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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~第3楽章~
36/37

〈第33音〉ケニシャーの地へ

◆ソアン=ガルヴァ◆


「さて、次の目的地はっと」


 コスタマルの宿にて、次はどの町に行くべきかを悩む。


「3人はどこか行きたいとことかは?」

「自分は特にないよ。強いて言うなら山とか植物がたくさんあるところに行ってみたいな」

「私も特にはありませんね」

「私もです。人間の町にはあまり明るくないので」

「そっか……」


 こういう時には……


『おーいクリフー! 次行く町でどこか良いところない?』

『そうですね……』


 クリフに聞くのが一番だね!


『ケニシャーなどはいかがでしょうか。ナンヨウ同様『音楽家』の強化の遺跡がある町です』

『あ~いいかもしれない』


 四天王も襲ってくるかもしれないからな。強化しておいて損はないだろう。


「ケニシャーという町で俺のスキル『音楽家』の強化ができるらしいのだが、どうだ?」

「良いんじゃない?」

「賛成です」

「もともと行く当てがないですからね」


 満場一致ということで。


「よし、それなら今すぐ支度をして出発だ!」

「「「おー!」」」


 食料や寝具など必要なものをまとめて出発した。その中で重い荷物などはナタリーさんのスキル『飛行』で持っていってもらった。本当にありがたい。


「スキルの拡張使用、すごいですね」

「ありがとうございます」


 拡張使用か……。


「なあユウヤ」

「なんです?」

「スキルの拡張使用ってやっぱり難しいのか?」

「確かに難しいですね。ある程度の熟練度に加え、想像力が必要ですね」


 ほうほう。


『クリフ、『音楽家』も拡張使用ってできるのか?』

『私は見たことはありませんね。個人的な意見ですが、職業系スキルには拡張使用は存在しないと思います』

『そうなのか……』


 拡張使用、面白そうだったのに。


「そんなものが使えるなんて、ナタリーさんは凄いな」

「そんなに褒められるとは、少し照れますね」


 ナタリーさんが恥ずかしそうにする。


「あれ、そういえばユウヤのスキルってなんなんだ? 前の訓練では使ってなかったようだが」

「私のスキルですか? 私スキルは持っていないのですよ」

「え、そうなの?」


 ハヅミが反応する。


「スキルに対する適性がなかったのでしょうね」


 この世界にはスキルを持っていない人はもちろんいる。というか持っていない人のほうが持っている人より断然多い。周りにスキルを持っている人が多いから時々忘れかける。


「スキルを持っていないのにあんなに強いんだ……」

「スキルを使えないのなら基本を完璧にしろと叩き込まれましたからね」


 ユウヤが苦笑する。

 そういえばキエラも似たようなことを言っていたな。今何をしているのだろう。アルフも元気にしてるかな。


「……! 皆さん警戒を」


 ナタリーさんの声を聞き、周囲を見渡す。数10匹のゴブリンの群れに囲まれたようだ。


「私が対処しましょうか?」


 ナタリーさんが戦闘態勢を取る。と、ユウヤが手で制止する。


「いえ、ここはソアンさんにやっていただきましょう」

「了解。だがなぜ?」

「以前の訓練で『嬰イ長調A♯メジャー:ラッシャー=アモラルド』を使っていましたが、あれでゴブリンをてほしいのです」

「なるほど、新しい技に早く慣れさすためか」


 俺は指揮棒(タクト)を抜き、『嬰イ長調(A♯メジャー):ラッシャー=アモラルド』を発動する。


「発動は安定してますね」

「よし行くぞ!」


 ラッシャーをゴブリンの群れに突撃させ重く素早いパンチを喰らわす。


「ウギャ!」

「ゴア!」


 ブォンという鈍い音が聞こえラッシャーの拳がゴブリン5匹に直撃。一発でまとめて倒すことができた。


「良い感じですね。次は遠距離攻撃をしてみましょうか」

「了解!」


 ラッシャーが両腕で抱えられない程の大きさの光弾を放つ。その球は遠くの方のゴブリンに当たり、そのままゴブリン達を薙ぎ倒していく。


「遠距離攻撃の方も良いですね」

「まずまずの出来だな」

「その技、近接も遠距離も対応してるんだ……」


 その後は殴って蹴ってを繰り返して群れを片付けた。自分でも『嬰イ長調(A♯メジャー):ラッシャー=アモラルド』を自然に使えているのがわかる。


 ケニシャーへの道はユウヤとの訓練に比べれば大変ではなく、俺たちはそれぞれの技の練習をしながら何事もなく移動することができた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おっ」

「どうした?」

「ケニシャーに着いたみたいだ」


 『ようこそ、ケニシャーへ!』と書かれた看板が見えてきた。タントロイの看板にも同じような文章があったが、そういうものなのだろうか?

 ケニシャーはタントロイとは異なり、かなり活気のある街のようだ。


「さて、街についたからには」

「宿の確保と『遺跡』についての情報収集ですね」

「食料とかの必需品も揃えないとね」

「そうだ。ナタリーさんは宿の確保を。ハヅミは食料とかを買ってもらえないか?」

「わかりました」

「了解!」

「ユウヤは俺と一緒に情報収集に来てくれないか? 敵の目標は俺のようだから護衛を頼みたいのだが……」

「了解です」

「よし!」


 と手を叩く。


「ではそれぞれやっていこうか!」

「「「はい!」」」


 俺とユウヤは人の多いところへ、ハヅミは市場、ナタリーさんは宿屋街へとそれぞれ向かった。

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