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第23話.ハワイ沖航空戦

昭和18年9月1日……


運命の昭和19年まであと4ヶ月……この頃になると日本海軍はよく航空機を飛ばしたり駆逐艦を航行させたり潜水艦を活発に太平洋に展開させたり活発に活動していた。

攻略作戦こそないもののアメリカ海軍を警戒しての行動であった。


最近になってポートランド造船所などの西海岸の造船所などでパナマ運河攻撃後に損傷した艦の修理が地道に行われ既に航空母艦3隻が戦列に復帰しているという。


この3隻が目指す所を山本五十六連合艦隊司令長官はハワイではないかと予想していた。

占領目的ではなく航空攻撃による嫌がらせである。3隻分の艦載機があるば十分基地や停泊中の艦艇にダメージを与えられる。それに北村艦隊は現在太平洋ではなくインド用でイギリス東洋艦隊の相手をしている為、ここハワイ、真珠湾には飛鷹型2隻と大鷹型2隻、金剛型戦艦3隻、巡洋艦6隻、駆逐艦10隻がいるだけであった。



ただし……もし敵が来た場合の為に日本海軍は秘密兵器を用意していた。

それは零式艦上戦闘機五二型である。現在ハワイには75機の零戦五二型が配備されている。


ただしアメリカ軍も日本の零戦に対抗すべく新鋭機を送り出そうとしていた。F6Fヘルキャットである。

コルセアとは違い未熟者でも簡単に操れる事から9月までに日本機と戦うべく、機動部隊の主力艦上戦闘機として生産され実戦部隊に配備されていた。


艦隊を指揮するのはレイモンド・スプルーアンス中将、かつて日本とも戦い敗れた男で今度こそ日本に痛い目合わせてやると復讐心に燃えていた。


86機も搭載できる空母レンジャー、そして36機を搭載できるサンガモン級2隻を中核とする機動部隊はサンディエゴを出撃、真珠湾を目指して危険な航海を行う……しかし途中で思わぬ戦果をあげる。

「こちら海鷲1、ハワイ島沖100kmにて敵機動部隊発見!空母3、その他20の大艦隊!」


哨戒を行っていた一式陸上攻撃機が米機動部隊を発見したがその直後であった。

「機長!!後方上空敵機!!」


「なに!?」


ヘルキャット2機が増槽を捨て一式陸攻へと向ってくる。

「くそぉ……俺達のハワイ付近を堂々と飛びやがって……日本機など全部叩き落してやる!!」


彼はそう叫びながら照準を合わせ、一式陸攻に向って攻撃を行った。

一式陸攻の後部銃座はグラマンへ向って射撃を開始する、しかしなかなか当たらない、命中率ははてしなく悪い。


「無駄な足掻きだ!!!」

このアメリカ人パイロットはエンジンに向って攻撃する。

狙いどおりエンジンに命中、翼にも命中して一式陸攻は燃料を噴きながら飛んでいた。

「左エンジン被弾!!」


「火は出たか!?」


「いえ!!まだ煙のみ……機長!!火が!!!ダメです!高度が落ちていきます!!」


「うぐぐ……着水…着水!!!」


「ダメです!!」


こうしてまた何人か、太平洋に若者が散る。

「ふぅ……ベティなど敵ではないな………」


「大尉!!後方よりゼロが6機!!!」


「なに!?」


2機は零戦三二型の銃撃をうけるもなんとかそれをかわす。

ここに始めて零戦とF6Fの空中戦が行われた、時に9月1日、ハワイ島沖東に100kmの地点である。


数で劣る彼らは苦戦する。

「くぅぅ…!!!マーク!!!」


マークという男は零戦に撃墜される、幸い脱出するが空には自分1機のみとなった。非常にまずい事態である。しかし……味方のヘルキャット8機が到着、形成は逆転する、一方の日本軍はこのヘルキャットに対して物凄く驚いていた。

「よく見たら新型機か……各機に告ぐ!!敵は新鋭機だ!どれほどの性能かはわからんが注意して戦え!」


零戦はその運動性能を生かして戦おうとする。

しかし……その性能を引き出す前に上空からヘルキャットが襲ってきて零戦は撃墜されていった。

「くそぉぉ……っ!!」


ようやく隊長が1機を撃墜する、しかし休む間もなく後方からグラマンは襲ってくる。彼バレルロールを行った後左へ急旋回を行い攻撃を回避した。


しかし……

「くたばれ!!!!ジャップ!!!!」


1機が食いついてはなれず、隊長機に攻撃を行う。

6挺の12.7mm機銃から放たれる無数の銃弾は零戦に吸い込まれていく、撃たれ弱い零戦は残骸を撒き散らしながら破壊されていき、右翼が捥げ、やがて激しく炎上する。


オアフ海軍航空隊司令部……

「海鷲2号より入電、我ノ戦闘機隊敵ト交戦中、敵ノ新鋭機ニ苦戦中」


「新鋭機!?噂のグラマンの!?」


「間違いない、グラマンの新鋭機だ!!」


さらに情報は入ってくる。

「海鷲2号よりさらに入電!敵機動部隊接近中!至急迎撃サレタシ!」


「すぐに基地航空機を出撃させよ!」


「了解!!」


ここ、ハーバーズポイント海軍航空基地には現在日本海軍航空隊の精鋭が集結していた。主力艦艇が遠征中なのでハワイを守れるのは僅かな艦艇と航空隊のみである。そう、ハワイの運命は航空機部隊に委ねられているのだ。


「今回の任務はハワイ諸島へ近づきつつある敵機動部隊の撃滅だ、私から事新しく言う事はない、オフア海軍航空隊の威信にかけても、大日本帝国海軍の威信にかけても、この迎撃作戦は絶対に失敗してはいけない、諸君らの健闘、無事を祈る」


「敬礼!!!」


「うむ、では解散!出撃せよ!!」


こうして、ハワイ諸島の島々から陸海軍180機以上の航空機が米機動部隊を撃滅せんと出撃、ハワイ上空に日の丸を描いた航空機が堂々と飛行する。対するアメリカ軍もレーダーによりその編隊の接近を知る。

「レーダーに感あり!大編隊です!!」


「日本軍が本格的な迎撃を始めたようです、航空兵力では我が方は劣ります、これでは艦隊が全滅させられる可能性もあります」


「提督!」


スプルーアンス中将に決断が迫られる。

彼は帽子を少し手で動かし、後ろを振り向いてこう言った。

「戦力比からしておそらく勝てはしない、しかし今から引き返した所で敵には既に捕捉されている事には変わらず航空攻撃は避けられないものであろう、全艦へ対空戦闘用意を命ずる」


「了解!」


「対空戦闘用意!!」


スプルーアンス中将は再び前を見る。

その表情はいつになく厳しいものであった。

(…これで、栄光ある合衆国海軍の歴史の序盤が終わる、我々が大損害を被るという形で……しかし、パナマ運河の修理は順調に進んでおり翌年には再び使えるようになる、そしてその頃には大西洋で既に我が海軍は復活している、その時こそ合衆国海軍の新たな歴史の幕開け、日本海軍勝利の歴史の終わりであろう…………最も、その時まで合衆国が日本と戦っていればの話だ……おそらくこのままいけば日米は講和するだろう、私としてもこれ以上の戦闘は無駄な犠牲を払うだけである…日米講和には賛成だ)


「提督!敵機来ます!!」


「うん!!」


米艦隊付近では零式艦上戦闘機五二型vsF6Fヘルキャットの激しい空中戦が行われていた、双方共に新鋭機を繰り出し空中戦のレベルはまた一歩、レベルアップしていったのである。

しかし零戦は開戦以来の航空機と比べて最強の相手と戦っていた空中戦の結果は日本海軍航空隊の技量が高く、アメリカ海軍の技量がそれに劣っていたが機体の性能の影響で痛み分けに終わった。


その後、日本軍は駆逐艦1隻を撃沈、護衛空母1隻を中破させ重巡2隻を小破させるた。大した戦果ではなかったが米海軍を引き返させる事には成功、ハワイ防衛という目的は果たされたのである。

しかし、トラック島の連合艦隊司令部にいる山本五十六は厳しい表情で1人目を瞑り、腕を組みながら苦悩していた。

(……今回は防衛に成功した、しかし次回はわからん……とにかく、いくら今日本が有利に戦っているとはいえ、根本的な国力が違う。日本のような弱小国が米国に勝つなんて事はなにがどうあっても変わらない……ここから先が難しい、いかに米国と戦って講和に持っていくか、そして我々が暴れ回ったせいでイギリスへの支援が疎かに、その影響で勝ち進んでいるナチス・ドイツをどうするか……難しい、俺の頭では考えられないかもしれない)


「…長官」

そこへ現れたのは宇垣参謀長であった。

「参謀長、どうした?」


「これを」


「…これは?」


それは新聞であった、スエズを確保したドイツ軍の支援の下、イタリア海軍がスエズを越えてマダガスカルへ、劣勢のヴィシー・フランス軍を助けるべくマダガスカル島へ艦砲射撃を行った後イギリス海軍と対決、結果は痛み分けに終わったもののアフリカ軍団の一部兵力が上陸を開始、連合軍と交戦を開始したという内容であった。


「マダガスカルを確保…っか」


「長官、もしマダガスカルを確保されれば万が一、我が国と開戦になった場合、あそこにUボートの基地が建設され我が軍は…」


「インド洋の制海権を完全に失う、我が海軍は対潜能力が低い、あっという間に全滅するだろうな」


「………このままマダガスカルを放っておいてよいのでしょうか?」


「よいもなにも、今は形だけ同盟国だ、無駄な攻撃は三極化に繋がるだけでそれは日本にとって圧倒的に不利な形勢を自ら作ってしまうだけだ。まあ今は、敵であるが連合軍を応援するしかないだろうな」


「長官…」


「…止むを得ない、第一日本はもう限界だ、今でさえ攻撃を受けたら戦線を維持できるか疑問だし補給線も延びきっているからこれ以上の作戦行動は難しい。私の誤算だったよ、FS作戦なんて馬鹿げた事などしなかったほうがよかったのかもしれない」


「失敗…っというわけですな」


「ああ…」


この時、はっきりしたのであった。

日本軍は戦術面で勝ち戦略面で負けた、山本はFS作戦を行いフィジー、サモアまで進出してしまった事を後悔していた、太平洋のほとんどを支柱におめた日本軍だがこれを維持するほどの力はない。


まさに、大失敗である。


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