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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~第3楽章~
37/37

〈第34音〉遺跡が……ない!?

一週間ぶりです。

◆ナタリー=ローラン◆


「えーっと、ここですかね」


 宿屋の場所が書かれた紙をちらちらと見ながら確認する。確定したところで中に入り宿屋の受付に向かう。扉を開けた瞬間、周りの目が私の浮かしている大量の荷物に注目が集まる。


「あの、4名で宿泊をしたいのですが部屋は空いていますか?」

「いらっしゃい。お客さんは運が良い。ついさっき2人部屋の部屋が2つ空いたところだったんだ。そこにするかい?」


 なんと。


「ではその2つの部屋でお願いします。先に荷物だけおいても構いませんか?」

「どうぞ」


 鍵を受け取り2階にある部屋を目指す。


「ここ、ですかね」


 目当ての部屋に着き鍵を開ける。


「ふぅ、少し疲れましたね」


 スキルで浮かしていた荷物を下ろし一息つく。窓際の椅子に座りケニシャーの空を見上げる。


「カタリ―……、どこにいるの?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


◆ハヅミ=バーマレー◆


「必要なのはこれと……これと……。あ、これも要るね!」


 この町の市場は多くの人でにぎわっていて、お店を見て回るだけでとても楽しい気持ちになる。奴隷だったときはこんなところに買い物をしに来たことが無いからとても新鮮に感じる。


『それにしても私たちかなりお金持ってるよね……。とられないか心配』


 ナンヨウ渓谷で討伐したモンスターはまあまあ強い部類だったらしく、冒険者協会からかなりの報酬が出た。それでも十分すぎるのだが、極めつけはやはり王都防衛時の報酬である。まだまだ使い切れていない。

 いきなり大金を手にしてちょっと怖いが、良質な品や便利な道具を多く買うことができるのはすごく嬉しい。若干の浪費癖を持ってるソアン君に任せるよりかは良いだろう。


「さてこんなもんかな」


 会計を済ませ宿泊予定の宿へ向かおうとする。


「すみません!」

「ん?」


 ふと声を掛けられそちらに向く。そこには質の良い服を着た、高貴な雰囲気の少年が居た。この国の貴族の子だろうか。


「え、えと、どうされましたか?」


 少し慄きながら質問をする。


「突然声を掛けて申し訳ありません。詳細をここで話すことができないのですが、私をかくまっていただきたいのです」

「はい!?」


 素っ頓狂な『はい!?』が出てしまい、慌てて口を塞ぐ。


「あの、混乱されるとは思われますが、お願いできませんか?」

「あ、えーと、と、とりあえずこちらに!」


 いったん姿を隠した方がいいと判断し、宿屋へと移動する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


◆ソアン=ガルヴァ◆


 広場にはたくさんの人が居る。情報もすぐに集まりそうだ。


「よし。では聞いて行こうか」

「はい」


 手始めにベンチに座っている女性に声を掛ける。


「すみません。少し良いですか?」

「はい。どうされましたか?」

「自分たちは冒険者なのですが、この辺りに遺跡があると噂で聞きました。この遺跡についてなにか知っていますか?」

「遺跡、ですか?」


 女性はしばらく考えた後、


「いや、聞いたことないですね。この辺りには遺跡と言われるものはないと思います」

「え?」


 予想外の答えが返ってきた。


「ここで30年ほど暮らしていますが、そのような話は聞いたことがありませんね」

「そ、そうですか」

「期待に沿えず申し訳ありませんね」

「いえ、お気になさらず」


 そういってその女性とは別れた。広場にいる何人かにも同じことを聞いたが、知らない、聞いたことがないといった内容しか返ってこなかった。


「変だな……」

「ソアンさん、その話は本当のことなんですか?」

「本当のはずなんだがな……」


 確認のためにクリフと話すことにした。


『クリフ、ケニシャーに『音楽家』の遺跡は本当にあるのか?』

『あるはずです。しかし町の人の反応を見る限り、皆さん知らないようですね』

『そうなんだよな』

『もしかすると、隠されているという可能性もありますね』

『隠されている、か』


 その可能性は考えていなかったな。


『けど『音楽家』の存在は世間にはほとんどしられていないんだろ? わざわざ遺跡を隠すメリットがないように思えるんだが』

『そこは私にもわかりかねますね』


 今日は収穫無しかな。


「ソアンさん、どうかされたのですか? 突然喋らなくなりましたが」

「ああ、いや、なんでもない」

「そうですか。しかし情報が何もないとなると全く動くことができませんね。いったん宿に行ってみますか?」

「そうするか。2人ももう着いている頃だろうし」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ということで宿泊予定の宿に到着した。ナタリーさんのチェックインは終わっているようで、ナタリー=ローランの名前を出すと部屋番号を教えてくれた。


「2人部屋が2つか。部屋は隣同士か」

「私とソアンさんで1室、彼女たちでもう1室、といった感じになりますかね」

「おそらくそうだろうな」


 2つの部屋の扉の前に来ると、片方から話し声が聞こえた。内容はよく聞こえなかったが、ハヅミとナタリーさんが話しているようだ。

 コンコンとその部屋の扉をノックし、


「荷物を取りたいんだが、部屋に入っても大丈夫か?」


 と聞いた。するとぎこちない声で、


「い、いいよ……」

「いい、ですよ」


 と返ってきた。ユウヤと顔を見合わせ不思議に思いながら扉を開けると、


「こんにちは。突然すみません」


 礼儀正しい、身なりの整った少年が居た。その少年を見た俺の最初の言葉は、


「誘拐か?」


 部屋には「違う!」というハヅミの声が響いた。

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。

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