活発で線路が破壊されただでさえ不足している物資が届かないという事もあった。ドイツ軍は独ソ戦で始めて大敗するのだろうか?


一方マダガスカル島ではドイツ軍を中心とする枢軸国軍が連合軍を島の南へと押していき翌年には全島を占領しそうな感じであった。一方ロンメルのアフリカ軍団はエルサレムを目指すもイギリス軍の激しい抵抗に遭い後退を余儀なくする。以降こちらの戦線でもドイツ軍は守勢に回る。



この男はやはり怒っていた。

「最近進撃速度が衰えたはおろか、負け始めているではないか!!!」

ヒトラーは側近達に向って怒鳴りつける。


「それはおそらく、戦線を拡大しすぎた事とアジア、太平洋における戦いが終結した事により連合国に生まれた余裕のせいでしょう」


それがメッケルの回答であった。

ヒトラーは怒り狂ったようにメッケルら側近に命令をする。

「なんとしてでも!!東部戦線では来年のハルまで持ちこたえるように!!マ島部隊へは来年の1月までに攻略するように!ロンメルへも援軍を送るから来春までにはエルサレムを攻略するようにと伝えろ!」


「はっ!」


「くそぉ……しかし妙だ。何故日本は参戦してこない?そろそろ来てもいいはずだ………」


彼が奇妙に思うのも不思議ではない。

そろそろ参戦してきてもよさそうな日本がいつまでたっても宣戦布告をしてこないのだ、そこでヒトラーは考えた。向こうからこないのなら自分からいけばよいのではないかと?


その後メッケルと相談して対日宣戦布告について議論を行うもメッケルは現状で限界なのだから今の状況を打開するまでは対日宣戦布告は行わないほうがいいと警告、その他大臣達も思いとどまらせようとするがヒトラーは1月1日、日本を始とするアジア諸国に対して宣戦布告を行った。


1月1日といえばお正月、しばしの平和を味わっていた日本ではお休みムードであった。しかしドイツに宣戦布告をされた事は新聞やラジオで報じられた。


正月をトラック諸島で送っていた北村も新聞を見てびっくりしていた。

「長官ー!!」


「どうした?佐近?」


北村の下に佐近中佐が現れる。

「これを!」


「ん?……対独宣戦布告セリ?……ドイツから仕掛けてきたか……」


「長官!」


「大丈夫だ、ドイツはまだ太平洋には現れない。それに我が国も正月が終われば宣戦布告を行う予定だった」


「っという事は?」


「2日ぐらい早く対独戦が始まったって事さ、まあ正月3が日はゆっくり休めという命令だ、お言葉にそって生活してよう」


「はっ!」


海軍は1年近く、平時の気分を味わっていたうえ、今度の戦場はヨーロッパでありかなりの距離があるのでこの時点では余裕をかましていた。陸軍も同様で自分達の基地からは遠いので余裕をかましていた。

その分、この約1年、日本は対独戦に備えて準備を行っていた。


まず機動部隊の強化である。

昭和19年に竣工した航空母艦は「大鳳」、雲龍型航空母艦の「雲龍」「天城」「葛城」「笠置」の4隻、改装空母である「信濃」と「伊吹」の2隻、札幌型航空母艦の「札幌」「小樽」の2隻であった。

現在は雲龍型と改大鳳型の建造を進め満州では札幌型航空母艦の建造が密かに行われていた。


それ以下の艦艇については松型駆逐艦などの戦時急造艦が大量に建造され始めていた。

なお札幌型航空母艦と伊吹にはドイツと戦う事を想定してある航空機が搭載される事になる、それは「東海改」であった。大型機ゆえ搭載機数は圧倒的に減ってしまったがUボート対策という事でこれは必要不可欠な存在であった。



通常の母艦搭載機も新型機が搭載されている。

艦上戦闘機は零戦五二型が主力でありながら赤城、加賀、飛龍、蒼龍部隊のみ新鋭艦上戦闘機『烈風』に交換された。


艦上爆撃機は九九式艦上爆撃機からより高性能な彗星に交換され(ただし彗星の稼働率は九九式よりも低いので予備として九九式が配備されている、また生産が追いついていないので九九式は未だ現役)攻撃機も天山に交換された。


さらに偵察機として彩雲も雲龍型などの新鋭空母に搭載された。

時代が進むごとに日本軍の航空機も進化している、局地戦闘機「雷電」や「紫電」が量産され最近になって紫電改の生産も開始、一部の部隊に試験的に配備されはじめている。陸上攻撃機には銀河が新たに配備された。


陸軍でも四式戦闘機「疾風」の大量生産を行い既に1000機は越えていた。さらに敵部隊や敵陣地への攻撃の為にある戦術爆撃機が配備されはじめる。四式重爆撃機「飛龍」である。

飛龍は航続距離がながく機体も頑丈で運動性能も高く爆弾を搭載していなかったら曲芸飛行すらできるとも言われている。ただし爆弾搭載量が低いという欠点があった。


そして陸軍では三式戦闘機「飛燕」の首無し機に空冷エンジンを搭載した五式戦闘機が開発中であった。速度は低いが後々四式戦闘機と共に活躍するだろうと期待されている戦闘機であった。もちろん艦船や航空機だけではなく陸上兵器についても進化している。



日本は対独戦に備えて根こそぎ動員を行い陸軍人員は550万に上っていた。このうち120万を本土及び外地防衛に、80万人を満州へ、200万人を北アフリカ、残り150万人を欧州戦線へ送り込むつもりであった。

最も急造兵士が多くであり戦力になるかは微妙でぶっちゃけていえば連合軍の予備兵力的な扱いである。それでも少しでも戦力になるべく日本陸軍はなるべく強力な兵器を揃えた。



この時点では三式中戦車の生産が軌道に乗り主力化が進んでいた。自走砲や砲戦車の数も大分充実してきておりいくつかの機甲師団が創設されるまでに至った。


火砲についてもなるべく新しくて強いものへの交換が急がれ、そしてまったく新しい兵器の配備も始まった。


四式二〇糎噴進砲や四式四〇糎噴進砲などのロケット弾兵器が少しずつではあるが配備が進んでいた。史実のようにムダな戦いもなく資源の不足という事態も最小限に留まり空襲による工場への被害もなかった事からタ弾などの生産も進んでいた。


タ弾とは簡単に言えば成形炸薬弾であり明治期の四一式山砲でさえ100mmの装甲を貫けるほどの威力を秘めている。九一式十糎榴弾砲を用いれば120mmもの装甲を貫通させられる、要はティーゲルでも撃破できるかもしれないという事である。


ティーゲルの装甲は100mmだから確実に撃破できるではないかというとそれはNo、火砲を撃つ前に戦車に攻撃されたり踏み潰される可能性もありしかも最近150mmという怪物のような装甲をもつケーニヒス・ティーゲルが登場した為である。


ケーニヒスティーゲルを撃破するには四一式山砲外装タ弾I型しかない、それならば300mmほどの装甲を貫通させられるが数がないのが欠点であった。

海軍と航空兵力は充実しつつも地上兵力に少し不安が残る日本陸軍…これから長く苦しい対独戦を体験する。



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