〈第6音〉対抗戦に向けての練習
クリフをもっと喋らせたいな~
◆ソアン=ガルヴァ◆
全校対抗戦(の練習)への参加を表明してから2週間後、それに向けての練習が始まった。
ちなみに、結局参加したのは俺とキエラの2人だけだった。
アルフはというと、
『全校対抗戦の1週間後の全国剣術大会に出場するから、対抗戦には参加できない』
とのことだった。アルフは剣術界隈では有名な人物らしく、一昨年の20歳未満の大会で優勝したこともあるんだそうだ。去年は諸事情で出場出来なかったから、今年は出て優勝したい、と話していた。
「では、今日は2人のスキルと戦い方を確認します。ではソアン君から」
「はい。僕のスキルは『音楽家』で、魔法を使いながら剣で戦う、所謂魔法戦闘士のようなスタイルです」
「わかりました。では次、キエラさん」
「私のスキルは『魔法構築』です。今まで剣の練習はほとんどしてこなかったので、戦い方は後衛の魔法使いといったところでしょうか」
先生が紙にペンを走らせている。今話したことをまとめているのだろう。
「……じゃあ次に、実際にどんなことが出きるかを見せてもらいます。ソアン君、好きなようにスキルを使ってみて。地面や校舎は魔法で強化してるから。全力でね」
「わかりました。それでは」
俺はそう言うと、頭の中でクリフに話しかける。
『どれを見せたらいいと思う?』
『そうですね……。まずは各長調と短調を順番に見せて、その後は、『転調』等をやってみては?』
『わかった』
俺は『指揮棒』(剣)を抜き、詠唱を始めた。
「『旋律 ハ長調』」
数個の火の玉を出して地面に当てる。
「続いて、『ハ短調』」
先程のよりも大きい火の玉を生み出す。
「続いて、……」
と、俺は順番に技を出していった。
ここで付け加えておくと、長調と短調には、長調が広範囲に攻撃や効果を発生させるのに対して、短調は狭い範囲に攻撃や効果を発生させることが出来る、という違いがある。
基本短調のほうが長調よりも威力が強い。
「次に、『転調』を見せます」
『ハ長調』を唱えたあとに「『転調 ホ長調』」と唱えた。すると、燃え盛る火の玉が、砂を巻き上げる風へと変わった。
『転調』は瞬時に今の調を別の調に変える『音楽家』のスキルである。
「と、一通りはこんな感じです」
「ありがとう。それにしても、7種類もの属性が使えるのにはおどろかされたわ」
「ありがとうございます」
そう言うと、先生はまたメモをした。
「では次、キエラさん。見せてくれる?」
「はい!」
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◆キエラ=サージェン◆
次は私の番ということで、準備を始めた。
『それにしても、ソアン君の魔法、すごかったな~。私も負けないように頑張らないと』
自分に気合を入れ杖を構える。
「では……、いきます! 『火炎』」
まず、炎を出現させた。4メートルくらいの高さまで炎が達している。そのあとに、
「『竜巻』」
と、今度は竜巻を出した。ゴウゴウと音がしている。
「そしてこれらを『混合』! 『炎竜暴風』!」
そう唱え、2つの魔法が合わせる。目の前には大きな燃える竜巻がある。
「と、基本はこんな感じで魔法と魔法を組み合わせて戦います」
「すごいじゃない! 2つの魔法を同時に出すだけでもすごいのに、それを組み合わせられるなんて!」
「『魔法構築』には『混合』だけじゃなく、こんな能力もあります。『私の魔法 亜空間穴』!」
小さい家くらいは入るような、とても大きな穴を発現させる。中は真っ暗でどのくらいの大きさがあるかは私にもわからない。
「これは収納魔法のように、中にものを入れることが出来るのですが、容量の制限がないのでなんでも入れることが出来ます。このように、『私の魔法』は今現在存在しない魔法を作り出すことが出来る能力です」
「世界中の魔法研究者が欲しがりそうなスキルだな」
「そうね〜」
2人が感嘆の声を出す。
「実は、私の夢はさっきソアン君がいった通り、魔法研究者になることなんです」
「そうなんだ! キエラならきっと良い研究者になれると思うよ!」
「私もそう思うわ。頑張ってね」
「はい!」
「では、本日の練習はこれで終わりです。明日からは本格的に始めるのでしっかり準備しておいてくださいね。それでは、明日の放課後に」
それからは本番のルール説明をされて終わった。
「「はい。今日はありがとうございました!」」
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◆ソアン=ガルヴァ◆
それから約1ヶ月が経った。
「いよいよ明日だね」
「ああ」
そう、明日は全校対抗戦予選準決勝である。相手は1年4組のリサ=パールとトムソン=カーターだ(各学年4クラスあり、それぞれから2人ずつ出場している)。
「確か、パールのスキルが『活性化』でカーターのほうは『火属性』と『風属性』だったっけ?」
選手の名前とスキル名は全て公開されている。しかしそのスキルが何ができるかは説明されない。
「そうそう。パールのスキルの『活性化』ってどんな効果なんだろうね」
「それは、明日になってみないとわからないな。まあ、いつも通り戦えば大丈夫だよ」
「そうだね、じゃあ明日頑張ろうね、おやすみ」
「ああ。おやすみ」
互いに励まし合い、俺たちは別れた。
「緊張するけど、勝てるように頑張ろう。これくらい勝てなきゃ世界なんて守れないからな」
俺はそう独り言をこぼすのであった。
楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。