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エピローグ

 私の身の上話をしたからか、上司のはずのディオさんは、元々私に甘い気はしていたのだけど、更に優しくなった。……王子様が連れてきた異世界人なんて訳アリ人間、私がディオさんの立場だったら敬遠する。でも敬遠も出来ないから、私の機嫌を損ねないように、ディオさんは私に甘いのだろう、と判断していたのだけど。

 身の上話聞いてから、物凄い同情しているのか、まるで家族のように甲斐甲斐しく私に気を揉むようになった。……いや、上司にそこまで優しくされても仕事に支障を来たすと嫌なので、せめていつも通りにして下さい。って三回言ったけど直ぐに同じ状況になったので諦めた。


「済まなかったな」


 それ以上に困惑したのが、この目の前の男性……アランさんだ。


「いえ、気にしてませんが。……と、何回言いましたっけ」


「いや、何度謝っても足りないのではないか、と」


「思わなくていいので!」


 アランさんは、私がこの世界に来ちゃった時、ほぼ下着姿だったから痴女だと思っていた。おまけに王子様であるユディットが通る道の真ん前に現れたのだから、王子に色仕掛けでもするつもりか、と気が立っていても仕方ないと思うし、ユディット王子が簡単に気を許しても、アランさんが気を緩めるわけに行かないのもよく分かる。

 彼の立場からすれば、怪しさ満載の女が下着姿で王子の前に現れたわけだから色仕掛けで何か企むどこぞのスパイか、或いは武器を持たないと見せかけて王子の暗殺を企む暗殺者かもしれない、と警戒してもおかしくないわけで。


「しかし、だな」


「いや、私としては状況に混乱していたのに、本物の剣を首に突き付けられた上に薄らと首の皮が切れて血が出たことは、驚きましたよ? でも、それもアランさんの立場を考えたら当たり前のことだって理解したって何度も同意しましたよね⁉︎ だから謝らないでいいですよって言いましたよね?

 私が家族も友人も恋人も居ない独り身だと知って、そんなに同情しないで下さい。大丈夫ですから!」


 そう。

 アランさん、すっかり私の身の上話で私に同情心を寄せて、なんだかんだと私を構いたがるようになった。

 いや、子どもじゃないですけど? 私、あなたより年上ですけど?

 初対面がそんなだったことを未だに気にしなくていいですから!


「アオイ!」


 そして。

 ユディット王子は、更に私の周りをウロウロすることが多くなった。

 ……いや、鬱陶しいな⁉︎

 王子様に鬱陶しい、とは言えないから黙るけど、なんでそんなにウロウロしてくるの? 王子って忙しいんでしょ? 仕事、しなよっ。


「ユディット殿下……、そんなに私を気にかけなくて大丈夫ですから」


 溜め息。

 ユディット王子は、異世界人で帰る方法が分からない私に、方法を探そう、もし見つかったらどうする? と、以前尋ねたことを気にしているのだろう。

 まさか、日本に帰っても帰る場所が無いなんて思ってもいなかったに違いない。だから申し訳なさやら同情心やらで、暇を無理やり作って頻繁に顔を出すのだろう。

 というか、こんなんだと絶対、ユディット王子の結婚相手として見られちゃうんじゃないの⁉︎

 そう思ってディオさんにそれとなく尋ねたら。


「あー……」


 と、呻いた後、全力で視線を逸らされたから、やっぱりそういう話になっていると気付いた。……マジか。年齢差が大きいんですけど⁉︎

 頭を抱えた矢先、原因が今日も現れた。

 なので、ディオさんに確認したことをユディット王子にも直接尋ねたら。

 ニヤリと年下の癖に、やけに似合う笑みを浮かべて。


「もし、その話が具体的になったら……?」


「は?」


「で、どーすんの?」


 ……ニヤニヤしながら私の口癖を真似て、なんだかイラッとしたので。


「私は、そんなの望んでないから、断固拒否!」


 まぁ、なんだかんだで、この世界というかこの国に馴染み始めて、居場所が出来ました。此処で生きていきます。



(了)

お読み頂きまして、ありがとうございました。

これにて完結です。

また別作品をお楽しみください。

尚、オムニバス形式の予定で執筆始めたはずなのに、オムニバスでなかったことをお詫びします。

そのうちオムニバス形式で書きたいものです。

オムニバス形式で書きたいと思って書き出していた作品だったので。

すみません。

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