プロローグ
「調査した結果、旦那さんは見事に不貞してました。さすがに行為の真っ最中は確認出来ませんでしたが、証人は私以外にも二人居ます」
太陽の光で随分と焼けてしまってところどころ茶色になっている(染めてない)黒い髪を気怠くかきあげながら、私は目の前の依頼人に結果を突き付けた。
白いものが混じりつつある金髪に理知的な緑色の目。眉間による皺が無ければ、元はお綺麗な人なのだからかなり歳若く見えるはずなのに、その皺で台無し。ーーもったいない。
とはいえ、今、依頼人は夫の不貞……つまり浮気・不倫を私に突き付けられたわけだから、こんな表情をしていても仕方ないのだろう。というか寧ろ満面の笑みだったら、良かったのに。
彼女は夫を愛している、若しくはそれなりの情を抱いているのだろう。だから目の下に隈が出来る程、肌がカサカサに荒れているのを放置する程、苦悩しているのだから。
「不貞、していたのですね……」
やっぱり、という諦めに似た表情と掠れた細い声。
気付いていたけど、信じたくなかったのだと思う。だけどあまりにも苦しくて真実を知りたいと願いーー
ーー結果は、真っ黒だった。
ああ、こんな表情をさせたいわけじゃないんだけどな。だから私は、依頼人に問う。
「で、どーすんの?」
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