第14話,中国参戦
その頃、前線から遥か遠く離れた東京にある首相官邸では佐々木首相が何か考え事をしながら座っていた。そこへ1人の男が訪れた。
「失礼します」
「や…山下中将」
「お久しぶりです」
そこへ現れたのはマレーの虎で有名な山下中将であった。
彼は現在、史実よりも早く創設された緬甸方面軍の司令官であった。史実では満州にいた彼だが今では日本軍が制圧したビルマ、つまりなにかあれば最前線になるところの司令官である。
そんな彼が激務の中佐々木の元を訪れたのも最近の連合軍の怪しい動きを伝えるためである。
「…すると、米英は今にも対中宣戦布告をすると?」
「その可能性、大です」
なんとアメリカ、イギリスが日本と講和、それによって連合国から見放され現在は日本が少しばかりか技術提供を行ったりなどの支援を行っているものの中立国である。
最近になって国共内戦が再発しそうな雰囲気もあるが比較的平和な時期が訪れていた。そんな中国に対し日本と講和をしたので見放した米英が中国に宣戦布告を行おうという動きが見られるそうだ。
「ええ、最近中国は我が国との密約により我が国の資源を陸路で輸送する事を認め海上と共に鉄道などでの輸送が行われています。それを米英は中国が日本に対して積極的に協力しておりまた日本も中国に対してなんらかの支援を行っているとしているようで。そこで日本を支援する中国を叩いて日本の戦争継続能力を削ろうという動きが見られます」
「つまり、米英から見れば弱い中国に妨害を加え我が国を困らせようというわけですな」
「そういう事です」
「う~ん」
佐々木は頭を悩ませた。
中国軍は長期間に渡る戦いの為、また国共内戦再発の恐れもあっていまいちまとまりがない。しかも人口は多いが錬度は非常に低い。ソビエトみたいな戦い方をすればなんとかなるかもしれないが中国を攻撃されると日中講和後の今の日本にとってとても痛い事である。
しかも日本軍は西へ、南へ、東へと軍を進めておりいくら日中戦争終結によって大量の予備兵力が生まれたといってもあるかもしれない対ソ戦に備えてある程度を満州においとく必要があった。
つまりこれ以上は増員を待たねば無理である……っとはいっても連合軍は日本軍に釘付けでありかつての援蒋ルートも空以外すべて遮断されている。しかし佐々木首相は気がついた。
「空?…すると爆撃ですか」
「おそらく、爆撃でしょう、しかもインドからではなくソビエトからです」
「ソビエト!?しかしソビエトは現在一応我が国と中立条約を締結しており、侵攻してくるとすればあと2~3年ほどの期間があるとは思いますが?」
「モスクワ奪還の為の兵器です、兵器を渡すかわりに極東の飛行場に日本を攻撃しないという条件付で爆撃機をおいていい事を約束させようとしているのではないかと思います」
現在ソビエトはまだ人的資源は豊富であり工業地帯の疎開も完了しているがドイツにモスクワを占領され道路網が不十分であるソビエトは交通の要所であったモスクワを占領された事によって輸送などにかなりの困りを見せていた。それでもドイツの国力的に援軍が到着するまではさらなる東進はできないのでその隙を狙っているのだろうと山下は睨んでいた。
「自分は現在の状況から対ソ戦開戦には反対でありますが…ソビエト領内から中国民国を爆撃する爆撃機を迎撃する為の航空機を用意したほうがよいと思います。それにこれはソビエトの狙いもあるでしょう」
「…中国の国力を低下させれば共産党の力が大きくなる…なるほど、アメリカを利用した共産主義拡大計画の一環というわけですな」
「流石はソビエト、マレーの虎とか呼ばれている自分でも思いつかない戦略です。ソビエトだってドイツの同盟国であり帝国である日本はけむったいでしょうしそれに協力的な最近の中国も潰したいはず、かといってソビエトは独ソ戦で精一杯なのでアメリカにやらせ国力を低下させ中国にいる共産主義勢力の拡大を狙う………」
「これで、東西南北、とうとう我が国は本当に包囲されましたな………ではどういう負け方をするかそろそろ本当に考えなくてはならないようですな」
「負け方?」
「言い方が悪かったですな。まあ講和です」
山下には言葉の意味がわからなかった。
佐々木はその事について山下に説明する。日本の国力からこの戦争はまず勝てないものでいかに連合国と講和するかにすべてがかかっていた。
かといって相手を誤るととんでもない事になる。アメリカやイギリスならまだしも開戦の可能性があるソビエトであれば天皇も祖国も失うかもしれない。
しかし中国には1つ頼もしい事があった。それは4億の民である。
いくら錬度が低い軍隊とはいえこれだけの人間がいて陸戦ならば案外数で圧倒する事もできるかもしれない。ソビエトがそうであったように。
佐々木は緬甸方面軍司令官が、しかもビルマのネタではないのにわざわざこんな事を伝えに来てくれた事に感謝した。最も佐々木はそんな事薄々気がついてはいた、現に軍でも対中戦線布告に向けて動きがあった。
陸軍の一式戦闘機『隼』や海軍の零式艦上戦闘機などは現在、中国国内の工場でも生産されている。中国用のもあれば日本で運用する専用のものまで生産している。また陸では九七式中戦車などの生産も行われここの所中国と緊張している米英、そして策略により参戦の可能性もあるソビエトとの戦いに備えて一時は敵同士であり今でも反日デモがあったり日本でも奴らは信用できないと言うものが多いのであるがそれでも最近はマシなほうになりそれどころかアメリカが中国進出を狙っていたという話を日本から聞き今まで味方だったアメリカまでか中国人に敵のように見られるようになったとかならなかったとか。
8月26日……いよいよ悪夢は訪れた。
25日に宣戦布告が行われ翌日、ソビエト及びモンゴルに許可をしてもらいモンゴル領からB-17爆撃機20機、P-40戦闘機12機が出撃した。
「……ん?………あ、あのマークは!?」
I-16で飛行していた中国軍パイロットは星が入った巨大な爆撃機と見た事がある戦闘機を目撃、瞬時にしてアメリカ軍の編隊だとわかった。すぐにアメリカ軍が中国に侵入した事は伝えられた。
アメリカはまず甘粛省蘭州市に爆撃を開始する。
ここは古くからシルクロードの要衝であり栄えていた場所であった。
しかしそんな場所だからこそ、僅かに日本軍機も配備されていた。
中国軍でも錬度が高い方のパイロットと日本陸軍のベテランで編成された「独立戦闘日中混成飛行隊」はB-17が接近している事を知り迎撃に上がろうとした。
「回せー!回せー!!!」
主力機は一式戦闘機と九七式戦闘機、そして数不足を補う為にI-16も配備されていた。
「………あれが噂のB-17!?……でかい奴だ!」
隊長である横井少佐が思わずそう叫ぶほどであった。
「……よし!」
彼は機体を振りそれで合図、降下を始めB-17の編隊に攻撃を仕掛けた。
「…食らえ!!!」
機首から二つしかない12.7mm砲が放たれる。しかしこれを被弾したとしてもB-17にとっては蚊に刺された程度の痛みでしかないだろう。隼の弱点は武装の貧弱さである。
「ちっ、落ちない!……ん!?」
横井少佐の目に撃墜される隼、九七式戦闘機、そしてI-16の姿があった。よく見たらさらに上空からP-40が降下を行い一撃離脱を仕掛けていた。
「まずいぞ!護衛機がいたか!」
ただでさえ、12.7mmでは落せない可能性が高い相手なのに護衛の戦闘機に攻撃を阻まれ結局B-17爆撃機は2機に軽い損傷をあたえたのみであり撃墜したのもP-40戦闘機5機のみであった。対して独立日中混成飛行隊の損失は4機、たいした差はなくしかも蘭州市は爆撃されてしまった。
「しかし、共産主義のソ連やモンゴルが俺らの頼みを聞いてくれるなんてな」
「まあいい、早く戦争を終わらせるには日本を攻撃するのではなく日本を支える周囲を攻撃、それを続けていれば日本も戦争を継続できないだろう。中国人には悪いがその為に犠牲になってもらう」
B-17の搭乗員がそう呟いている中、蘭州には爆弾の雨が降り注ぎヨーロッパの建物みたいに丈夫な建物ではなかったせいか被害は余計に拡大した。ようやく到着した海軍航空隊の派遣部隊もB-17爆撃機を1機撃墜するだけでかなりの苦労をしていた。
ただでさえ丈夫な上に日本軍搭乗員は対大型機戦が苦手であった。
蘭州爆撃、これにより中国は対米宣戦布告を、さらに翌日イギリス軍の攻撃機が国境付近を攻撃し対英宣戦布告も行われた。
日本の戦争継続能力を削るべく北から日本の力の源の一つになっているものを攻撃する作戦に転じた連合軍、しかしこれはかえって戦線の拡大を招いてしまう結果であった。
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