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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~第2楽章~ 目標と敵
30/37

〈第28音〉最終目標決定?!

先週は申し訳ありませんでした。

◆ソアン=ガルヴァ◆


「アランは武器を構えてるじゃん! なんで?」

「そうですよ、ソアンさん」

「だから、あいつには攻撃する意思がないんだって」

「え、でも、う~ん」


 ハヅミが唸る。


「そうだろ? アラン」

「…………」


 アランは黙っている。しばらくして、


「……なぜそう思ったのです?」

「攻撃が弱すぎたから」


 そう、弱すぎたのである。あんなん攻撃じゃ四天王は名乗れないだろう。


「そこらの冒険者ならかなり厳しい攻撃だったと思うのですがね」

「最初は全面的に敵だと思っていたが、考えが変わったのが、ほとんど何の抵抗もなく拘束されたときだな。極めつけは『四天王』を名乗ったとき」

「…………」


 また黙った。


「そうです。私には「あなたを殺さずに捕まえる」気はほとんどありません」

「そんなこと言っていいのか? 魔王に怒られたりしないのか?」

「そうだよ、あの魔王ジャノイなら……」

「まああなたたちの思った通りのことになるでしょうね。最悪……なんてことにもなるかもしれません」

「じゃあなぜ?」


 さらに問う。


「私とあなたにはなにか近しいものがある気がしまして」

「……それは、さっき言いかけていたこととなにか関係があるのか?」

「言いかけたこと?」

「ああ、『アラン』の名前を出す前に何かを言いかけていたんだよ」

「そのことについてですが、」


 アランは一息つく。


「私は『召喚者』なのです」

「……は?」

「え?」

「ほう」


 三者三様の反応を示す。この世界には「召喚者」という概念があるんだな。


「元の世界での名前は『桜本裕也』、『サクラモトユウヤ』という名前で生活をしていました」


 日本人かな?


「本で見たことがあります。この世界以外にも様々な世界が存在しており、大規模な儀式を行うことで別世界の人物を召喚することができる、と」

「儀式、か」


 俺はそんな大規模な儀式で呼び出されたわけではないと思う。ほかにも別世界の人物を召喚する方法があるのか?


「私は魔族たちに召喚されました。私が召喚されたとき周りには2、3の魔族を残して、数百体の魔族が倒れていました。それほど大変な儀式だったのでしょう」

「そんなに大変な儀式なんですね……」

「その2、3の魔族に、この世界についての説明や、私を召喚した目的と経緯を聞きました。が、その魔族たちは異世界人の召喚を命令されただけで目的などは聞かされていなかったようです」


 異世界でもあるんだな、下の方は上に言われたことだけやっておいたら良いというの。


「とりあえず私は彼らの村に身を寄せることにしました。その村は衛生環境はあまり良くなかったですが、住民の方たちは優しく、私が思っていた魔族像とはとてもかけ離れていました」

「え、そうなんですね」

「魔族はいつも狂暴なのかと思ってたよ」

「私も本当に驚きましたよ」


 アランが続ける。


「5日ほど経った後、ジャノイという魔王が私を訪ねにきていると聞きました。なんで私に? と思いましたが、彼の目的は『私を魔王軍に加入させること』でした」

「だから召喚の儀式を部下にさせたのか」

「そのようです」

「加入は受け入れたんですか?」

「最初は断りましたよ。きっと人類を殺したり、残虐な行為をしなければならないと思いましたからね。しかしそのことをジャノイに伝えると『そんなことはしなくても良い、ただ我らの仲間となってくれ』と言われました」

「んで、入ったのか」

「人類を苦しめる魔族に肩入れするのはかなり気が引けましたが、私の今の格好はこうなので」


 とアランは自身の格好を見せる。


「魔族の領土以外には行くところがないと思ったのですよね」


 まあそれもそうだな。人里に姿を見せた瞬間、どんな話をしたとしてもそれは信じてもらえないだろう。


「それからはさっきあげた行為をすることはありませんでしたが、物資の調達やけがをした魔族の救護などを行っていました。その腕が買われたのかどうなのか、私は『四天王』に選ばれ今日に至るというわけです」


 『四天王』に選ばれるほどだ。本人は気づいてないだろうがかなり強いのだろう。


「そんなことがあったんだ」

「しかし魔族が人類に出した被害、それには多かれ少なかれ私もかかわっています。その償いをしたいと考えた矢先、あなたが現れたのです」

「俺が?」

「知っての通りジャノイはあなたを生け捕りにするよう私に命じました。なので私はこの機会にあなたと接触し、ジャノイを討とうと、そう決めたのです」


 なるほどね。


「まとめると、アランは人類への罪を償うために俺たちに協力を仰いで魔王を倒したい、そういうことだな?」

「その通りです」

「ソアン君、どうするの?」


 腕を組み考える。


「魔王ジャノイが人類に被害を与えている以上見過ごすことはできないが、『四天王』であるアランが協力を求めているほどだ。分かってはいるがさぞかし強力な相手なのだろう」

「そのうえ他の『四天王』いるでしょうし。彼ら彼女らが私たちに友好的とは考えられません」

「ま、難しいことは後で考えるか」


 俺は腰を上げて手を差し出す。


「ソアン=ガルヴァ、アランもといサクラモトユウヤに協力することをここに宣言する!」

「っ……ありがとうございます!」


 ユウヤが俺の手を握り返す。

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。

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