〈第24音〉嬰・変
前回の〈第23音〉から2か月以上が経ってしまいました。
お待たせして申し訳ありません。
◆ソアン=ガルヴァ◆
暗闇の方に冒険者風の格好をした人物が立っていた。
「知らないかもしれないが、『音楽家』というスキルを持った人物を知らないか?」
おばあさんが言っていた人はこの人なのだろうか。確かに長剣を下げている。威圧感がある体をしており、一目見ただけだが強者だとわかる。
が、その体は透けておらず、もし生きていると言われたら信じてしまうだろう。
「なぜその人物を探しているのですか?」
「お、この俺を見てビビらないとは、かなり肝の座ったやつなんだな」
彼は顔に驚きの色を浮かべる。
「理由を答えてやってもいいが、お前、『音楽家』のスキルを持ったやつを知っているな? いや、お前自身が『音楽家』だな?」
その言葉にはっとさせられる。
「図星っていう感じの顔だな」
「……はい、私自身が『音楽家』です。なぜわかったのですか?」
「その前に、その敬語をやめてくれないか? 背中がムズムズしちまう」
「わ、わかった」
「そうだそれでいい」
満足そうな顔の彼は理由について話しだした。
前の世界の癖でついつい敬語が出ちゃうんだよね。
「俺が『音楽家』を探している理由、いや正しくは探していた理由だがな、主な目的は俺の力を受け継がせるためだ」
予想していた通りだったな。
「あれ、驚かないんだな」
「まあなんとなく予想していたからな」
「そうなのか。俺がこの話を聞いた時は人生で一二を争うほど驚いたんだがな」
がっはっはと彼は笑う。
「おっと、自己紹介をしていなかったな。俺の名前はラッシャー=アモラルド。もともとはお前と同じ『音楽家』というスキルを持っていて、今はここで次の『音楽家』を待つ幽霊だ」
「俺の名前はソアン=ガルヴァ。冒険者だ」
「ソアン=ガルヴァ、いい名前だな。よろしく」
「ありがとう。よろしくな」
触れることのない握手を交わす。
「しかし初めに見たときは幽霊だとは思わなかったよ。こんだけ体がはっきり見えているからな」
「それに関しては俺も理由は分からねぇな。気付いたらこんなだったな」
「そうか」
「聞きたいことがあったら何でも言え。答えられる範囲なら全て答えるぞ」
腕を組んで聞きたいことを考える。まあまずはこれか。
「力を受け継がせるとか言っていたが、どんな力なんだ?」
「やはりその質問か。その質問の答えは『嬰・変』という力だ」
当たり前だが、初めて聞く力だ。
「それはどういった力なんだ?」
「お前は『ハ長調』といったような技が使えるよな?」
「ああ、使えるぞ」
俺は『ハ長調』を実際に使って見せた。
「そう、それだ。『嬰・変』という能力ははそれらの派生技を作り出すものだ。例えば『嬰ハ長調』とか『変ハ長調』とかな」
ほう。今はハ、ニ、ホ、ヘ、ト、イ、ロの7種類の技が使えるから、その力を手に入れることで合計……、
「21種類も使えるようになるのか!?」
「ああ、いい能力だろ?」
「多すぎて、使いきれる自信がないのだが……」
「使い切らなくてもいいんだ。自分の手札を多くするための能力だからな」
まあそうか。選択肢は多いに越したことはない。
「例えばどんなのがあるんだ?」
「嬰ハ、というより嬰の技全般に言えることだが、嬰は英霊召喚だ」
「英霊……」
わくわくする名前だな。
「これは文字通り、それぞれに対応した英霊を召喚する技で、自分より前の6代の『音楽家』たちを英霊として召喚できる。そしてソアンのちょうど6代前がこの俺だ」
「てことは、嬰の中のどれかを使えばラッシャーが出てくるということか」
「そうだな。嬰イで召喚できる」
ならばあの人も召喚できるのかな?
「じゃあ、俺の前の代がファルコン=フロントとかいう名前だったらしいんだが、その人はなにで召喚できるんだ?」
ラッシャーが驚いた顔をする。
「どこでその名前を知ったんだ……」
「? どうしたんだ?」
小声で何かを言ったような気がしたんだが。
「いや、なんでもない。もちろん俺もファルコン=フロントのことは知っている。実際に会ったこともあるからな。ファルコン=フロントは嬰ヘで呼ぶことができる」
「ほう」
「ただしある条件が必要だ」
「条件?」
スキルを発動するだけじゃダメなのか?
「全ての英霊召喚に当てはまることだが、条件は一つ。その『音楽家』に実際に会うことだ」
「てことは、俺はラッシャーにしか会っていないからラッシャーしか召喚できないということだな?」
「その通り。もう分かっているかもしれないが『音楽家』たちは世界各地に散らばっている。俺みたいにその場でとどまっているやつもいるし、放浪をしているやつもいる」
そうなのか。
「だからほかのやつらに会いたいなら、地道に探すしかない。すまないな協力できなくて」
「協力できてないなんて、そんなことはない。力を授けてくれただけで十分だよ」
俺は微笑んでそう返す。
「それならよかった。それで、ソアンたちはこれからどうするんだ?」
「『音楽家』たちを探しながら各地を旅する予定だ」
王都を襲った魔族を倒して以来、あれほど大きな被害は耳に入っていない。力を蓄えるために少しくらい時間をかけても大丈夫だろう。
楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。
(ソ):ソアン
(ラ):ラッシャー
(ソ)技の種類はもともと7×2の14種類持ってて、今回貰ったのを合わせると、
(ラ)14+7×2×2で42種類になったな
(ソ)……選択肢を増やすためと言ったが、多すぎてどれを使おうか迷わねぇか?
(ラ)それは考えてなかったな
(ソ)おい!




