第15話,作戦「N」発動
9月1日、ここガダルカナル島の飛行場には零式艦上戦闘機や一式陸上攻撃機など、多数の海軍機で埋め尽くされていた。え号作戦を行う為である。
作戦「N」とはアメリカ軍の拠点、エスピリトゥサント島の空襲及び占領作戦である。
ガ島基地から飛び立つ陸海軍攻撃隊で島を、井上中将率いる機動部隊でアメリカ海軍の艦隊を攻撃後、今村均百武中将率いる上陸部隊2万を上陸させ同島を占領、拠点化する。
米太平洋の機動部隊が壊滅状態の今、まさに作戦決行の時であった。
ニューカレドニア方面へは空母6隻の北村艦隊が攻撃をしかけて後、今村均率いる5万の上陸部隊を上陸させこれを占領する。
指揮官の今村は第16軍司令官としてジャワ島攻略戦を指揮、イギリス、オランダの油断もあったがわずか9日間で10万のオランダ、イギリス軍を降伏させた。
しかしそんな事よりも彼は占領地での軍政・指導能力がすばらしく戦後になっても他の陸軍軍人の評価が低い傾向にある中、とても高く評価されている。
そんな彼はニューカレドニア攻略戦で軍を指揮する事になった。
そんな作戦「N」、Nはニューカレドニアとニューヘブリデスの意味があるがこれはアメリカを混乱させるための名前である。大体検討はついてもどちらを攻略するかに迷ってしまう、そこで日本軍は陽動作戦をしかけるのである。その最初の目標がニューヘブリデス諸島最大の島、エスピリトゥサント島である。
ガダルカナルより800kmの地点にあり結局は長距離飛行ではあるものの零戦二一型より航続距離が短くても大丈夫な程度であった。そこで今回投入されるのは新型の零戦三二型である。
航続距離こそ減ってしまったもののガ島からエ島までは800km、三二型の航続距離でも問題にならない程度の距離である。200kmの違いは大きいものだ。
今回が初陣の三二型、評価は小福田租少佐によると「二号零戦は高速時の横転操作が軽快なので空戦で有利という事らしい。20mm機銃の装弾数も増え速度、上昇力、上昇限度、急降下速度などあらゆる点で二一型の上をいっていた。零戦にしては航続距離が短いという欠点もあるが。
そして今、零戦五二型が開発中である。
戦場が三二型でも運用できる範囲になった為、二二型の開発は行われずさらなる性能向上を求め五二型の開発が開始されたのである。陸軍では一式戦闘機一型及び二型、二式複座戦闘機、九七式重爆撃機、一〇〇式重爆撃機などを用意していた。
この日本の総力を挙げた作戦はシーレーン遮断の為、また戦争遂行の為にも絶対に失敗できない作戦であった。
ガ島…海軍航空隊基地。
「やあ、最近どうだ?」
「いやあ、だんだんと仲間が減ってきて、俺はいつ死ぬんだろうと思うばかりですよ」
「まあ、心配するな。死ぬときは一緒だ。それより今日だな。新型の零戦で大作戦に参加するの?」
「そうですね。航続距離が短いというのが欠点でしたが、今回なら大丈夫だという事で……」
「かぁぁぁ、楽しみだ!グラマンだろうがカツオブシだろうなんだうがかかってこい!!」
グラマンやカツオブシとの対決が待ち遠しい彼は南條中尉、開戦前から戦っている歴戦のパイロットである。
「腕がなりますな!」
「おお!!」
「俺だってまだ3回目ですけど負けませんよ!!」
搭乗員の士気はとても高い、開戦以来負けなしでここまで来たからである。
その分油断という大敵も背後に隠れているのどがここの所日本の陸海軍は流石に勝ちすぎたせいもある為か一応油断はするなと兵士達に戒めている様子である。
「搭乗員集合!!!」
「おっ、いよいよですな」
「さあて、いっちょアメリカに痛い目あわせてやりますか」
攻撃参加者が一箇所に集められる。
ここで司令官からの説明を受け、攻撃について兵士達は詳細を知った。
「……という事である。諸君、死ぬ時は一緒だ、しかし今は作戦を完遂し日本を勝利へ導かなければならぬ。少しは命を大事にするように」
「「「了解!!」」」
「私からは以上!!諸君らの健闘を祈る!!解散!!総員搭乗せよ!!」
解散命令がでると、搭乗員達は手を回し叫びながら愛機のほうへと近づいていった。
「回せー!!!回せー!!」
「回せー!!」
やがて滑走路中がエンジン音でうるさくなる。
明灰白色、濃緑色の機体が勢ぞろい、これが開戦以来目だった敗北がない日本海軍航空隊である。彼らは勝利を信じて南太平洋の大空へと舞い上がる。
一方の陸軍航空隊も負けていない。
「海軍なんかに負けるな、我が陸軍航空隊も全力を挙げて目標を攻撃する。以上、解散!!」
「回せー!!!」
隼が、屠龍が、その他の航空機も次々と離陸していきやがて海軍航空隊と会合、かなり大規模な編隊になった。もちろんこれが奇襲攻撃になるわけがなくアメリカ軍はレーダーで攻撃隊の接近を察知していた。
「おそらくガダルカナル及びその周辺の島から出撃したものでしょう」
「敵の目標は?」
「エスピリトゥサントかエファテしかないでしょう…そうか、暗号のNはニューヘブリデスか」
Nがニューヘブリデスかどうかは賛否両論であった。
別な場所、ニューカレドニアのヌーメアではそこで釘付けにされているニミッツ大将と参謀達が話しあいをしていた。
「陽動かもしれんぞ?本当はニューカレドニアなのでは?」
「しかし、奴らの航空機がどの程度の距離を飛べるかはわからないが流石にガダルカナルから発進してもあのニューカレドニアへの航空攻撃は機動部隊以外には難しいわけです、ニューヘブリデスには日本軍の侵攻に備えて8万の守備隊がおります、よく攻撃しなければ絶対に負けるのはわかっているはずだと思います。敵も先にニューヘブリデスを占領してそこから機動部隊と共同で航空攻撃をしかけてくるに違いありません」
「う~ん」
ニミッツはここの所まったく休めず、ただここヌメアに立て篭もっていた。
「くそ、暗号解読でニューカレドニアかニューヘブリデスなのはわかっている。どっちなんだ?」
その頃、攻撃隊は……
「もうすぐニューヘブリデスだ……」
「ようそろ!」
「……右30度敵機!」
日本軍攻撃隊の姿はレーダー、そしてカタリナによってすでに捉えられてた。
「カタリナです!……零戦が3機行きます!!」
カタリナに新型の三二型が襲いかかる。
零戦3機のうち1機は上空から奇襲をしかけるがカタリナは見事にそれを回避、ただの飛行艇で零戦に比べれば圧倒的に運動性能は劣るし速度も遅いがパイロットの腕はトップクラスだった。
「くそ!!ジャップめ!!」
その後も3機は攻撃を仕掛けるもカタリナは機体を揺らしたりするなどして弾を回避した。しかし限度があった。
まず胴体中央部に被弾、続いてエンジンに20mm機銃の弾丸が被弾して炎上を始めた。
「左エンジン被弾!!」
「くっ!!!」
「だめです!!高度が落ちています!!!」
カタリナは南太平洋に沈み浮いているのは残骸のみであった。
零戦三二型初のお手柄であった。
「やった!カタリナをやったぞ!!!」
さらに編隊はエスピリトゥサント島へ近づく、今度はアメリカ陸軍航空隊の迎撃があった。
「前方より敵機!」
「戦闘用意!!」
爆撃機の銃座に人が来る。
そして銃を構えいつでも戦える態勢になった。
「来た!!」
アメリカ陸軍航空隊は到着。
ここにエスピリトゥサント沖航空戦は始まった。南條中尉は増槽を捨てアメリカ軍機に攻撃をしかける、1機に火を噴かせそのままべつの機の腹の下をくぐるように降下、続いて上昇を開始した、ここで南條は敵機の正体を知る。
「カツオブシか!」
カツオブシとはP-39エアラコブラの事で評判はあまりよろしくない。ハリケーン以下とイギリスが言うぐらいでありお世辞にも成功作とはいえない戦闘機であった。零戦二一型との空中戦も経験しているが中低高度においては零戦に劣り苦戦を強いられた。このかわってしまった世の中でもその力関係は逆転せず零戦を相手にP-39は苦戦していた。
今日の相手は新型の三二型である。
「ど~れ……ついてこれるか?」
南條は発動機の出力を最大にし急加速を行った。
徐々にではあるがゆっくりとカツオブシとの距離は離れる、南條は後ろを見ながら呟いた。
「…だろうな」
彼はバレルロールを行った後、左へ機体を急旋回させカツオブシも追いつこうと旋回を始める、結果的に旋回戦で圧倒的に強い零戦がカツオブシの背後につくことになり南條きこれを撃墜した。その後の空中戦で陸攻2機、零戦1機が撃墜されながらもカツオブシに勝利しさらに進撃する、ところが。
「!?」
後ろから曳光弾が襲ってくる、彼はまた機体を旋回させ撃ってきた相手を確認する。
「……グラマン!海軍機か!」
今度の相手はF4Fワイルドキャット、すくなくともカツオブシよりは強敵で乗り方次第では零戦とも互角に戦える航空機である。最もこの世界においては勝利の波にのってしまった零戦を食い止めるほどの活躍はできなかったが。
「…くらっ!!えっ!?」
突然グラマンは降下を始める、キャノピーが赤く染まっていた。
何がと思って南條は上を見るとそこには隼が飛んでいた。
「畜生~!!陸軍に獲物を奪われたか!!」
その後、日本軍はエスピリトゥサント上空に到着、滑走路や兵舎などに向って爆弾が投下され、高射砲や基地航空機の迎撃を受けつつも爆撃作戦は成功し滑走路に穴が空いて少しの間滑走路が使えなくなる、また死者も200人ほど出てしまう、さらにその頃井上中将率いる機動部隊から攻撃隊が発艦しまたしても同島を攻撃、第1次、第2次、さらに少ないながらも連続出撃させられた搭乗員もいる中第3次攻撃も行われ日本海軍攻撃部隊は疲労を見せ始め損害も次第に大きくなってゆくがアメリカの重要拠点があるエスピリトゥサントは大損害を被りさらに翌日3時、陸軍2万が上陸、1週間の戦闘の末エスピリトゥサント守備隊は降伏、一方でエファテ島にも井上艦隊は襲撃し激しい空襲と艦砲射撃を行った末陸軍が滋養陸、こちらも激闘の末9日後アメリカ軍の降伏により戦闘が終了した。
ニミッツはエスピリトゥサント島守備隊降伏5日前に出撃を命令、アメリカ海軍は総力をあげて攻撃を開始しようとするもなんとそれは陽動でありニューカレドニア島ヌメアに180機以上の日本軍機が襲来、大和型戦艦も艦砲射撃を行いさらにニューカレドニア島に5万の日本軍が上陸を開始。
大東亜戦争は新たな局面をむかえる。
はたして今村中将は5万で8万のアメリカ軍を破れるだろうか?壮絶な陸戦は上陸作戦時から開始された。
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