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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~前奏~ 新世界への旅立ち
9/37

〈第9音〉対戦相手

最近とても忙しいです(言い訳)。

◆ソアン=ガルヴァ◆


 2組と3組の戦いを一言で表すとこうだ。


「瞬殺(殺してはいないが)」


 とにかく一瞬で終わってしまった。

 戦いの一部始終を話すと、まず校長先生がスタートの合図を出す。


「それでは、両者向かい合って、初め!」


 開始の合図と同時にローラン姉妹が消えた(・・・)。正確には、姉のナタリーが遥か上空まで飛び、妹のカタリーが素早く地を駆けた。


 すぐさま、ジオ=アドラムが焦った様子で周囲に霧を巡らした。目眩ましの為だろう。

 その中から、


「キンッ……キンッ……」


 という甲高い金属音が聞こえてきた。恐らくだが、ジオとカタリーが戦っているのだろう。霧が濃すぎて見えないが。


 そこをめがけてナタリー=ローランが風の刃を飛ばした。それもかなりの範囲に。

 もし観客席を防護する結界がなければ怪我人が出ていただろう。観客の悲鳴が上がる。


 地上に目を移すと、その刃を打ち返そうと、ステラが火を槍状にして空に放った。『火槍(ファイヤーランス)』だ。


 しかし、密度が違いすぎる。風の刃の多くは地面に着弾し、エメリー自身も攻撃を受けている。対するナタリーは無傷だ。

 そして、いつの間にか金属音が止んでいる(・・・・・・・・・)


 俺がそれに気付くと同時に、霧が晴れ、カタリーがステラに肉薄し、水を付与(エンチャント)した剣で一閃。ステラのリボンが赤色になる。


 試合開始から約15秒後の事である。


「―――………………っは! すみません! あまりの出来事に実況を忘れていました! 勝ったのは2組、ナタリー=ローランとカタリー=ローランです!―――」


 観客も実況と同様、息をするのも忘れて試合に見入っていたようだ。静かだった観客席から歓声と拍手が沸き起こる。


「2組の奴ら、すごかったな!」

「3組! よく頑張った!」

「次の対戦相手が心配だな~」


 観客からは2組に対する称賛の声や3組への労いの声、そして次の対戦相手、すなわち俺達への心配の声など様々な声が聞こえてくる。


「スゲー……」

「スゴすぎでしょ……。どうやって戦おう……」


 これら2つの感想は俺の右隣から聞こえてきた。


「まあ、なんとかなるだろ。あんだけ練習したんだし」

「ソアン君のその考え方、羨ましすぎる……」

「さっきの試合を見た後なのに、そう言えるとは、すごい自信だな」

「何事も、やってみないと分からないからな」


 さて、どう戦おうかな。


――――――――――――――――――


◆キエラ=サージェン◆


 あの戦いから一夜、私たちは訓練場にて明日の2組との対戦に向けての作戦会議をしています。


「昨日の試合を見た限り、カタリーが前衛、ナタリーが後衛を担っているようだな」

「うん。そうだね」


 いやー、強かった。


「キエラは2組の戦い方を見て、何を思った?」

「うーんと、バランスがよく取れてると思う。2人とも自分自身のスキルを上手く使ってたと思うよ」


 私は正直な感想を伝えた。


「ああ。俺もそう思った」

「どうやって戦おう?」


 するとソアン君は少し考えるそぶりをしてこう言った。


「俺が考えるに、当たり前だけど、2人のリズムに乗らないようにする必要があると思う。その点で3組の戦い方を参考にしよう」

「というと?」

「試合中、ジオがカタリーと、ステラがカタリーと1対1で戦ってる場面があっただろ? あれをやるんだよ」

「なるほど。ソアン君がカタリーちゃんと、私がナタリーちゃんと、っていう感じか」


 ほうほう。


「そう。カタリーの方に2人でいってしまうと、ナタリーが魔法を自由にバンバン打てるようになってしまうからな。それは避けたい」

「うんうん。いい作戦だと思うよ!」

「まあ、こう言ったところで、うまく行くかは分からないけどね」


 ソアン君が苦笑いをしながらそう言った。相手も強いからね。


「さて、日も沈んできたし、帰るか」


 頭上を見ると、空が暗くなってきている。


「うん。明日、頑張ろうね!」

「ああ、頑張ろう」


 そう言葉を交わし、私たちはそれぞれの部屋に戻った。


―――――――――――――――――


◆ソアン=ガルヴァ◆


 キエラと別れたあと、俺は自分の部屋の扉を開けた。


「ん、おお、お帰り!」

「ああ。ただいま」


 部屋に入ると、アルフが迎えてくれた。


「明日の作戦会議をしてたんだろ? どうだった?」

「実際にやってみないと分からんが、勝算はあるかな」

「そうかそうか。それは楽しみだな」

「おう。楽しみにしててくれ」

「だが、本当に気を付けろよ。あのジオでも歯が立たない相手だからな」


 アルフが心配するような目でオレを見ている。


「そういえば、ジオはアルフのライバルだったな。どうだ? 剣術大会の方は。順調か?」

「まずまずといったところだな」

「確かそっちも明日だったよな。応援してるからな、頑張れよ!」

「ありがとう。そっちも頑張れよ!」


――――――――――――――――――


◆ソアン=ガルヴァ◆


 翌日。


「さてと」


 対戦場の上で、向かい側にいるローラン姉妹を見やる。あちらもこちらをじっと見ている。


「いよいよだね……」


 キエラがボソッと呟く。ふとクリフを見ると真剣な面持ちをしている。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

「…………それでは、全校対抗戦1年生の決勝を開始する。両者向かい合って……なっ! なんだお前は!」


ドーーーーーーン!!!!!


 解説席の方から、爆音と共に煙が上がる。


「えっ? なに!? なんなの!?」


 キエラが悲鳴を上げる。観客たちも慌てた様子だ。

 一体、なにがあったんだ?

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。

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