第11話,ガダルカナル島攻防戦 緒戦編
8月………
アメリカは日本軍の攻勢を少しでも食い止めるべく一大作戦を決行しようとしていた。日本軍の新たな要所になろうとしているガダルカナル島に海兵隊を送り込みそこに日本軍を釘付け、海軍戦力が完全に回復するまでがんばってもらおうという作戦だ。
もしこの作戦に初っ端から失敗すれば稼働可能空母が0になり一方日本軍は損失空母なしのまま快進撃を続ける。エセックス級などが完成するまでアメリカは耐える必要があった。もしこのまま日本軍が快進撃を続ければ後々の反攻作戦が長引いて国民が耐えられなくなる可能性が高い。だからアメリカの勝利という形で戦争の早期終結を目指しアメリカは一見無謀とも思える作戦を発動させたのである。
しかし、日本は北村のせいかこの事を事前に察知していた。
アメリカがガダルカナル、そして近くのフロリダ諸島に襲来してくる事を。そしてその作戦が行われるのが8月初頭だという事も………
伊15潜水艦…
「ようそろ…」
「ようそろ………」
「…ん?」
「どうしました?」
「……あれは…間違いない!敵や!敵の大艦隊や!」
伊15潜水艦が米大部隊を発見、すぐさまラバウルへこれを報告した。
「我、敵大部隊見ユ、ガ島方面ヘ接近中ナリ」
これに対し、連合艦隊はこう返信した。
「我敵大部隊ノ迎撃ヲ開始、尚帰還ハ雷撃敢行後トスル」
この分を見た御坂少佐は顔をにやつかせこう呟いた。
「よ~し…雷撃や。大型艦のサラトガを狙うぞ!」
「戦闘用意!!」
伊15の中が急に慌しくなる。これから雷撃。目標はサラトガである。
サラトガはワスプよりも大きく日本軍にとってはとても邪魔な相手である。なのでできる事なら今沈めておきたい艦であった。
「用意……射っ!」
伊15から一斉に魚雷が放たれる。6門の53cm魚雷発射管から17本ある魚雷のうち6本の魚雷が一斉に放たれサラトガ目掛けて10kmを進んだ。もちろん放った魚雷は酸素魚雷である。酸素魚雷は航跡が目立たず高速で水中を進み威力もほかの魚雷と比べて高い。その代わり水面から飛び出したり迷走したりしてなかなか命中しないことがあったりという欠点もあるが。
6本中3本がサラトガに命中した。
「な、なんだ!?」
「…ま…まさか!!潜水艦だ!!!日本軍の潜水艦が雷撃してきやがったぞ!!!」
アメリカ軍は混乱に陥る。
航跡が目立たない魚雷で突如雷撃されたのである。しかも敵の姿は見えずこれは彼らも恐れる潜水艦である事は間違いがなかった。
残りの3本は戦艦ノースカロライナと駆逐艦1隻に命中、駆逐艦もノースカロライナも大破した…しかし近くにいた伊19の木梨艦長はこう命令する。
「あれでは不十分だ、俺らも6本撃つぞ!」
「了解!装填急げ!」
「…用意……射っ!」
さらに伊19から6本の酸素魚雷が放たれる。
今度は2発がサラトガに命中、その他輸送船に1発ずつが命中、1発がノースカロライナに再び命中し流石のノースカロライナも深刻な損害を被る。
そしてサラトガも……
「消火急げ!!!」
「日本軍め…」
サラトガを10ノットまで減速させ消火活動を急いだものの火災はおさまらずそれどころか爆発は続いた。アメリカ軍はこれ以上停止しているのは逆に危険と判断しサラトガの放棄を決定、雷撃処分しサラトガは南の海に沈んだ。
「くそ!警戒を厳とせよ!!もっと潜水艦に気をつけるのだ!!」
「はっ!…しかしワスプの艦載機だけで大丈夫なのですか?」
「……不足している。だが日本軍の最前線基地はラバウル。ガダルカナルから1000kmもある……空母さえこなければ…いやしかし…」
ターナーはなにか重いものに押されている感じであった。
連日の敗北により米海軍は大きく発言力を失っておりターナーにもアメリカ海軍の馬鹿野郎的な声が届き始め、特にアメリカ海軍は6月に大失態を犯しハワイまで占領されてしまった。
それ以降彼ら海軍軍人は陸軍などからいじめられるようになったのである。
ターナーも今度負ければ流石にまずいと思い、なにか重いものが全身を襲っているかのように感じてるのである。
(何故なんだ…一体日本にはなにがある?何故日本はこんなに強いんだ?…一体どうなっているんだ!?)
そして、特に作戦ミスもなかった日本がとてつもなく強く感じた彼は日本がなぜあれほど合衆国を相手に戦えるのか理解に苦しんでいた。
その頃、ラバウルでは………
「帽振れー!!!!」
ラバウルからは加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴の5隻の空母(赤城は修理中)、大和を始めとする8隻の戦艦、巡洋艦、駆逐艦多数と増援の陸軍が乗っている輸送船、その他艦艇による大艦隊を率いてガダルカナル及びフロリダ諸島へと向った。
これぞ日本の勝利を表から支えている、今となっては海軍内から不敗神話が生まれ相手からも最強ではないかと言われ始めている北村機動部隊である。
「もどーせー……よーそろー!!」
「長官!」
「んん?……そうか、サラトガが沈んだか」
「はっ!その他の艦艇にも損害をあたえたようであります!」
「そうか、たった2隻の潜水艦でよくやった」
北村は微笑みながらそういった。
しかし北村機動部隊の到着は若干後れた、アメリカ軍は8月7日午前4時、予定通り攻撃を開始した。
艦砲が、航空機が、島を襲った。
しかし日本軍はがんばったのであった。
「射っ!!」
ガダルカナル島は既に3万を越える兵でかためられておりその分攻めがたい場所となっていた。アメリカ軍は戦闘機には悩まされなかったが日本軍の高射砲部隊に悩まされたのであった。
「すごい砲撃だ……」
「かまうな!!攻撃を続けろ!!」
そして日本軍は水際で攻撃を行うなと命令、一部はやってしまったものの大した事はなかった。
そして…壮絶な上陸戦が展開されたのであった。
「…攻撃開始」
「攻撃開始!」
日本陸軍は上陸し始めた米海兵隊に対し一斉に砲撃を開始した。
「あああ!!」
「うぎゃあ!!」
「母ちゃん!!!!」
米海兵隊は凄まじい砲撃、銃撃の前に次々と倒れていくる
衛生兵も大忙しであった。
ツラギ方面にも1500人が殺到、日本軍はわざと彼らを引き込み待ち伏せし奇襲をし掛ける戦法で戦った。数は少ないながらも日本軍は奇襲、そして身を潜めるを繰り返し消耗しつつも米海兵隊を1人ずつ殺していった。
その頃…ガダルカナル島司令部…
「なぜ水際をやらなかったのですか!!!」
そう起こっているのは辻中佐であった。
彼は水際作戦をやるべきだったと主張していた、しかし百武晴吉中将は彼に反論した。
「自分は上の命令どおりにやった。君だって上にはさからえん、それは自分と同じであるはずだ」
「貴方のいう通りにやっていればこの戦いこうはいかなかったでしょう」
川口清健も同じであった。
「なっ…自分の意見を否定するとは!」
「辻君は勝手に戦争をできない。同時に私も川口君も同じだ。はっきり言えば戦争は1人の意見で勝手にできるものではない。その事をわかってこの戦いをやってもらいたい。作戦の神様と呼ばれている君ならわかってくれるはずだ」
「………りょ…了解しました」
辻は嫌々そういった。実は百武中将も開戦後に日本会メンバーの佐官と出会っていた。最初は胡散臭いと思っていたがほぼその通りになってきたので興味を持ち始め今はどちらかといえば日本会よりの人物になっていた。
(とにかく…1日待つ…ツラギ方面の奴らも1日耐えてくれ…そうすれば北村さんの艦隊が来るはずだ。それまで我が日本軍はひたすら耐えるのみ!)
まさに勝利の鍵を握っているのは北村であった。
こうして幕を開けたガダルカナルの戦い。果たして勝者は途中で巻き返してやっぱりアメリカか?それともこのまま日本軍の勝利か?次回へ続く。
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