第19話,フィジー・サモア攻略戦
昭和18年1月22日夜……トゥトゥイラ島ダニーデン沖…
第2水雷戦隊…田中頼三少将。
「今何時だ?」
「22時です」
「う~ん、おっ、そろそろだ」
「面舵30度!!!」
「おもーかーじ!!」
近頃、サモア付近にも日本海軍の艦艇が頻繁に現れるようになった。
アメリカ軍も巡洋艦や駆逐艦を繰り出し、日本海軍の水雷戦隊に対抗した。
第67任務部隊カールトン・H・ライト少将。
彼は日本軍のサモア攻略を防ぐべく、日本軍の水雷戦隊を撃滅せよとの命令を受け田中の第2水雷戦隊に勝負を挑もうとしていた。
重巡「ミネアポリス」……
「我々は日本軍のサモア攻略を阻止すべく、敵の水雷戦隊を撃滅しなければならない。日本海軍は強いが弱点がまったくないというわけではない。奴らは完全なレーダーはないが我々には完全なものがある。つまり、単純な砲撃戦ならば奴らよりも我々のほうが有利、海戦は敵の位置を早く知ったほうが有利なのだ、それは諸君らもわかっているだろう」
「ふふふ……開戦から1年と少し、今こそ合衆国海軍の名にかけて、今までのお返しをする時ですな。提督」
ローゼンダール艦長は笑みを浮かべながらそう言う。
アメリカ海軍の軍人達は皆、開戦以来負け続きである事を悔しがっており戦うチャンスがくれば今度こそ撃滅してやると立ち向かう。ところが日本軍艦船に損傷はあたえるが結局海戦には敗北するというのがオチであった。
はたして今度はどうであろうか?
第2水雷戦隊旗艦・長波 艦橋……
「……ん!?」
「提督!」
「おいでなさったぞ!!」
「来たなアメリカ!!行くぞ!!」
最初に攻撃を始めたのはやはりレーダーが発達しているアメリカ軍であった。
日本軍の水雷戦隊は凄まじい砲撃に晒され高波に砲火が集中するもすぐに反撃態勢を整え、艦砲を放ち魚雷を発射する。
日本軍の酸素魚雷は航跡を目立たせずアメリカ軍艦船に向って進んでいった。
「ミネアポリス、艦首に魚雷1本命中!!」
「いいぞ!!もっと行け!!」
「ニューオリンズ!!左舷前部に魚雷1本!!」
夜戦が得意である日本海軍は次々と魚雷や砲弾を敵艦に当てていった。
「く…くそぉっ!!!合衆国海軍の威信にかけても!!ジャップになんか負けるな!!!」
ライト少将が艦橋でそう叫ぶ。
しかし時既に遅し、アメリカ海軍は1隻を沈められ3隻が大破、対して日本軍は駆逐艦「高波」が沈められた程度であった。
「高波の乗組員の救助を急げ!!それが完了次第、トゥトゥイラ島に艦砲射撃を開始する」
その後、7隻の駆逐艦によりトゥトゥイラ島に艦砲射撃が加えられた。
これによりさらに待機中のアメリカ艦隊をおびき寄せる、そして………
「突撃!!」
「「「ああああああああ!!!!」」」
「に、日本軍だ!!!」
陸軍8000人、海軍陸戦隊3000人が上陸を開始、さらにフィジー、ビティレブ島にも陸軍5260人が上陸した。特にビティレブ島の戦いは山岳戦であった。
「射っ!!」
ドン!
「着弾……今!!!」
「よし、突撃!!!」
四一式山砲が砲撃を行い、九七式軽装甲車と歩兵が前進する。
しかし、フィジーは放置される。それよりもサモアのほうが重要でありそちらのほうを死守する必要があった。1万以上の大軍で上陸してきた日本軍のサモア攻略を阻止すべく、アメリカ軍は機動部隊を送り込んだ。
空母3隻からなる機動部隊のうち、3機のドーントレスが日本の輸送艦2隻を発見、これを撃沈した。さらに陸軍航空隊も支援を行い駆逐艦1隻と陸軍の輸送艦1隻を血祭りにあげる。
これに対して日本海軍は飛鷹、隼鷹、千歳、千代田を主力とする機動部隊を派遣、指揮官にはそれまでほぼ空気同然であった南雲忠一が選ばれた。
「ようやく俺の出番か、最後の敵機動部隊を撃滅してやる」
「長官、索敵4号より報告、敵大部隊見ユ、空母1、その他15」
「空母1…そんなわけがない、アメリカ軍は空母をどこかに隠しているはずだ」
「だとしたら…?」
その頃、フレッチャー中将率いる米機動部隊は……
「索敵機の報告によりますと敵の空母は4隻、しかし赤城含む例の6隻よりも小型の空母ばかりです」
「だとしたら…やれるかもしれないが……不安だ!」
フレッチャーの脳裏には嫌な予感しか浮かばない。
それも仕方ない、米海軍はずっと予想外の作戦の前に負けてきたのである。そして…彼にはもう一つ疑問があった。
(一体、北村の艦隊はどこだ?……奴らがこの海域にいないのは幸運といえば幸運だが…どこだ?ハワイか?)
現在真珠湾は日本海軍の手によって重要な拠点になっている。
補給の為に真珠湾へ向った可能性も高い…がそれならいっその事トラック諸島などにいったほうが早い、そんな事は考えにくい。
しかし…北村艦隊は今、ダッチハーバーに向っていた。
それはアメリカ軍によるアリューシャン列島奪回作戦を阻止する為であった。攻撃は成功し20機を失いながらもダッチハーバーは大きな被害を被りアメリカ軍はアリューシャン列島奪回作戦を延期せざるを得ない状況に陥った。
さらにインド洋では龍驤、祥鳳、瑞鳳、大鷹、雲鷹を中核とする機動部隊がセイロン島を再攻撃、イギリス東洋艦隊はまたしても大きな損害を被る。
10隻以上の航空母艦を保有する日本海軍は北はダッチハーバ、西はセイロン、南はサモアにまで機動部隊を展開させていた。現在のアメリカ海軍にこれほどの機動部隊を相手に戦うほどの能力はないに等しい。
その頃、南雲中将率いる機動部隊は攻撃隊を発進させる。
攻撃隊が向う先には航空母艦『レンジャー』がいた、レーダーで攻撃隊の接近を察知したアメリカ軍はすぐさま直掩機を向わせ同時に後方の護衛空母2隻からも攻撃隊を発進させた。
「…日本機を発見!!1時の方向!!」
「な…なぁ、俺達ここで死ぬのか?」
「馬鹿な事を言うな!…あいつら日本人だって飛行機から降りれば俺達と同じ街の人間なんだよ、同じ恐怖を味わっているはずさ…行くぞ!」
零戦三ニ型とF4Fワイルドキャットが空中戦を始める。
ワイルドキャットの12.7mmは防弾はされていないに等しい零戦をあっさりとし止める…っがワイルドキャットは零戦に運動性能や上昇力、加速力で劣りそれに重なって日本海軍航空隊の精鋭パイロットの腕により、零戦の撃墜には成功するが自分達も多数を撃墜されてしまう。
「後方よりグラマン数機襲撃!!」
「よく狙って撃て!」
「はい!!」
それでも零戦の猛攻撃をかわしてきたワイルドキャットは日本軍攻撃隊に迫る。
足の遅い雷撃機は格好の餌食である、次々と落されてゆくがそうはさせまいと零戦も背後からワイルドキャットを狙って攻撃する。
「ようそろ………射っ!!!」
3機から魚雷が放たれ、1発はレンジャーの右舷前部に命中した。
「被害状況を確認せよ!!」
「左舷前部に被雷!艦内に浸水中!乗員に若干の死者と負傷者が出ましたが多くの者が無傷!現在浸水を食い止めるべく作業中です!!」
「くぅぅ……このままでは!!」
フレッチャーは泣き叫びたくなるような気持ちになっていた。
そして悟った、おそらくこの海戦に負けると……
「提督!!さらに敵の雷撃機が来ます!!」
「馬鹿者!!回避行動をとりつつ撃ち落せ!!!それが基本だろう!!」
「しかし!!」
「魚雷来るぞー!!!!」
「取り舵一杯!!!」
その後も日本海軍航空隊の猛攻撃は続いた、しかしアメリカ軍も負けてはいなかった。
翌日まで続いたサモア海戦は日本側に空母『千代田』沈没、駆逐艦1隻中破、軽巡洋艦1小破、一方アメリカには空母1大破、空母1中破、重巡1、駆逐艦1小破という結果に終わり日本海軍は空母1隻を撃沈されたものの損害はアメリカ軍のほうが大きかった上、日本軍はその後も残りの航空機で航空支援を行い戦略的にも日本軍の攻勢を食い止める事ができなかった為、この海戦は日本の勝利であった。
サモア及びフィジーは建国記念日前には陥落、日本が占領した。
しかし日本は補給線が延びきり流石の海軍航空隊も連戦により消耗しており補充を行う必要があった。一方アメリカもパナマ運河が破壊されおまけに残りの海軍力も一連の海戦で消耗、陸海軍の航空隊は大きな損害を被りどちらもまともに戦闘できない状態となり、太平洋戦線は膠着した。
一方、ドイツ軍は再度スエズ運河に迫っていた。
イギリス、ドイツ共に予想では2月中にスエズ運河はドイツのものになるとしていた。そして今の状況からそれは現実のものになりそうだった。今のイギリス軍が行っている事は最後の悪あがきにすぎない。
北村とメッケル、この2人の存在によって歴史は大きく変わってしまった。
そして、第2次世界大戦はさらに混乱の道を歩む………
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