表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~前奏~ 新世界への旅立ち
5/37

〈第5音〉全校対抗戦

全校対抗戦って青春って感じがする。

◆ソアン=ガルヴァ◆


「「『火球ファイヤーボール』!」」


 アルフとキエラは、流石経験者だけあって、俺よりも大きくて威力の高い火球を出した。


「「「『火槍ファイヤーランス』!」」」


 そう唱えると、1、2メートルほどの大きさの燃える槍が10本くらい出現し、狙った方向に飛んでいった。アルフとキエラは俺の倍くらいの本数をだしていた。

 練習量の違いでこれほどにも変わるのか。


「2人とも凄いな」

「いや、ソアンだって初めてにしては上手だぞ?」

「そうですよ。私が魔法を初めて使ったときは的に当たるどころか、すぐそこの地面に落ちてしまいましたもん」


 ハハハと3人で笑いながらも、授業は順調に進んでいった。


「では、次に水魔法について説明する。水魔法は………」


――――――――――――――――――


 その日の昼休み。


「さあ、ごはんごはん~♪」


 弁当箱を取り出し開けようとする。

 するとアルフが突然、


「そういえば、キエラのスキルって何なんだ?」

「あ、それ、俺も気になってた」

「私のスキルですか? 私のは『魔法構築クリエイション』といって、文字通り自分で魔法を創ることができるんです」

「え! それってすごく強そう!」

「強いスキルではあるのですが、使いこなすには魔法に対する深い理解が必要で、小さい時に親に猛勉強させられましたよ」

「例えば、どんな?」


 キエラの表情が暗くなったので聞くのが怖い。


「そうですね……魔道書一冊を隅から隅まで暗記したり、あとは親に会う度に、『火球ファイヤーボール』の射程距離を答えろ、だとか魔法についての問題を一問一答形式で出されたり、ですかね」

「うわ、すっご」


 ここで付け加えておくと、魔道書一冊は、国語辞典一冊くらいの厚さである。それをすべて覚えるなんて芸当、俺には到底できない。


「勉強は嫌いにならなかったの?」

「まあ、挫折とかはありましたけど、私こう見えて負けず嫌いなところがありますから、絶対諦めてたまるかという気持ちで勉強してましたね」

「俺だったらすぐにやめてしまいそう」


と、アルフが言った。


「俺も同感、キエラはすごいな」

「ふふ、ありがとうございます」


「ところでキエラ」

「はい?」

「ずっと敬語で喋っているけど、もっとくだけた感じで話してもいいよ?」

「そうで……そう?」

「うん。そっちのほうがおれらも話しやすいし。な、アルフ」

「おう、そうだな。まあ、キエラがどうしてもと言うなら敬語でもいいけど」

「わかりまし……わかった」

「よし、じゃあ午後の授業の準備をしますか~」


――――――――――――――――――


次の日。


「皆さんはじめまして、ダリル=セーシュです。昨日と一昨日は授業に来ることができませんでしたが、皆さんのために頑張りますので、よろしくお願いします」


朝のSHショートホームでダリル先生の紹介があった。


「一昨日言った通り、セーシュ先生は数学と魔法が専門だ。というわけで、セーシュ先生、2時限目のスキル練習の時間、よろしくお願いします」

「はい、わかりました」


――――――――――――――――――


 そして件の2時限目。


「それでは、ひとまず3人組にわかれてください」

『まあ昨日と同じがいいか。そっちの方がやりやすいし』


 俺はアルフとキエラと組んだ。


「分かれましたね? これから各自で練習をしてもらいます。もしわからないこと、またはスキルが使えない等がありましたら、先生に質問してください。他の人のスキルを見てもいいですよ。それでは、始め」


 先生のその合図で、クラスの1/3は自分の練習を始め、数人は先生に質問に行った。そして残りはというと、―――俺のところに来た。


「えっ? なんで俺のところに来るの?」


 と、2人に聞くと、


「まあ、そりゃそうだよな。『職業系』のスキルは珍しいから、皆も見てみたいんだろ。かく言う俺も見てみたい」

「私も。ソアンのスキル見てみたい!」


 俺は少し緊張しながら10mほど離れた訓練用の的に向かってスキルを使った。


旋律メロディー ヘ長調(Fメジャー)


 俺がそう唱えると、地面から2mくらいの土製の棘が勢いよく出てきた。

 こんなんでいいんですかね?


「ど、どうかな?」


 そう俺が聞くと、


「すげー!」「こんな魔法初めてみた!」「さすが『職業系スキル』だ!」


 すごい歓声が起きた。


すると、ダリル先生も気づいたらしく、近寄ってきて、


「あなたが『職業系スキル』持ちね?」

「あ、そうです」

「すごいわ~この魔法! これなら再来月の全校対抗戦にも出れるかもね」

「おー! ソアンやるな!」

「お~……、うん?」


 全校対抗戦――――それは、年に2回行われており、誰か2人がクラスの代表に選ばれ全学年全クラスが優勝を競い合う、第一の一大イベントである。


 ちなみにこのイベントは全学年が争うので、1年生と6年生が戦うときもあるそうだ。年の差や経験の差があるから、1年生が勝てる訳が無いと思うかも知れないが、そんなことはないらしい。現に前回優勝したのは1年3組だったとか。


 そういうこともあるので、その全校対抗戦は、別名『下剋上合戦』とも呼ばれている。


「どう?出てみない?」

「そんな大事な試合に自分が!? まあ出てはみたいですけど、もう1人必要ですよね?」

「そうなのよねー……」


すると、


「あの、私も対抗戦出てみたいです!」


 と、キエラが元気よく立候補した。


「いいわよ。まあ、練習は来月からだけどね。他にも出たい人がいたら先生に言いに来てねー!」


ということで、俺たちは全校対抗戦(の練習)に参加することになった。

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ