第10話,ガダルカナルへの序曲
ミッドウェー、アリューシャン、そしてハワイ。
いずれの攻略作戦も日本側の勝利に終わった。
結果、日本海軍航空隊はミッドウェー、ハワイ攻略部隊合わせ125機の損害を出し決して軽微ではなくミッドウェー部隊は空母1、駆逐艦1が中破、重巡1が大破しハワイ攻略部隊も赤城が被弾、駆逐艦2隻が沈没し1隻が中破、重巡も1隻が損傷をうけた。
しかしアメリカは太平洋艦隊に大打撃を受け現在太平洋で作戦行動ができる空母もサラトガのみになってしまった。
アメリカは泣く泣くワスプを持ってくる事になるがそれでもたったの2隻である。
ほかの艦艇も真珠湾が攻略されてしまった事が原因でかなりの損害を受けた。
日本軍は太平洋の制空、制海権を得たのである。
北村が直接ハワイに上陸、山口多聞少将と共に視察を行っていた。
「敬礼!!」
周りの日本兵が2人に敬礼する。
「やっぱりひどい有様ですな」
山口がそう呟く、北村は頷いた。
「少なくとも、軍港として機能を復活させるには半年はかかるでしょう」
「そうですな」
ただしすべての機能が失われていたわけではなく、日本海軍はすぐさまここを拠点にしようとした。
また今回占領する目的で攻撃を行ったので乾ドックなど港湾施設の損害も少なかった。
この為日本は比較的短期間に真珠湾を拠点にできると考えた。そして既にその計画は実行され兵士達は働いていた。
「…さて、次は一体どんな作戦を行うのですか北村長官?」
山口がそう北村に質問してきた。
「うむ、すぐにフィジー及びサモアの攻略を行いたい」
「つまりFS作戦の本格化ですか?」
「うん、シーレーン遮断はやはり日本にとっては大きい。どちらにしても赤城は被弾して少し修理する必要がありますが正規空母5隻とその他の空母多数はまだ戦えます。航空機も十分です。陸軍も日中戦争終結に従い、また満州からも最低限を残し撤退したため大分余力があります。作戦を行うには十分な戦力があると私は考えております」
125機の損害…確かに大きな損害だ。
しかし30機ぐらいは瑞鳳の艦載機でパイロットは着水するか脱出するかで生還、飛行機の数だけ人が死んだというわけではなく史実のミッドウェーなんかと比べれば大分マシな損害である。
それに空母も数多く残っている、それどころか海戦前からの山本達の働きにより史実よりも強力な機動部隊を備えていた。
その後、昭和17年7月。
日本政府にヒトラーからお祝いの言葉が書いてある紙が届いた。
「なに?ヒトラー総統から?」
「はい!」
「読め」
「はっ!12月8日の開戦以来日本は勝利の波に乗り今や太平洋の制空、制海権を押えている。そして我が国はヨーロッパを、南は北アフリカへ、そして今やソ連に対しても優勢に戦っている。このたびは連戦連勝している日本に対しお祝いの言葉とここれからも日独は共に戦って行こうという事をここに記す」
ソビエトを攻撃してくれ…という要望はなかった。
単純にただのお祝いのようである。
「しかし…この分だとドイツは本当に…」
佐々木はこの手紙の内容を聞き、もしかするとドイツは勝つのではと思っていた。
その頃東部戦線ではドイツ軍はレニングラードを攻略、モスクワにも殺到、ソ連軍は抵抗をするが大損害を被りソ連はモスクワ放棄を余儀なくされた。
スターリンはウラルに移り抵抗を続ける構えであった。
ソ連はウラルへ多くの工場を疎開させ緒戦において大損害を被ったとはいえまだソ連軍は健在である。
ドイツ軍は今後それらと戦う必要があった。一方北アフリカ戦線でもドイツ軍は順調に勝ち進んでいった。
イタリアは足手まといだったものの日独は順調に勝ち進み、連合国を追い詰めていた。
このままいけばドイツと日本が陸路で繋がる日もそう遠くない…日本陸軍とドイツ陸軍ががんばれば実現できるかもしれない。
…しかし佐々木首相にその気はなかった。
「首相、チャンスでは?ここでドイツと繋がれば」
「うん、しかし西亜打通は現状だと無謀だ。まずは太平洋が最優先だ。英国はヨーロッパ及び北アフリカで精一杯でドイツもモスクワを占領、そう簡単には負けないだろう。しかし米国は違う。その圧倒的な工業力を持ってすぐに反攻してくる。我々はそれ以前に太平洋で万全の態勢を整える必要があるんだ」
「では陸軍は?」
「万が一の対ソ戦…まあ向う数年はないと思うがその為に現在30万を用意、そして現地人の訓練も急いでいる。一部はハワイ攻略に参加したりポートモレスビーに行った。、それでも100万近くが温存されている、これを半分にする」
「つまり?」
「今後も日本軍は増員が行われるがとりあえずまずは50万をビルマ方面へ、残りは太平洋」
「なるほど、自分はそれに賛成です」
佐々木首相の頭の中には昨年聞いた北村の言葉が浮かんでいた。
北村のいう未来は日本軍きかなりの数を中国に釘付けされその後増員や引き抜きが行われるが結局はだめであった。
しかし今回は日中戦争終了に従いかなりの人員が温存されている、そして同時にかなりの数が増員されようとしていた。
危機的状況を脱するために国の働きよるものを含め国民は軍に入る、この分だと陸軍だけでも310万人に達する見込みであった。
これは陸・海軍省調べ、労働省編「第二次大戦中の日本における労働統計」による、昭和18年の日本陸軍の規模とほぼ同じであった。
「中国に釘付けにされてないぶんだけ我々は有利である。以前なら昭和17年の時点で南方に80万…なんてことはありえなかったが今ならできる」
「日中戦争終結はそこまで大きかったのですか…」
「そういう事です」
アメリカも日中戦争終結により日本陸軍がかなり温存されている事を知っていた。
ルーズベルトは焦った、太平洋の戦局に余裕がなくなり、史実では装備したばかりのシャーマン300両を他の武器と共に北アフリカ戦線に急送したのだがそれができないと判断し太平洋戦線に回すことにしたのである。
だが…この決断はロンメルの運命を変える。
さらに……この世界の歴史は狂い始めていた…そしてこれからもだんだんと史実から外れてゆく。
…
…
…
さて、7月も末になる頃、北村はガダルカナル島の視察に来ていた。
(…8月6日……この危機的状況の中、アメリカはウォッチタワー作戦を発動するか?それともなにもしないか………どちらにしてもガダルカナル島に飛行場を建設している事はすでにバレているはずだ。攻勢をかけてくる可能性もある……警戒は必要だ)
北村は迷っていた。はたして連合軍のガ島上陸はあるのかないのか。
日本軍はハワイ、ミッドウェーを攻略、空母も一部は損傷したがそれでも戦没艦はまだなし。
しかしアメリカは恐ろしい国である。
もしかすると今後を賭けてガダルカナルに上陸してくる可能性があった、この時のガ島守備隊は約3万、この時点での兵力は史実よりも多い、それだけ日本軍はガ島にアメリカ軍が攻めてくることを警戒していたのである。
そして…実際アメリカ軍はガ島が拠点になる間前に攻撃を開始しようとしていた。
幸いアメリカ軍には大西洋からワスプが到着、これで空母は2隻になる。アメリカの狙いはガ島奪回ではない、日本軍をここに釘付けにし海軍戦力を立て直す時間を稼ぐためである。
その為、アメリカ軍は2隻の空母、多数の輸送船を含む大艦隊でガダルカナル島を目指した。
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次回より南太平洋での戦いです、そろそろ陸軍も活躍させてあげないと…